桜井市三輪535 ☎ 0744-43-7411
そうめん處・“森正(もりしょう)”の三輪素麺は評判が良くお馴染さんがたくさんいることは聴き知ってはいた。
ただ、今回は折悪しく中途半端な時間であったため、素麺ではなく、早朝から歩き通しの一日の疲れをとるために甘味処として利用させていただいた。
時刻は14時40分。当日はこれから参拝というタイミングであったが、明日香村を精力的に廻ってきた疲れが足腰にどっときて、甘いものがほしいと体躯が要求していた。
そこで、まずは一服ということで二の鳥居の真ん前左手に店を構える“森正”さんに入った。
麻の暖簾をかき分けて、石敷きの店内へ足を踏み入れると、時間が中途半端ということでお客はわれわれ二人のみ。
古い大きな日本家屋の庭先でお店を開いており、庇の先に葭簀(よしず)葺きの屋根を設けたなかなかに風情を感じさせるインテリアである。
加えて橙黄色の燭光が店内にほんわかとした温もりを伝えてくれる。
そんな“森正”、わたしは“でっち羊羹”なるものを注文。家内はもちろん“わらび餅”。
そして雨催いの一日、冷え切った体躯にはホットコーヒーも当然、オーダー。見てください、コーヒーも葭簀に似合う流儀で出てまいりました。
くっとひと口、咽喉に流し込んだマイルダな味・・・。あぁ、温かい・・・
次にお目当ての“でっち羊羹”・・・何だろうと頼んでみたが、どうも見た目は水羊羹である。それにしてもしっかりと量がある。何だかうれしくなって、心もあったまる・・・単純です。
まず、ひと口。おいしい・・・
そしてまたひと口・・・おいしいです。
上品な甘さで、これは言っては何だが、あの祇園の甘泉堂さんの水羊羹にも十分引けは取らぬとお見受けした。
次に家内が本物のわらび餅との感想を述べる“わらび餅”・・・にも触手を伸ばす。
三輪山の湧水かそれとも狭井神社の薬井戸のあの薬水でも使用しているのだろうか、透明感のあるヒヤッとした口触りが何ともいえぬ清涼感を口腔に広げてくれる。これまた、上品でしっとりとした一品である。
ゆったりとした時間の流れるお店でもう少しゆっくりしたかったのだが、これから三ツ鳥居を拝観し、拝殿で参拝をしにゆく身。
ごちそうさまとお礼を言って、“森正”をあとにした。
大神神社参拝の際には地にも味にも優れた“森正”。一足止める価値のある一店である。次回は温かい“にうめん”をスルスルといきたいものだと思っている。