BBC世論調査――世界によい影響をおよぼす国No1は日本、でも・・・(上)
その回答内容を詳しく見ると、ネガティブ評価がポジティブを上回った国は27か国中2カ国(前回33カ国中2カ国)のみであり、米メリーランド大学PIPA研究所のスティーブン・カル氏が「一般的に日本やフランス、Euのように軍事力とは異なった(soft power)形で、世界と関わる国々がプラス評価をされる傾向がある」と説明しているようにわが国の平和外交イメージが世界に着実に定着していると見ることができる。
またネガティブかポジティブか以外の「どちらとも言えない」等の回答数字は、見方を変えればその国に対する「無関心」率とも言い換えれるが、日本は26%と、カナダの33%や12カ国平均の30%よりも低い数字となっており、ヒアリング国においてわが国の存在感が薄いということでもなさそうである。因みに米国の「無関心」率は19%と最も低い数字であり、善きにつけ悪しきにつけその存在感は大きいことがわかる。
ところがそれなりの存在感を示すわが国においてきわめて残念なことがひとつある。それはネガティブ評価が上回った2国が、2回の調査とも中国(ネガティブ71→63%)と韓国(同54→58%)というアジアで最も近い隣国であるということであり、その比率が高いと言うことである。歴史認識の違いや反日教育、領土問題等両国のわが国への対応は依然、厳しいままであることを如実に表わした数字であると言える。
わたしはここで世界の全ての国から「いい国」であると評価されるべきであると主張する気は更々ない。それは逆に自己主張のない相手にとって都合のよい国と言い変えてもよく、ネガティブ評価をする国が存在することのほうが国際政治の世界では自然であり、国益を中心に据えた健全な外交に努めている結果とも考えられるからである。
ただ最も近い隣国2国のマイナス評価が継続し続けるなどそのネガティブ度合いが、非常に手厳しいことは、隣国関係固有の領土問題等を脇に置いて考えたとしても悲しくつらいことである。そもそもこの両国は言うまでもなく歴史的に非常にながい交流のある国であり、わが国文化のバックボーンを築くにあたって多大な影響をおよぼした国でもある。
そうした国々がわが国に対し大きなネガティブ評価を下すことは、主として先の大戦の問題が大きな要因であるとはいえ、互いの誤解や偏見を氷解させるためにもっと胸襟を開いて話し合いができぬものかと、つい愚痴とも嘆きともつかぬ言葉が口を突いて出てしまう。
こうなったら次世代の若者たちに任せるしかないのかと自暴自棄に思ってみたりもするが、国益の衝突でもある外交問題が正面に居座るケースでは、やはり現実政治の世界で解決を図るべきことは論を俟たない。
ただその一方で、民間同士の交流を深める努力はビジネスや芸術面の交流に留まらず、個々人のちょっとした相手を思いやる努力や心遣い、言葉遣いなどが、小さな行為ではあるが誤解や偏見を解く最初の一歩であることも事実である。
そして何もことさらに日本人が自虐史観に陥る必要はない。ないものはない、あったことはあったと客観的、冷静に事実を再検証しゆく地道な努力を政府まかせにするのではなく、われわれ民間人が相手の歴史と自国の歴史を深く理解してゆくことが求められる。そうした地道な努力を通じてお互いの信頼を芽生えさせてゆくことでしか、このネガティブ評価を下す隣国と本当の意味での信頼関係を構築することはできないのではないか。
そこで初めて互いに言いたいことを腹蔵なく言い合える大人の付き合いが出来るのではないかと、日本が世界によい影響を及ぼす国のNo1であるとのBBC世論調査の表ではなく、裏側を覗いてみて思ったところである。
外務省は日中歴史共同研究の第2回の会合を東京で19、20日の二日間にわたり開催すると14日に発表したところである。