西麻布 京料理「かねき」においでやす
流山市流山5-19-4
04-7158-0068
春の一日、流山の京料理“かねき”を訪ねた。
西麻布“かねき”のオーナーでもある渡辺昭一郎氏からかねて流山本店にも一度足を運ぶようにとのお誘いがあり、寒もゆるんだ卯月朔日、ようやく実現の運びとなった。
当日は渡辺氏がサプライズを用意してくれていた。
“かねき”のすぐ傍を流れる江戸川土手に今を盛りと咲き誇る菜の花をお店へ向かう途中に立ち寄ってくれ、目の保養をさせてくれたのである。
この黄色満艦飾の素晴らしい景観もおそらく今年が最後ということで、是非一見をということであった。地元の方がせっせとここまでの景観づくりに励んで来られたとのことだったが、近年、モグラが多数繁殖し、堤の脆弱化をもたらしているとのことで種蒔きを今年から禁じられたとの由。治水の問題から致し方ないことなのかも知れぬが、何とも味気ない話である。
甘い香りを漂わせる菜の花堤をあとにし、これも“かねき”至近にある“一茶双樹記念館”(流山市流山六丁目670-1)を同行の俳人たちと見学し、おもてなしの準備整った流山“かねき”へと勇躍向かうこととなった。
流山“かねき”の渡辺氏はこの江戸川沿いのお店の四代目ということで、同じように古くからこの川沿いで営む数軒の料理屋のなかで海魚を扱っていたのがこの“かねき”一軒だけだったという。他は川魚料理の専門店とのことである。
さて祇園の紋章、つなぎ団子の提灯がさがる玄関から広々とした店内へ初めて足を踏み入れたわたしの目に飛び込んで来たのが、美しい白木のカウンターである。当日、われわれが京料理“かねき”を堪能しつくした現場(げんじょう)である。
当日は卯月朔日ということで、はるばる京から取り寄せた筍が当日のひとつの目玉であったが、筍尽くしというのも芸がないとの渡辺氏のもてなし心で、琵琶湖の本もろこをはじめ “かねき”の京料理の神髄を惜しげもなく披歴してくれたのである。
その京料理をいただきながら、やはり職人の技というものは嘘をつかぬ。本物の料理はやはり掛け値なく美しく、旨いということをあらためて知らされた次第である。
そして旨い料理に遊び心はつきもので、徳利でお酌をと渡辺氏が一献、献じようとした際、徳利がおいしい日本酒の滴とともにうぐいすの谷渡りのような鳴き声を発したのである。
その粋な計らいに感じ入り、この後はみんなで和気あいあいのお酌合戦が繰り広げられたのは、当然の成り行きであった。
一品、一品、丁寧に手の入った料理とそれを肴にクイクイいってしまう日本酒にわたしの心は“とろりんちょ”と、どこかで聞いたようなイイ気持ちになり、流山の春の酔い、もとい、宵もしずかに更けていったのである。
そして忘れてならぬのが、春をよそおう瑞々しいデザートが春の宴のラストシーンを飾ったことを・・・危ない危ない・・・せっかく写真を撮ったんだったっけ・・・