6月21,22日の両日にわたって車山肩の湿原と霧ケ峰高原を訪れた。

初日は車山肩のコロボックルヒュッテから見下ろせる湿原を歩き、湿原を貫く木道の両脇に広がる植物群落のなかにオレンジ色の花をつけたレンゲツツジや白い花をいっぱいに咲かせたコバイケイソウの群生を鑑賞した。

コロボックルヒュッテから見下ろす霧ケ峰湿原植物群落
ただ、ヒュッテから見下ろす湿原の遠景には白いコバイケイソウの植生は確認できるものの、レンゲツツジのおだやかなオレンジ色は残念ながら目に映えてはこない。

コロボックルヒュッテの脇から湿原におりる石ころの道を下ってゆくと、途中から湿原を貫くように一本の木道が伸びている。

⊆峪格の霧ケ峰湿原植物群落木道
この日は梅雨の合間とあって、自然道を歩く酔狂な人もほとんどない。車山のふもとに広がる湿原は静寂が支配している。湿原に響く音といえばそこここで啼くウグイスの声に、時折、ツガイの雉が鳴く声が交じるていど。頭上はるかに広がる大空と湿原の間にはまことに心鎮まるゆるやかな時の流れが満ちていた。

その木道の両脇に目をやるとようやくあの柔らかな橙色の彩りを目にすることができる。

細君はずっと昔見た写真ではオレンジ色がびっしりと敷き詰められたようなレンゲツツジの群落があったはずと云う。しかし、いまわれわれが目にできるレンゲツツジの木は老木が多いのか枝の半分くらいが枯れてしまい花のつかないものが数多く、また鳥にでも啄まれたのか枝につく蕾はまことに貧相である。

じ呂貉泙多く花の付きが悪いレンゲツツジ
そのため、オレンジ色が密集して目にも鮮やかに映えて見えるというのではなく、白っぽい枯れ枝の合間にチョロチョロと揺らめく小さな橙色の焔(ほむら)を観るようなものである。

勢いのあるレンゲツツジのオレンジは綺麗
その一方で、小さな白い花をとんがりコーンのような穂先に乱れ咲かすコバイケイソウは今を盛りと生気に満ちて見事である。湿原の各所に白い花で身を装い群れ咲いてみせている。

Д灰丱ぅ吋ぅ愁Δ侶架遒涼罎レンゲツツジの橙色
この梅雨の真っ最中に信州の高原を訪れる機会はこれまでめったになかった。コバイケイソウがこんなに清潔な白い花を咲かせるのだとはちょっとした驚きであった。というのもいつも盛りが過ぎた盛夏の頃によく湿原を訪れるためか、土気色の斑(ぶち)を染みつかせた葉っぱと、盛りを過ぎた花を冠したコバイケイソウの落魄した姿をたびたび目にするだけで、わたしはどうもこの花に薄汚いイメージを抱きつづけてきたようだ。

ジ事なコバイケイソウの白い群落
この度現金なもので、その可憐な白い花を穂先にまとわせる様を心ゆくまで目にしたゆえか、コバイケイソウという花が高原に初夏の訪れを告げる先触れの花、「高原の夏の魁(さきがけ)」とも名付けるべきであると掌返しに思ったところである。


次の日はレンゲツツジが多分、車山肩よりも沢山咲いているはずとの植物博士として我が家で高名な奥方さまがおっしゃるので、久しぶりに車山肩を過ぎてちょっとだけ足を延ばし、霧ケ峰高原へ向かった。

霧ケ峰高原へ ビーナスライン
霧ケ峰高原へ ビーナスラインをゆく
そこには自然研究路というアカデミックな名を冠する自然道がある。そこに目指すレンゲツツジの群落があるはずというのである。

〔献永自然研究路案内板
霧ケ峰自然研究路の説明板
小学生の時からどうも植物の名前を覚えるのがとんと苦手な私である。すぐ覚えられたのはイヌノフグリやブタクサといった悪ガキにはとても好ましい語感を伴う草花のみであった自分に、蓮華躑躅などというどこかありがたい名前をもつ植物を鑑賞する機会を持たせてくれた連れ合いには感謝するしかない・・・と、心より思っている。

ぢ茖官狠呂惴かう自然研究路
第4園地に向かう自然研究路
日頃運動不足の私である。5コースある自然研究路なる散策道を、できるだけ距離が稼げる、しかし、そんなに熱心に歩くことはどちらかと言えば避けたい。そんな自分が選んだのは第4園地をめぐる所要時間は40分ほど、距離にして1・5kmほどのコースである。


¬献永高原のレンゲツツジ
目指すレンゲツツジは園地の奥のほうに群生していた。なるほど車山肩よりも間近に鑑賞できて、まだ成木が多そうである。蕾も喰い荒らされていない。

トロトロ歩きの私である。途中で写真を撮るという理由で休憩しながらの歩きである。結局、1時間10分ほどの野辺歩きとなったが、群生するレンゲツツジの花をすぐ脇で鑑賞し、しっかり堪能することができた充実した時間であった。
ヂ茖官狠呂埜つけたアヤメ
と、ここで筆を置きたいところではあるが、実際のところは、野辺歩きのそこここで雑草の中からアヤメやハクサンフウロなどを見つけては歓声を上げる細君を横目に、いまだイヌノフグリに仲間意識を覚えてしまっている私に気づかされ、ひそかに舌を出している自分に、ほとほと情けなさを感じさせられた霧ケ峰高原のアカデミックな散策ではあった。