谷亮子氏が隣に小沢一郎民主党幹事長を従え、「(参議院議員になっても柔道選手として現役を)もちろん続ける。ロンドンオリンピックで金メダルを目指す」と胸を張った。どこの記者かは分からぬが、「国会議員でも金ですか?」との質問に対しての答えであったのだろうか。

国会議員の歳費は「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」と、憲法第49条で保障されており、その細目は「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」(昭和22430日法律第八十号) で定められている。

ちなみに通常の国会議員で年間にかかる歳費は、丸めた数字で、月給+ボーナスで3100万円、立法調査費で800万円、文書交通費で1200万円、その他に公設秘書3人分として2300万円が支給される。つまり、議員一人に対し直接、7400万円が歳費として毎年、税金が使われる。それから政党助成金がその枠外でだいたい議員一人当たり4千数百万円が税金から各党に対し交付される。

国民は国政に携わる国会議員にそれだけの多額のコストをかけているのである。この厳しい国家財政のなか、高額の税金を一人の議員に対し使う理由は何か。それは議員が為政の目的である経世済民を成す責任を担うからに他ならない。

(当選し、)国会議員になってもオリンピックで金メダルを目指すという谷亮子氏。「スポーツ選手やタレントは国会議員になるな」などと言うつもりはない。「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない」のだから(憲法第44条)。

しかし、国会議員は言うまでもないが、国権の最高機関であり、かつ唯一の立法機関である国会の構成員である。だから、国政に対する深い造詣と、高い見識が求められることは言うまでもない。内外に多くの難題を抱える今日、国民の代表たる国会議員には、国民のために身を削るような努力をしてもらう必要がある。

国会会期日数をこの23年で見てみると、平成20年が264日、平成19年が279日、平成18年が235日と、年間の23から34の期間、国会が開かれている。閉会中も当然だがいろいろな国政に懸る仕事は山積している。まさに365日、常在戦場の日々を過ごすのが、本来の国会議員のはずである。

だから、多額の税金を一人の国会議員に使うことを憲法でも保障しているのだ。

然るに、この谷亮子という人物は、議員になっても柔道選手として「次のオリンピックで金メダルを目指す」と無邪気に胸を張った。

国会議員になったら為すべきことは違うだろうと、大声で言いたい。二足の草鞋をはいてやれるほど、政治家は甘くはないし、そんなことを国民は許さない。横に座ってニヤニヤしている小沢幹事長もその発言に対して、苦言を呈することもない。何という国家であろうか、何という政治の堕落ぶりであろうか。

事は民主党に限らない。ここに来て参院選の公認候補が次々と発表されたり、名前が取りざたされている。新党「立ち上がれ日本」が元巨人軍の中畑清氏の擁立を決定した。また自民党も元プロ野球選手の石井浩郎氏や女優の三原順子氏などの名前が取りざたされている。

わたしはその人々が政治家としての素養があるのかどうかを知らない。だから、不用意に言うのは避けねばならぬだが、公認選考の基準が、どう考えても知名度優先で行われているように思えてならぬし、そうした思考方法を取る政党が本気で国民の為を思って政治を行なおうと考えているとは、決して思えぬのである。

わが国の国会議員定数は衆議院480名、参議院242名である。米国は上院100名、下院435名である。国民人口は日本が13千万人、米国が32千万人であるので、人口百万人当り国会議員数は、日本が5.7名、米国が1.7名で、人口1単位当りで、米国の3.3倍の議員を日本は擁していることになる。

タレントや知名度が高いからという理由で公認候補を決めるような愚行を重ねるのであれば、まず、国会議員の大幅削減を行なうのが先決であろうし、谷亮子氏のように思い違いというか、あまりに国民を馬鹿にした物言いを平然と笑いながら胸を張って言うなど、止めにしてもらいたい。