彦左の正眼!

世の中、すっきり一刀両断!で始めたこのブログ・・・・、でも・・・ 世の中、やってられねぇときには、うまいものでも喰うしかねぇか〜! ってぇことは・・・このブログに永田町の記事が多いときにゃあ、政治が活きている、少ねぇときは逆に語るも下らねぇ状態だってことかい? なぁ、一心太助よ!! さみしい時代になったなぁ

浴龍池

後水尾上皇を巡る人物と建築物 2の9 ――修学院離宮・上御茶屋 隣雲亭からの眺望5

 

2の9 修学院離宮・上御茶屋・隣雲亭から

 

【隣雲亭からの眺望(2009年1月・2005年11月)】

 

 標高149mという修学院離宮のなかでもっとも高い位置に建つ隣雲亭。下茶屋、中御茶屋をめぐって辿り着いた何の変哲もない平屋から、眼下に浴龍地を、そして目線を少し上げると一望に京洛を見下ろすことの醍醐味。そして遠く正面には京の西山、信仰の山である愛宕山が見える。

 

 

 後水尾上皇はそうした景観を我が眼に収めることで、徳川幕府に対し真の王者は自分であると、招いた客人に無言のうちに訴えて見せたのかも知れぬ。雄滝から落ちる水音が深閑とした隣雲亭に響き、いかにも巨大な瀑布が手のうちにあるような、そんな思い、錯覚を客人に抱かせるのである。まさに静謐の中で水音がいかに効果的な音響を作り出すのかを知りつくした巧みな演出である。そして浴龍池の水深がわずかに0.5〜1mと訊くにいたっては、その舞台道具を雄大に見せる演出家としての上皇の手練の技に舌を巻くしかない。

 

浴龍池と万松塢

眼下の浴龍池と万松塢

 

秋の浴龍池1
秋の浴龍池

 

秋の中島・万松塢
秋の万松塢
秋の隣雲亭から
秋の隣雲亭からの眺望

 

西山愛宕山を望む

西山連峰に連なる愛宕山

隣雲亭から西南方向に洛中市街を一望
隣雲亭の西南方向に洛中市街を一望

 

隣雲亭北側から雄滝を望む
隣雲亭北側から雄滝を望む

後水尾上皇を巡る人物と建築物---1にもどる

後水尾上皇を巡る人物と建築物--2の8にもどる

後水尾上皇を巡る人物と建築物---2の10につづく

 

後水尾上皇を巡る人物と建築物 2の7 ――修学院離宮・上御茶屋5

2の7 修学院離宮・上御茶屋・大刈込(おおかりこみ)

 

【大刈込】

 

後水尾上皇のこの離宮造営の真骨頂が「水」にこだわった「浴龍地」と「大刈込み」という構築物にあると言えば言い過ぎであろうか。

剪定された大刈込(堰堤上の並木の向うに浴龍池)

 

 

「水」に異様なこだわりを示す後水尾上皇は、この修学院の地において、比叡山山頂付近に源を発する音羽川(延長5.4km 高野川に合流)から分かれた谷川の水を堰き止め浴龍池と呼ばれるいわばダムを造ったが、そのダムの決壊を防ぐため周りには高さ15m、延幅200mにおよぶ大規模な土堰堤(えんてい)を築いた。

 

土壌を固めたうえに四段の石段を組み上げ強度を保たせたその法面(のりめん)は、針葉樹類(24種)、常緑濶葉樹類(1123種)と落葉樹類(1320種)の多種多様の樹木を植えた混ぜ垣で覆い隠し、無粋となりかねぬ堰堤の景観を「緑の大構築物」へと変貌させた。その構想や壮大であり周囲の「自然との共生」を目指したものと見える。下御茶屋から見上げても、その丘の上にまさか舟遊びの出来る宏大な池が広がっていようとは思いもつかない光景なのである。

大刈込の上の堤道と浴龍池

 

いかにも自然な丘に見えるのだから、その隠された趣向へのこだわりは常人の及ぶところではない。そして幡枝離宮(はたえだりきゅう=その上御茶屋の庭園が後の圓通寺の庭園である)という修学院離宮の前に上皇が営んだ洛北の山荘が庭園造営に不可欠の「水」という要素において大きな欠点を有していたことを思い起こすのである。

 

さらに比叡山を借景とする圓通寺の枯山水平庭にある4、50種類の樹木で造られた高さ1.6mの「混ぜ垣」のことに思いがゆくのである。

 

そうした意味でも後に拝観する「桂離宮」とはコンセプトにおいて本質的に異なっていると言える。

 

「大刈込の樹種」

(参照:「修学院離宮上之御庭大刈込の樹種」丹羽鼎三著)

 

1.針葉樹類(24種)

1.マツ科---杉・檜・樅 2.櫟(いちい)科---らかん槇

 

2.常緑濶葉樹類(1123種)

1.  モチノキ科---いぬつげ・くろがねもち・そよご・まめつげ・もちのき

2.  イバラ科---かなめもち

3.  ヒイラギ科---ぎんもくせい・ねずみもち・ひいらぎ

4.  ツバキ科---さかき・さざんか・もくこく

5.  ハヒノキ科---くろばひ

6.  スイカズラ科---さんごじゅ

7.  シャクナゲ科---しゃしゃんぼ・もちつつぢ

8.  クスノキ科---しろだも・やぶにくけい

9.  グミ科---つるぐみ・なわしろぐみ

10. キョウチクトウ科---ていかかづら

11. モクレン科---びなんかづら

 

3.落葉樹類(1320種)

1.  イバラ科---うらじろのき・かまつき・ざいふりぼく

2.  カエデ科---おおもみじ・こはうちはかえで

3.  キク科---こうやぼうき

4.  シャクナゲ科---かくみのすのき・こばのみつばつつぢ・なつはぜ

5.  ヘンルウダ科---からたち

6.  ユキノシタ科---こあじさい

7.  スイカズラ科---こつくばねうつぎ・やまうぐいすかぐら

8.  穀斗(かくと)科---こなら

9.  ニシキギ科---こまゆみ

10. ウコギ科---たかのつめ

11. クスノキ科---だんこうばい・やまかうばし

12. ミヅキ科---はないかだ

13. クマツヅラ科---むらさきしきぶ

 

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【2の8につづく】

浴龍池

大刈込

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