神々のふるさと、対馬巡礼の旅 ―― 1

神々のふるさと、対馬巡礼の旅 ―― 2(和多都美神社)

神々のふるさと、対馬巡礼の旅 ―― 3 和多都美神社の玉の井

神々のふるさと、対馬巡礼の旅 ―― 補足(参考・引用文献について)
 


磯良の墓を護る三柱鳥居。潮が満ちてくると鳥居は海水に浸される


磯良の墓


三柱鳥居は海水の入り込む潮溜まりに 

 

 

阿曇磯良の墳墓伝承のある磐座を中央に収める三柱鳥居は非常に珍しい鳥居様式である。全国でも数例(京都・木嶋神社、東京・三囲(ミメグリ)神社、)を数えるのみで、就中、京都の蚕の社と親しまれている木嶋(コノシマ)神社(京都市右京区太秦森ヶ東町)の三柱鳥居がつとに有名である。

 


海神の豊玉彦命の墓を護る三柱鳥居(横から)


三柱鳥居が美しい・中央に海神の墓が。 

 

  その木嶋の鳥居も拝殿正面にあるのは笠木に反り増すのない普通の神明鳥居で、三柱鳥居は拝殿左奥の階段を数段下った、薄暗い元糺(モトタダス)の池の中に立っている(現在は近隣の宅地開発の影響で水は枯渇し、枯れ池となっている)。 また三囲神社の三柱鳥居は中心にある井戸を護るように立っている。

神社の前

京都太秦の元糺にある木嶋坐天照御魂神社

元糺の池に立つ三柱鳥居

水が溜まる石組に囲まれている

湧水の水位を測るのだろうか、三柱鳥居の前に大きな石組みの池が

三柱の中心に磯良の墓を思わせる石の造作が・・・

こうした例と和多都美の潮溜りの海中に立つもの(磯良恵比寿)とを併せ考えると、謎と云われる三柱鳥居の由来に、海なり水、或いは潮の満ち引きに深く関係していることは確かなところであろう。

 

さらに木嶋神社の別名である木嶋坐天照御魂(コノシマニマスアマテルミタマ)神社という名が、後日、訪ねる対馬の阿麻テ留(アマテル)神社の御祭神が、「対馬下県主『日神命』または『天照魂命』」(「大帳」)とあるのが、「日の神」と「海・水の神」との融合に何か関係があるようにも思われる。

 

同様に、延喜式名神大社の摂津の新屋坐天照御魂(ニイヤニマスアマテルミタマ)神社の論社である西福井、宿久庄、西河原の新屋坐天照御魂神社(共に大阪府茨木市在)の祭神のなかに、大綿津見大神(西福井)、住吉三神・磯良神(宿久庄)、住吉神・磯良神(西河原)の顔が見えることも、「日の神」と「海の神」の融合を暗示させる。

 

とくに興味深いのが、西河原天照御魂神社の元境内社であった磯良神が独立して、茨木市三島丘に疣(イボ)水・磯良神社として祀られている。その地に「玉の井」という霊泉があり、山幸彦伝説の「玉の井」と同名の井戸があるのも興味深い。

 

そして、新屋天照御魂の3論社に共通して神功皇后の三韓征伐時の禊ぎや凱旋時にここの玉の井で洗顔し、美しい顔に戻った(出征時には男装し、顔に疣(イボ)をつけた)とされる皇后伝承が残っているのも注目すべき点である。