107名の命を二度奪うJR西日本=命を軽んじる企業体質
(2009.10.18)

 JR福知山線脱線事故の航空・鉄道事故調査委員会は昨年1220日、事故の原因は「運転士が無線の会話に気を取られ、ブレーキ操作が遅れて70km/時制限の右カーブに116km/時で侵入したため」とする300ページを超える膨大な量の事実調査報告提案書を公表した。そしてこの21日に調査委員会は意見聴取会を行ない、遺族・被害者3名を含む13名が公述人として意見を述べた。そしてこれを踏まえて2月中には最終報告書が提出される予定である。

 

 公述人のトップに立ったのがJR西日本の丸尾和明副社長であった。12月に報告書が公表されたときには、「厳粛に受け止める」との重大事故を起こした企業として当然のコメントを行なった。しかし今回の副社長の意見陳述は、閉会後に被害者や遺族の方たちが「企業防衛や自らの保身に終始した公述だ」と批判したように、同社がこの大惨事に対し、心底、原罪意識を持っているのか大きな疑問を呈せざるを得ないものであった。これだけの大惨事を起こしていながら原因究明等最終的な結論がでていないため、最終的な経営責任については、依然、留保されたままであると言ってよい。国民はそう考えているのに、JR西日本の経営陣のなかでは、脱線事故はすでに心のなかで風化してしまったのだろうか。

「(ATS設置は)他社と比べても進んでいた」との陳述などを聞くと、この会社は107名の人々のかけがえのない命を一瞬に奪い去ったという事実の重み、悲痛な叫びがまったく分かっていないのではないかと真剣に思ってしまう。決して原状復帰が出来ぬ大惨事を起こしておきながら、とやかく釈明する権利など一切、持たぬはずである。ただ、なぜこのような大事故が発生し、今後、二度と起こさぬために自分たちは何をなすべきかを述べる加害者としての原罪意識からの説明責任が課されているのみである。

 

また、この意見聴取会に垣内剛取締役(事故当時社長)が参加していないことも不思議であった。大惨事を引き起こしながら、当時の垣内社長は事故の原因究明や事故処理に責任を全うするとして、社長は降りたものの取締役に留まった。しかし1日の調査委員会の意見聴取の場に事故当時の最高責任者はいなかった。

 

しかも同社は事故発生直後に「福知山線列車事故の重大性に鑑み、再発防止策の徹底を図るとともに、安全対策について社長の諮問にこたえることにより、安全を旨とする企業風土の構築をはじめとする、鉄道の安全性向上に資することを目的とする」外部委員による「安全諮問委員会」(委員長永瀬和彦金沢工業大学機械工学科教授)を立ち上げた。当社はもちろん垣内社長は会社側出席者として参加していたが、社長を退任した第5回以降はメンバーにも入っていず、出席もしていない。

 

調査委員会での副社長発言や垣内前社長の黙して語らぬ姿勢は、いったいどうしたことか。107名もの貴重な人命を奪い去った事故から多くの教訓を学び、今後のJR西日本の安全体制をどう確立するかが、原因究明と事後処理のために社に留まったはずの垣内氏はじめ経営陣の使命なのではなかったか。

 

かねてから補償問題の対応等に何かこの会社の真心が感じられない気がしていたが、今回の意見聴取の模様が伝えられて、どうもJR西日本という企業は「自分が加害者である」という重大な原罪意識に欠けているのではないか、そう思えてならぬのである。

 

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