ひと夏の忘れ物 足摺岬で泊まりたい宿・TheMana Village(ザマナヴィレッジ)
ひと夏の忘れもの 竜串海岸、大堂海岸、柏島の碧い海
今年も残すところあとひと月余。この一年もコロナ自粛の間隙を縫って、残り少ない余生、思い残すことのないようにと数多旅へでた。
旅に出かけてもどっては次の計画を練ってまた旅先へ移動と忙しく、まだお薦めしたい旅行先や泊まってみたい宿などブログ掲載が間に合っていないのが不甲斐ない。
季節は8月21日から23日にかけての二泊三日の夏旅である。
高松市内にある細君の実家が常々、わたしの四国探訪の橋頭保となっている。義父母も既に鬼籍に入り、時々の法要と風通しのため年に数度の高松行きであるが、四国を知れば知るほどその歴史と自然の景観の奥深さに驚かされている。
そもそも2021年3月30日に5年半に及ぶ四国88ヶ所の霊場めぐりを終え、車遍路ではあったが四国一周を果たしている。
途中、式内社を中心に神社や名所旧跡、温泉を訪ねながらのぶらり遍路旅であったが、まだまだ四国の魅力を味わい尽くすまでには至っていない。
そこで、この8月は仁淀川の透き通るような仁淀ブルーを鑑賞したいと計画を立てたのだが、至近の宿、「中津渓谷ゆの森」の予約が満杯で、急遽、予定を変更、遍路旅の際に雨に見舞われ突端まで足をのばせなかった足摺岬に再チャレンジしようとなった。
ついでに細君が20歳のころ訪れた足摺岬の西方、大堂海岸の懸崖の景観をもう一度見てみたいということになり、此度は海上から仰ぎ見ようと計画を練った。
そのため、一泊目は土佐清水市足摺岬の「TheMana Village(ザマナヴィレッジ)」を、二泊目は幡多郡大月町の「ベルリーフ大月」を予約した。
午後2時過ぎに第38番札所金剛福寺前の足摺岬駐車場に車をとめた。
お参りのまえに前回、雨で断念せざるを得なかった足摺岬の突端へとまずは向かった。
細君に云わせるとここは2月が椿の花がきれいなのだというが、その日は8月21日。
実は半世紀前、わたしは社会人としてのスタートを高松の地で3年間過ごした。その間独身寮の先輩たちと確かに足摺岬を訪ねている。そのはずなのだがなぜか見晴らし台からの雄大であったであろう景色の記憶は寸毫も脳味噌の襞に刻まれていない。
今度こそ渺渺たる太平洋の醍醐味をこの目にしっかり焼き付けてこようと思った。幸いかな当日は絵にかいたような真夏の晴天である。
駐車場からつばきトンネルを抜けてほんの数分で突端の見晴らし台へ到着。
途中に白い灯台があった。
南国の蘇鉄を随えて真っ青な夏空にニョキッと伸びた灯台は美しい。
宏大な太平洋を睥睨するには、思いのほか狭い見晴らし台であった。
一望千里、海と空の境に一気に引かれた水平線がいさぎよい。
その真一文字の頭上にのびやかに浮遊する白い雲。
胸一杯に遥か波浪をこえてきた潮風を吸い込む。
肺のすみずみまで仄かな塩気が染みわたったようで身がきりりと引き締まった。
そう、遠いあの日も海風が崖下から吹き上げてきて火照った顔を弄(なぶ)っていった・・・そんな半世紀前に覚えた感覚がよみがえってきた・・・。