東証一部上場の「加ト吉」(本社 香川県観音寺市)の外部調査委員会(弁護士、公認会計士で構成)は、21日、かねてとりざたされていた同社をめぐる粉飾決算疑惑問題について、同社と子会社加ト吉水産等との間で伝票上のやり取りを繰り返し、存在しない商品取引を装い売り上げを積み上げてゆく循環取引という手法で、架空売り上げを2001年から2006年までの6年間にわたり計上していたことを確認したことが、関係者の証言により明らかになった。今後、同社は週内に東京証券取引所に循環取引の事実を報告するとともに詳しい調査結果を公表するとされている。

 

加ト吉はTVコマーシャルでもよく知られている大手冷凍食品会社であるが、直近決算の2006年度の有価証券報告書には連結売上高は3399億円、経常利益は145億円9700万円と堂々たる数字が記載されている。また420日(金)現在の東京証券取引所の株価終値は756円、その時価総額は1231億円にのぼっている。

 

 調査委員会によるとその架空売上額は数百億円に上ると伝えられ、これが事実であれば、日興コーディアルグループやライブドアと同じ「有価証券報告書の虚偽記載」にあたり、証券取引法に抵触することになる。

 

 約187億円の利益水増しの粉飾決算を行なった事件で上場廃止か否か世間の耳目を集めた日興コーディアルはついこの前、313日に監理ポスト割り当てを解除され上場維持が決定したばかりである。そのときの東証の監理ポスト割当ての解除理由は「株券上場廃止基準第2条第1項第11号a(上場会社が有価証券報告書等に『虚偽記載』を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合)に該当しないと認めたため」と、市場へ与えた影響は大きくなかったとの判断であった。

 

 またそのわずか3日後に、赤字決算であったものを50億円余の黒字決算に粉飾したとして2006414日に上場廃止となったライブドアの元社長堀江貴文被告が「有価証券報告書の虚偽記載」と「偽計・風説の流布」の二つの罪状により懲役26月の「実刑」判決を受けた。

 

その二つの「有価証券報告書の虚偽記載」事件において、東証の裁定に差異があったその判断基準についてさまざまな異論が唱えられたことは記憶に新しいところである。

 

 今般、加ト吉は6年間におよぶ循環取引という子会社を巻き込んだ不正取引を外部委員会で認定された。その報告書が週内に東証に手渡されることになるが、さぁ、今回の行司の采配はどう翻されるのか、その明快な判断基準をとくと見せてもらいたい。