俵屋吉富の「雲龍」―――旅人の見た京都の御菓子 京都グルメ
老松の「花びら餅」―――旅人の見た京都の御菓子(京都グルメ)
旅人の見た京都のお菓子
京都市中京区丸太町通烏丸西入常真横町193
075−231−5028
営業時間:10:00-17:00・定休日は日曜・祝日(また臨時休業有)
お土産に戴いたもので恐縮ではありますが、京都の馨があまりにゆたかなものでしたので、戴いた方のご諒解を得たうえで、ここにご紹介することになりました。
それは、江戸時代の明暦(1655-1658年)年間に創業したと伝わる「御州浜司」で、現在のお店の名称が第14代当主の名となる「植村義次」という老舗の「春日乃豆」といいます。現在、「州浜」だけを一枚看板として商うお店としては、「植村義次」が唯一のお店になってしまったそうです。
この「春日乃豆」は、当家初代の作品だそうです。ですから、350年前からの由緒あるお菓子ということになります。棹物菓子である「州浜」を指先でひとひねりして、お多福豆(空豆)を作って、丸太町の古名である春日小路にちなみ名付けたということです。そして、当地では「豆のすはま」と親しまれているそうです。
「州浜」自体は、大豆を浅く炒った州浜粉と砂糖を水飴をつなぎとして練った棹菓子で、菓子の横断面が、州が発達して汀の輪郭が波模様のように出入りした州浜に似ていることから名づけられたといわれています(また、そこから意匠された『州浜紋』そっくりなので、そう命名されたとも)。
おいしい州浜には良質の水飴がポイントになるとのことで、「植村義次」では石川県金沢の俵屋の飴を使用し、砂糖を煮詰め方で伝統の味が生まれる。州浜の生地作りは、その日の気温や湿度で砂糖を煮詰め、水飴と練ってゆく。それも水と温度で調整しながら、堅くならないようにするのが要諦だとのこと。う〜ん、まさに匠の技なのでしょう。
味は大豆の油分の匂いがほのかに残り、和菓子としては珍しい部類に入るのだそうだが、わたしにはそのほっこりとしたまろやかな大豆の味がとても好ましく思えた。辛口のお酒のつまみにも合うのではないかと、実はひそかに考えているわたしである。
それと、「春日乃豆」がそもそも州浜であると説明書きを読んで、わたしは即座に桂離宮や京都御所、朱学院離宮など回遊式庭園に造られた州浜の玉石を思い浮かべたのです。この「春日乃豆」が、州浜に敷き詰められた、あの拳大の扁平した円い玉石にそっくりだったからです。この感想はわたしのみでなく、家内もてっきりそうなのだと思ったとのことでした。そちらの印象もまた京都らしくて趣があるなぁと、思ってみたりしました。
いかにも京都の御菓子という味の上品さと形のかわいらしさがたまりません。戴いておいてなんですが、京都の手軽なお土産としてはお値段もお手ごろ(¥500〜)で、しかもちょっとお洒落で、お薦めです。