履修漏れ救済は教育基本法改正議論の試金石(中)
履修漏れ救済は教育基本法改正議論の試金石(下)

富山県立高岡南高校(篠田伸雅校長)10月24日に発覚した地理歴史科の履修漏れ問題は、瞬く間に全国各地に波及した。こうした事態を受けて安倍首相は27日夜、首相官邸で記者団に「子供たちの将来に問題が発生しないよう対応すべきだと考えているし、そう(伊吹氏に)指示をした」と語った。

 

そして30日の衆議院教育基本法特別委員会において、伊吹文明文部科学相によりこれまでの文科省の実態調査(国公立対象)で、高校数で289校、人数としては47,094人もの3年生が学習指導要領で定められた必修科目の履修漏れが存在するという実態が国民の前に示された。この信じられない数字が、いじめなど教育の現場が抱える問題の病巣の深さが、尋常ではないことをあらためて国民に知らしめる結果となった。

 

全国各地の教育委員会や高等学校は、学習指導要領の枠内で授業時間を減らすなど、最悪の事態を回避すべく検討を始めた。つまり指導要領にある例外措置を活用し、急場を凌ぐしかないというのが実態である。例えば「特に必要のある場合には、その単位数の一部を減じることが出来る」とか、「単位取得に必要な出席日数については各学校が内規で決める」ことを根拠として「全授業の3分の2以上」などと定め、すべての授業に出席する必要はなくすといった法の抜け穴を悪用するに等しい方法で、対処しようと検討を進めているのである。

 

一方で、すでに出願書類の提出期限がほぼ到来している推薦入学についての大学側の対応は分かれている。早稲田大学(東京都新宿区)は、28日までに履修漏れがあったとされる推薦入試の対象高校に対し、正確な記載に訂正した調査書の再提出を求める文書を発送するという。また山形大学医学部では後日、提出された書類の記載事項に虚偽が見つかれば、合格を取り消すと発表した。そうした厳しい対応を決めた大学は今現在、そう多くはない。大半は高校側を信頼しているとして洞ヶ峠を決め込んでいる。

 

この時期の受験生に受験科目以外の学科の履修に多大な時間を割けというのは、いかにも酷であるとする心情は非常によく分かる。自分が受験生であれば、学校の言う通りにやってきた挙句の、降って湧いたような受験直前の大きなタイムロスの強要である。受験生の怒りと戸惑い、不安の計り知れなさは察して余りある。それゆえに総理からも適切な救済が図れるよう支持が出され、救済策の策定が国会の場においても議論されている。

(「中」に続く)