日興コーディアルグループは25日、有村純一社長と金子昌資会長が引責辞任し、桑島正治取締役が新社長に就任(26日付け)するとようやく発表した。

 

「1人の社員による過失と隠蔽」と釈明し、トップが頬かむりを決めこむ同グループの対応に、22日、山本有二金融担当相が「辞任、解任ということがあり得る」と経営陣の責任に言及したことが、この決断の決め手となったと思われる。それにしてもトップの判断としてはあまりに遅きに失したと言わざるをえない。

 

しかし、この事件は、わたしはこの日興の有価証券虚偽記載を敢えて事件と呼ぶが、経営陣の退陣で終わらせる話ではそもそもないはずである。直近におきたカネボウやライブドアの粉飾事件における検察の対応と今回の事件に対する取り扱いに大きな差異があることに合理的理由が認められないからである。

 

ライブドアは今年1月、証券取引法の容疑により堀江氏の自宅やライブドア本社など東京地検の家宅捜索に始まり、一週間後には堀江貴文社長(当時)ら4名が逮捕され、それからおよそ2ヵ月後に証券取引等監視委員会が証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に告発した。そして周知のごとく、現在、世間の注目を浴びた裁判が進行中である。

 

またカネボウ事件については産業再生機構の手による再建が図られるなかで、昨年7月、帆足隆元社長、宮原卓元副社長らが逮捕され、今年の3月、「証券取引市場の信頼を著しく失墜させた悪質な犯行」として、帆足被告に懲役2年、執行猶予3年、宮原元被告に懲役1年6月、執行猶予3年の判決が下り、確定した。

 

社会的に大きな影響をおよぼしたカネボウの粉飾決算やライブドア事件を契機に今年6月には「証券取引法」の一部が改正され、有価証券報告書等開示書類の虚偽記載の罰則が強化され、従来の「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」から「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」に刑罰が引き上げられた。まさに日興で粉飾の噂が取りざたされているなかでの罰則強化であった。日興の粉飾については昨年12月頃からすでに日経新聞、東京新聞などで連結はずしの決算疑惑が報じられ、今年3月には国会でも民主党により取り上げられた。

 

資本市場の重要な一翼を担う日興コーディアルグループがその罰則強化の動きや意図を知らぬはずもなく、その間に有価証券虚偽記載に手を染め、隠蔽していたことの罪は、一事業会社が犯した罪とはその重みにおいて大きく異なると断じざるをえない。

 

そう考えたとき、同じ粉飾決算の事件でありながら検察の対応にこうした違いがあるのはどうしたことであろうか。目立ち過ぎのヒルズ族に対する頂門の一針として堀江貴文被告の逮捕があるとしたら・・・。そんなことがあるはずはない。であれば、日興事件も当然、次の展開があってしかるべきである。