鳩山首相は、523日午前、沖縄県庁を訪れ、仲井真弘多知事と会談。普天間基地移転問題の政府の具体的案を伝えた。移設先は事前の報道で流れていた「辺野古」であった.


そして「最低でも県外」が沖縄県内、しかも自民党政府が米国と合意した辺野古にせざるを得なくなった理由について、鳩山首相は以下のように釈明した。

 

朝鮮半島の情勢、東アジアの安全保障環境に不確実性が残る中で、在日米軍全体の抑止力を低下させてはならない。普天間所属の海兵隊のヘリ部隊を沖縄の他の部隊から切り離して国外、県内に移設すると、海兵隊の機能を大幅に損なう懸念がある。現在の安全保障環境の下で、代替地は県内に置かざるを得ないという結論になった

 

前回訪沖した54日、鳩山首相は沖縄の海兵隊の抑止力効果について「考えが浅かったと言われれば、その通り」と、己の安全保障についての浅薄な思索を認めた。


しかし、今日、「在日米軍全体の抑止力を低下させてはならない」ので、海兵隊を県外・国外へ移転できぬと言い、その一方で米軍基地の75%が集中する「沖縄県民の負担軽減」を繰り返し強調する首相は、今後の安全保障体制をどう考えているのであろう。

普天間の海兵隊のヘリ部隊のみの移転が無理であれば、「沖縄の負担軽減」のためには、全体としての抑止力を低下させぬ、「より大きな戦略単位」の米軍部隊の県外移転なり国外移転を行なわなければならぬことになる。

その目算が首相なり民主党政府はついているのだろうか。その具体的な案なり構想がない限り、「負担軽減」という言葉を、軽々に繰り返すべきではない。

どうも鳩山という人物はヘリの騒音量が減ったり、訓練による軍用機の離着陸回数が減れば、県民の負担軽減となると考えているのではないのか。それを本質的負担軽減と言うのであれば、沖縄の戦後の基地問題の歴史、沖縄県民が負わされた負担の重みに対し、あまりにも無頓着で、無神経で、そして不誠実な態度でありはしないか。

今日のような、話せば分かる、真心で語れば通じる式のルーピー・ワールドで、沖縄問題、安全保障問題は当然だが、解決せぬ。日米安全保障条約の是非、すなわち自国軍隊による防衛にまで踏み込んだ安全保障のグランド・デザインがベースにしっかりあって初めて、本質的な沖縄問題の解決へ向けた議論が始まるのだと考える。

その場合にも、現状の北東アジア、東南アジア等の国際情勢が続く限り、地政学的に軍略拠点としての沖縄の重要性は変わらぬのではないのか。

沖縄から米軍の姿が仮に消えたとしても、代わって自衛隊が進駐してくる可能性が高いのであれば、鳩山首相は「負担軽減」という言葉を軽々に乱発すべきではない。

そして、どのようにしてこの国の安全保障を担保するのか、民主党政府は腹を据えた本質的議論を行ない、その考えを国民の前に具体的に提示すべきである。