NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を観ていて真鶴岬、伊豆半島へ行ってみたいと突然思いたち、ネットで探して公式HPから予約を入れたのが「湯河原ラクラッセ・ドゥ・シェネガ」という舌を噛みそうで、やたら覚えにくい名前のホテルであった。

ホテル ラクラッセ・ドゥ・セネガ
ラクラッセ・ドゥ・シェネガ
予約の決め手はおいしそうなフレンチ料理の写真であった。食いしん坊のわたしにとってそれはとても大事な宿選択の決め手である。

ということで、当日、真鶴岬に点在する源頼朝や鎌倉武士ゆかりの地をめぐって、午後3時半過ぎにホテルへ辿り着いた。

石造りの外観はやや黒ずんだ箇所があるものの、その曲線の造形と門前の椰子の樹はまさに南欧のリゾートホテル、たぶん・・・

コートダジュールあたりにはこんな小洒落た建物があふれかえっているに違いないとイメージしたのである。Never been なのだから想像するのは勝手である・・・

実際にホテル前の通りの先には地中海ならぬ相模湾が覗いていた。

相模湾はすぐそこ
確かに相模湾が見える
そして、眼前の電柱とおびただしい電線、カーブミラーにガードレールといった猥雑な障害物を取り除いてみれば、そこにはキラキラと陽光に照り映える群青の海原が瞼の内に広がっていく・・・南欧・・・南仏プロヴァンス・・・

想像の翼はどこまでもひろがってゆく

ラクラッセ・ドゥ・シェネガの入口
ここから入車
そして地下1階にあたる車寄せからどことなく小洒落たエントランスへ・・・

ラクラッセ・ドゥ・シェネガ エントランス車寄せ
ホテル入館の扉(ここが地下1階にあたる)
木製のドアを開けると・・・正面に南欧のホテルにはきっとあるに違いない優雅な曲線を描くサーキュラー階段が待ち受けていた。

エントランス
これはプロヴァンスのプチホテル
わたしは勇躍、期待に胸膨らませて1階のレセプションへとむかった。

温もりを感じさせるレセプション
レセプション 壁にはたくさんの絵画
木造りのぬくもりに満ちたレセプションの前がラウンジになっていた。

館内にはフランスの画家ルイ・イカールのアンニュイただよう絵画が数多く飾られ、この雰囲気は若い女性やカップルには最高なのだろうなと思ったりした。

さて、広い窓の向こうに水色の水が張られたガーデンプールが見えた。

ラウンジからガーデンプールを見る
ラウンジからガーデンプール、相模湾がみえる
そしてプールサイドに咲く赤紫色のブーゲンビリアが相模湾の海原をバックに映える・・・

ガーデンプール
ガーデンプールとブーゲンビリアと夏空
これが最近、若い娘たちがしばしば口の端にのせる“バエ、バエ”、“映えスポット”というのじゃなかろうか?

ラウンジからガーデンプールを
右手に伊豆半島が見える
・・・てな気分で脳内はう〜ん・・・ニースのプチホテル・・・

気分はアゲ!アゲ!・・・多分、これって死語・・・そしてチェックインをすませて3階のツインルームへと向かう。

オーシャンビュー ツイン
3階のオーシャンビューのツインルーム
室内に入るとオーシャンビューの窓際には長椅子が置かれ、ゆったりとした空間が演出されている。

レースカーテンに透けて小さなバルコニーが見える。

カーテンをあけて窓を開放するとプロヴァンスの白い太陽の光がまばゆい。

バルコニーから初島と伊豆半島を見る
バルコニーに夏の白い陽光がふりそそぐ・・・
しかもバルコニーに何気なく置かれた二脚の真っ白な椅子がふるっている。

室内から相模湾を一望
二脚の白い椅子
これはもう洋画「太陽がいっぱい」の世界である・・・

なにせ太陽がいっぱいなのである!!

ガーデンプールと円型レストラン
バルコニーから陽光に照らされたアクアブルーのプールを・・
真下にはブーゲンビリアが咲き誇るアクアブルーのガーデンプール、そして石造りの円形レストランが見下ろせる。

