河津桜はこの週末頃(2月26、27日)から満開!!
 
住所:静岡県賀茂郡河津町440
電話:0558-32-1031

自家源泉を有する峰温泉の「玉峰館」は、おそらく人によってかなり評価が異なる宿のひとつであろう。


 

 「玉峰館」のすぐ隣にある大噴湯公園の源泉大噴湯(1時間毎の噴上げ)。この日9時半の噴上げの時は虹も見えた。


 玉峰館は大正15年創業の老舗である。というより奈良時代の宝亀10年(779)に起源を持つ峰温泉がその後廃れ、平安時代後半より言い伝えだけが残っていたものを、地元の素封家の援助も得ながら大正15年に源泉を掘り当て、千年の眠りから甦らせた人物こそ、誰あろう「玉峰館」初代の稲葉時太郎氏である。


 

 だから「玉峰館」は老舗というより峰温泉そのものと云ってよい宿である。実際に玄関脇には源泉櫓が聳え立ち、大量の湯煙が宿の入口に靡いてくるのは圧巻であり、ある種の感動を覚える。


玄関脇に源泉櫓(やぐら)と湯煙が・・・
 

 バリ島の家具をあつらえたAsian Tasteの部屋に泊まりたかったが、JTBは純和風の部屋しか契約していないとのことで、次回はネットか電話で「和洋風の部屋」で直接予約を取ることにした(「和洋風に泊まりたいがどうしたらよいか」との質問に対する玉峰館のお話)。


玉峰館HPより、和洋の間(写真・玉峰館に掲載確認済)
 

 ただ、当宿は夕食も朝食もすべてお部屋で摂ることになっており、昔ながらの純粋な和風旅館のお持て成しを継承している。


玄関に入って格子越しにおしゃれなロビーが

玄関ロビー
 

 客室は14室ということで、和洋風4室、純和風10室とこじんまりとした旅館である。それに対し終日利用可能な源泉かけ流しの温泉が5つあり、温泉好きの旅人には堪らない宿と云える。実際に家内は3つの温泉をめぐって源泉を満喫していた。


 

 しかも平日の宿泊であったため、われわれ家族三人は大露天岩風呂を併設する温泉を家族風呂として使用させてもらえた。内鍵を掛け、ドアの外に「入浴中」の木札を掛け、まことに贅沢な時間を過ごすことができた。


大きな露天岩風呂
 

 浴室内は屋内風呂も大露天岩風呂も20余名は同時に入浴できるほどの広さである。「ご家族でどうぞ」と言われた時には、それなりの広さと思っていたので、本当にびっくりした。露天の塀越しに源泉櫓が見えて、いかにも湯治に来たという実感しきりであった。


露天風呂から源泉櫓が見える
 

 夕餉は伊豆の海の幸が豊富で黒田泰蔵氏作の白磁の清楚な器で戴く懐石料理は魚好きのわたしには文句なしであった。



温・里芋と大根
むつ・めじ・あこう鯛のお造り

和紙で包んだ「ぶりの奉書焼」

ブリの奉書焼の中身です。蓮根・豆鼓(とうち)・葱でからめてます
 

食事の最後の方に板長の大賀氏が挨拶旁々、料理の説明や感想を聞きに来られたのも新鮮であった。「ぶりの奉書焼」のレシピをお聞きし、一度、家内に造ってもらうことにした。分からないときは電話を戴ければFAXでお送りするとのことで、一見の客にも実にアットホームな気分を味合わせてくれる宿である。


甘鯛の蕪蒸し
地鶏と丸大根の炊合せ





 また、われわれはベースに懐石コースをお願いし、別途、伊勢海老のお造りをつけてもらったが、その日に揚がったお魚を焼くなり、煮るなり、事前にオーダーしておけば、お客好みのメニューにも自在に応えていますとのことであった。これも客室がたったの14室という少なさであるからこその手作り感の伝わるお持て成しであると感じた。

 

朝食も海の幸が一杯。
 


昨夜の伊勢海老のお頭入りのお味噌汁も絶品でした。

 
 話は戻って、夕食後には歩いて数分の川岸にライトアップされた河津桜を観に行った。


 戻ってから「蔵」を改装したシックなBARでカクテルを戴いた。われわれ家族のほかには中年のご夫婦がカウンターで男衆の木村氏を相手に静かに旅の話をされていただけである。静かで落ち着いた大人の空間と時間がその蔵のなかにはあった。


BAR入口

BAR の奥には囲炉裏席も

 
 冒頭に述べた「人によってかなり評価が異なる」と書いたのは、全体が純和風であるために、室内の洗面台も昔風で、今流の可愛らしい「アメニティー」などはなく、いたって簡素で必要最低限のものしか置いていないことである。さすがにトイレはウォシュレットで清潔であるので、そこはまったく問題ない。


泊まった部屋は縁側に洗面台が
 

 要はベッドじゃないと駄目とか部屋にシャワーがないと厭だといったホテル派の旅人にはかなり難があるかなと思ったまでである。


 また大きな温泉でも洗面・蛇口の数が少なく、本当に少人数向きに敢えて造られた贅沢な宿であり、便利さという名のもとに忘れ去った手造りのひと肌のぬくもりを感じ取れる宿であり、わたしは心地よく感じたということである。


asian goodsがさりげなく置かれた談話室
 

 次回は河津桜の満開時に和洋風部屋に泊まることでわたしの心はきまっている。


 さらに、おいしい料理と湯量豊かな温泉を愉しめるだけでも、玉峰館は十分な価値がある。だからお抱えシェフ付きの別荘のような気分で、気ままに泊まりにゆける隠れ家のようなものだとも思った。