日興コーディアルグループの不正会計とホリエモン

 

証券取引等監視委員会は18日、(株)日興コーディアルグループ【取締役(議長)金子昌資】に対して課徴金5億円の支払いを命じるよう監督官庁である金融庁に勧告した。同グループは平成17年3月期連結決算で利益水増し(連結経常利益590億円→777億円)を行い、同年11月に一般募集による社債発行(500億円)を行なったことが、証券取引法第172条第1項に規定する「重要事項の虚偽記載がある開示書類に基づく募集により有価証券を取得させた行為」に該当するとされた。

 

その同じ日に同グループは平成17年3月期の連結決算に係る有価証券報告書の訂正を決定、発表した。記者会見には杉岡広昭副社長以下幹部が出席、1年半前に確定したはずの決算の唐突な訂正の理由を「昨年末から社内調査を進めたが最近、子会社の日興プリンシパル・インベストメンツの担当社員が不適切な手続き(利益水増し)をしたうえ事実を隠していたことが発覚した」と説明した。さらにその決算操作は「一社員がミスを隠すため書類を偽造したため」であり、「結果的に(グループ連結決算が)膨らんだ利益を計上した」もので、「意図的な利益の水増し」や「組織ぐるみ」ではないと弁解した。

一部上場会社の有価証券報告書に記載された経常利益など最も重要な数字がたった「1人の社員による過失と隠蔽(いんぺい)」によって大きく異なり、誤った決算となったと弁明したのである。

 

 傘下に日興コーディアル証券(従業員数6969人)、日興シティグループ証券(同1600人)等を抱える国内三大証券の一角を担うグループの連結決算がただ一人の平担当者の過ちで187億円もの水増し決算になってしまったと言うのであれば、この会社の決算手続き決裁、内部管理体制そして会計監査を担当した旧中央青山監査法人(現みすず監査法人)のコンプライアンス体制はどうなっていたのか、その目は大きな節穴であったと言わざるをえない。

しかし、どう考えても一担当者の過ちで起こった誤りというには金額の大きさと誤った決算後に図ったようなタイミングで資金調達を行ったという経緯に不自然さを覚えてしまう。常識的には考えづらいと言う方が、大方の理解を得られるのではなかろうか。

 

 東京証券取引所は最近、その上場規程(「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則」)を改正し、平成171月1日以後に決算期を迎える会社はその有価証券報告書及び半期報告書について代表者が署名した「不実の記載がないと認識している旨及びその理由を記載した書面」いわゆる「確認書」の提出することを求めることとなった。

 

 その改正を受けて日興コーディアルグループも今回の訂正決算期に該当する173月期決算において、有村純一代表執行役社長直筆の署名がなされた確認書が624付けで提出されている。その文面のなかには、財務諸表等が適正に作成されるための社内体制が有効に機能していることをディスクロージャー委員会からの報告を含め、確認したとして以下の3点を記載している。

(1)財務諸表の作成に当たって、その分担と責任部署が明確化されており、各責任部署において適切な業務体制が構築されていること。

(2)当該業務体制について、内部監査部による適正性の監査が実施され、監査結果は経営陣および監査委員会へ報告される体制となっていること。

(3)全ての重要な経営情報については、経営陣へ適切に報告される体制となっていること。

 

 再度述べるが、財務諸表を作成する社内体制は完璧であり、重要情報は経営陣に適切に報告されていると太鼓判を押す文書には有村社長が直筆でサインをしているのである。

 

 証券市場の運営者である東京証券取引所とともに、日興コーディアルグループは野村HD、大和SMBCとともに日本の証券市場の健全なる育成に主たるプレーヤーとしての重責を負っている。そのプレーヤーが己の有価証券報告書で「不実の記載がない」とした社長署名の「確認書」が、事実と大きく異なっていた意味合いは、例えば一般事業会社のカネボウやライブドアの粉飾決算あるいは疑惑とは違った意味で、その負うべき社会的責任と及ぼす影響はより大きいと言わざるをえない。

 

 平成18年度6月7日に成立をみた「証券取引法の一部改正」により、有価証券報告書等開示書類の虚偽記載及び不公正取引の罰則が強化された。従来の「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は伴科(法人両罰5億円以下)」から「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金又は伴科(法人両罰7億円以下)」に引き上げられた。

 

 そうしたより透明性を求める環境のなかでの、証券市場を引っ張っていかねばならぬ、模範を示さねばならぬ側の開示情報の虚偽記載である。一個人の過ちであるとする説明を額面通りに受けとるとしても、その犯した過ちは一事業会社が行ったこととは自ずからその意味合いは異なる。また万が一、一部でも組織ぐるみ的な要素があれば、今回のようなトップは減俸のみで、担当取締役のみ退任といった対応ですむ話では到底ない。

 

何せ日本中の耳目をそばだたせたホリエモン事件こそ経常赤字であった決算を50億円余の黒字であるとした有価証券報告書の虚偽記載の証券取引法違反でいままさに係争を行っているのであるから。範を垂れるべき証券市場仲介業の日興コーディアルグループは187億円もの水増し粉飾であるとされている。

 

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