滝山城跡は国史跡に指定されているとのことだが、都立の滝山公園(八王子市高月町)としてその景観、丘陵の地形がほぼ往時のまま保護されている。初めて訪れてみて、その規模と地形の保存状態にビックリした。
ここからの眺望もさることながら、吉野の山桜もこれをそのまま同心円に拡大したのだろうと想像してしまうほどに素晴らしく豊かな景色である。
それに加えて、ここはちょっとお城オタクにはたまらぬほどのスポット。
複雑な丘陵を活かした戦国時代の城郭の地形がほぼそのままの状態で残されており、尾根筋から見下ろす大曲輪や千畳敷跡空堀、土塁などは圧巻である。
歴女が訪ねれば、一日、城攻めの攻防に夢を馳せることのできる大規模な城跡で、関東随一の規模を誇るといわれた城郭が天然の要害であったことを肌で実感できる貴重な遺跡であるともいえる。
よくぞ、これまで乱開発されずに自然な形で保存されてきたなと正直、驚いた。
さて、戦国の世に身を置き妄想の世界に遊んでいたところ、中の丸へゆく途中で突如、家内がスイカズラ科のニワトコの花が咲いているという。あまりに喜ぶものだから写真を撮った。わたしには変哲も何もないただの木に見えてしまうのだが・・・
家内は一週間前にも、かの前世が植物学者の泰斗であったに違いないとわたしがひそかに思っている女史と一緒にここを訪ねている。その時にはこのニワトコは蕾だったのだと家内はいう。その時、命は一秒一秒を確実に刻んでいっているのだという当たり前のことに感動する家内を少しうらやましく思ったことは事実である。
そして、ニワトリかニワトコかさえもよくわからぬわたしには、少々、それほどに喜ぶことなのだろうかと女心の不可解さにも久方ぶりに感じ入ったところでもある。
それから三の丸から尾根伝いに古峯ヶ原園地へ向かっていると、また、「見て!見て!」とはじまった。 今度はリンドウ科のフデリンドウという花が咲いているという。これも一週間前に訊ねた際に見つけていた花だという。 たくさん咲いていると路傍ばかり見ているのも、花見に来ているのに、ずいぶんと不思議な光景だな・・・なぞと思いながら、どれどれとそのはしゃぐほどの花を見てやった。すると、おっ・・・かわいい・・・この年の大の男がとも思ったりもするが、美しいものは美しい、かわいいものはかわいい。それでよい。 そう素直に言える人間になりたいものと、ちょっと小さく心のなかで思わせた可憐な花がフデリンドウであった。 蕾がかわいいので、この写真も撮ってほしいというので撮った。だから、ここに掲載する。 戦国の山城というよりちょっとした丘陵の風情のなかでそのなりのままの山肌に植わる山桜。 幹が根元で10本ほどに分かれひょろひょろと空へ向かって高く伸びる山桜。 なかなかに見事である。人工的でないのがさらによい。来年も必ずここに来ようと思った夢想空間の爽快な場所である。