菅直人副総理(経済財政担当)が20日の記者会見で、日本経済は「デフレ状況という認識だ」と発言した。しかし、「日銀と協力して・・・」といった発言に、現下の経済の深刻な事態に対する今後の対応を語る様子はまるで評論家のようで他人ごとであった。

 

 いま、事業仕分けで予算の絞り込みが行われている。ムダを省くのは当然のことであるが、その一方で経済がここまで落ち込んでいるなかで、早急な景気刺激策が求められていることも事実である。

 

そうしたなか、政権中枢の副総理が、しかも国家戦略を任された経済財政担当大臣が、デフレ脱却を日銀の金融政策に任せるだけで、財政面で何ら具体的な施策、方針も打ち出さないとは驚きを越えて、この人は経済の実態が肌身で分かっているのだろうかと、政治家としての資質を疑わざるを得ない。こうした宣言をするときには、具体的対応策を同時に提示し、市場の動揺を抑えるということなど、危機管理のイロハ中のイロハであろうと考えるが。

 

菅副総理はなるほど国会論戦における舌鋒には鋭いものがあるが、経済政策は口先だけでどうにかなるものではない。政権発足後2カ月を超えた今、TOPIXが年初来の変化率でマイナスになったという。G7各国の株式市場がほぼ20%から30%の伸び率を示すなかで、日本のみ▲1.07%である。それもここひと月ほどで一段と落ち込みがひどくなっている。成長地域と言われるアジア市場を見ても、中国の81.42%、韓国の42.64%、インドの76.20%、台湾の69.16%と、軒並みの大幅な伸び率に較べ、わが国の体たらくぶりが際立っているのである。

 

民主党政権発足後のTOPIXの動きを見ると、9/16931.4310/19905.8011/19837.71と直近までに9/24950.20の発足後の最高値を記録したものの、大勢は右肩下がりで下落している。発足後わずか2カ月の間でも11.2%のマイナス、特にこのひと月で8.1%もの大幅マイナスとなっているのである。

 

 市場は民主党政権の経済政策を好感していないことは明らかである。ここひと月の市場の冷たさはとくに気味が悪い。そのうえでの20日の菅副総理の他人ごとの「デフレ宣言」である。また、一段と市場心理が冷え込んでゆくことは確かである。口先の説明はもういい加減にして欲しい。無駄な公共工事を止めるのはよいが、その削った資金で経済をそれこそ自律回復させる「玄人の景気刺激策」を早急に打ち出すべきである。もう、国民と新政権とのハネムーン期間も終わりである。金の切れ目が縁の切れ目と昔の人は、よくぞ言ったものである。