「村上世彰氏逮捕に覚えた漠たる不安」

 

『東京地検特捜部は5日夕、証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で、「村上ファンド」代表の村上世彰(よしあき)容疑者(46)を逮捕し、証券取引等監視委員会と合同で東京・六本木ヒルズの村上ファンド事務所など約10カ所を家宅捜索した。』(産経新聞2006.6.5

 

123日の同特捜部によるホリエモン逮捕に続き、65日、とうとう村上ファンドを率いる村上世彰氏が逮捕された。ここ数年、市場の成功者、改革の旗手として日本中を賞賛の嵐で席捲した時代の寵児が、相次いで地検特捜部に逮捕されるという異常な事態となった。

 

両名の証券取引法違反による逮捕は、ここ数年、花よ蝶よと持て囃されたヒルズ族に対して捜査当局の頂門の一針、一罰百戒的な懲罰のように思えてならない。同じ罪状での逮捕だが、どうも巨魁は村上氏であって、その意味で堀江貴文容疑者(33)の場合に、捜査当局の恣意性を強く感じた。村上氏に辿りつくための逮捕ではないのか・・・。

 

勿論、法を犯した罪は厳しく罰されねばならぬ。しかし、法の適用と執行は公平かつ公正でなければならぬ。最近の地検や地裁の司法行為・判断に対して、強く大衆を意識した「ポピュリズム」の匂いを感じるのは、果たしてわたしだけだろうか。こうした市民感情を意識した権力を恣意的に使う傾向は、当然、是正をせねばならぬし、阻止せねばならぬ。戦前の司法界やマスメディアが、ポピュリズムを巧妙に利用し、相乗効果的に国策遂行に力を貸していった暗い歴史を有する日本である。

 

日本人の血の中に、「権威に対する崇敬の念」というDNAが、抗しがたく存在していることをわたしたちは決して忘れてはならない。時代がそうした坂道をゆっくりとではあるが、下っていっているように思えてならない。堀江・村上両氏の逮捕劇を見て、正に、「漠たる不安」を感じることを禁じえない。