映画の舞台はナポリとかイタリアだったような気もするが、それはそれ、脳内はコートダジュールである・・・

レストランと湯河原の町
ナポリならぬ湯河原の町が見える
長椅子に寝そべる細君はさしずめマリー・ラフォレ・・・

バルコニーの真っ白な椅子に坐っているのは、何を隠そう、アランドロン・・・

いやはや妄想は海原の涯てをつきぬけて水平線から夏空へと飛揚してゆく・・・

室内から初島と伊豆半島を一望
すばらしい眺望 右に伊豆半島 正面に初島が・・・ 

正気に返って・・・やっぱり・・・目の前には青い海が広がっている・・・

相模湾のとおくに伊豆半島の山並み
うつくしい・・・
う〜ん、やはり・・・ここはコートダジュールいやニースだ!! NEVER BEEN TO・・・

そしてはるか遠くに地中海に浮かぶ島影が見えている・・・

そんな白日夢をみせてくれるラクラッセ・ドゥ・シェネガはまさに大人のホテルである。

フランス語で灯台を意味する“Le Phare(ル・ファール)”が当夜のディナーをいただくレストランである。

Le Phare(ル・ファール)
レストラン“Le Phare(ル・ファール)
当夜のメニューは次の通り。

ディナーメニュー
メニュー
そのスターターに本日のシェフからの「ひと口小皿」ですと差し出されたのが、驚愕の一品料理。

駿河湾朝どり鯵のエクレア
鯵のエクレア?
「相模湾で当日採れた鯵のエクレア」というではないか。

誰でもそんな料理・・・生臭さとチョコレート“鯵”ならぬ“味”は想像できない。

おそるおそる口に入れてみる。

本日のシェフのひと品 駿河湾鯵のエクレア
イケル!!
鯵というより白身魚のような味にカカオの苦味がうまくまざった、イケル!!これは表彰物の一品である。

このサプライズで一挙にディナーへの期待が膨らんだのはいうまでもない。

すばらしい演出である。

それからきれいにデコレートされたオードブル・・・「伊豆天城産軍鶏プレステリーヌと赤パプリカムースとビーツジャム」がはこばれてきた。

オードブル
オードブル
次に魚料理の「鮎コンフィとラビゴットソースのフェンネル風味」

鮎コンフィとラビゴットソースのフェンネル風味
鮎のコンフィ
夏本番前の鮎、塩焼きだけが鮎じゃないと知らせる一品、おいしかった。

このあとにメニューにはない箸休めなるこれまた遊び心の一品が供された。

箸休め お稲荷さん
ソーセージ?
目の前の包みを開けて・・・エッ!! えぇえぇ〜!!なのである。

フレンチの箸休めが・・・お稲荷さんだなんて・・・

お稲荷さん
シンプルなおいなりさん
Le Phare(ル・ファール)”のシェフはお客を驚かし小躍りさせる名人であると彦左は喝破した、お見事!!のひと言である。

その興奮冷めやらぬなかお肉料理がやってきた。「黒毛和牛静岡育ちフィレ肉にグリル夏野菜と生姜香る仔牛のジュ」である。

肉料理
フィレ肉料理
もちろんお肉はやわらかく量もほどほどで助かった。

当日は繁忙期直前ということもあって、ほかに一組のみのお客であったのでゆったりとした雰囲気のなかで心落ち着く食事が愉しめた。

また宴たけなわの頃、ハッピーバースデイのメロディーがピアノから流れてきた。もう一組のお客さまの誕生日なのだろう。

もちろんアランドロンとマリー・ラフォレは惜しみない祝福の拍手をおくった。

そして・・・「ショコラムースとメロンのゼリーに紫陽花仕立てヨーグルトのソルベ」なる長〜い名前のデザートが供され・・・

デザート
デザート
南欧のフレンチの宴はしずかに終焉を迎えた。フレンチのしつこさをおさえたとても上品な味付けと適度な量にわれわれは満足!

ディナー前に
雰囲気、最高です
くわえてスタッフのスマートなおもてなしに・・・Merci beaucoup(メルシー・僕!!)と叫んだのはご愛敬である。

ところでラクラッセ・ドゥ・シェネガには2019年にできた温泉もある。

ここは湯河原である、温泉がなければと・・・ここはドロンも日本人・・・

この日の男湯はわたしの貸し切りであった。

ゆったりと温泉につかり、ミストサウナなる変わったサウナにも入り?至福のひと時を愉しんだ。

そしてベッドにはいるともう夢見心地。

翌朝の朝焼けも素晴らしかった・・・

相模湾の朝焼け 初島の先に大島が見える
大島も見える朝のバルコニー
・・・と、細君が写真を見せてくれた・・・

早朝の大気のなか遠くまで視界がひろがり、初島の先、大島の島影が見えた・・・

・・・と、話してくれた。

もちろん私だって夢の中で地中海に浮かぶ島影をいくつも見ていたのだが、その話は宝物なので、細君にも話はしてあげていない。

気分は南欧
まさに南仏のバルコニー・・・
これから本格的な夏になるとガーデンプールには白いパラソルがいくつも開くという。

この静寂の支配するプールサイドも南欧の気分がアゲ!アゲ!の生気あふれた若者にこそふさわしい世界へと姿を一変させてゆくのだろう・・・


そして真夏のまばゆい太陽の日差しに無防備に身を投げ出すアランドロンの世界、そんなシーンのなかに老夫婦が身を横たえる真っ白な椅子はもう用意されていない・・・

そうそのとき悟らされた・・・