参議院本会議場
参議院本会議場

5月9日、参議院本会議で、“川口順子参院環境委員長の解任決議”が可決された。


常設委員会である環境委員会の審議が意味がないとはもちろん言わぬが、いまの政治情勢のなかで、環境委員会の開催を一日も延ばせぬということより、外務大臣経験者と中国の外交政策を担う要人との会談を優先させることの方が重要であることは自明である。


政治家とは何かといった本質的理解において、この決議案に反対しなかった野党議員の資質に、正直、うんざりし、政治の質の劣化もここまで来たかと、暗澹たる気持ちになった。


5月9日、参議院本会議場で趣旨説明に立った民主党の松井孝治議員は、その解任理由を次のように語った。


「参院の渡航許可違反、かつ、委員長が自らの責任で招集した委員会を個人渡航の無許可延長によって流会に至らしめるという、憲政史上にも例のない事案であり、委員長として不適格の誹(ソシ)りを免れない」とし、国会ルールを守らずに渡航延長を敢行した川口議員の行動を「看過できないもの」、「暴挙以外の何物でもない」と批判した。


そこで、じゃぁ、どこが「看過できな」くて、どこが「暴挙以外の何物でもない」のかを、川口順子参議院議員が57日付文書で、「中国渡航延長に関する経緯説明」を行なっているので、検証してみた。


同議員は「滞在を一日延長することについて、24日朝、自由民主党の判断を仰ぎ、議院運営委員会に延長の手続きを取って」もらったが、野党側の同意が得られず、結果的には時間切れとなり、議院運営委員会決定(2324日両日の渡航許可)と異なる形の滞在延長とな」ったと、何も無断で日程を一日延長したのではないと語っている。


しかも、一日延長すべきと判断したのは、「中国の外交政策決定当事者であり旧知の楊潔篪国務委員及び外交政策に関し政権に提言をする立場のシンクタンク幹部と本件(尖閣諸島問題・閣僚の靖国参拝)に関し直接に十分な議論・反論を行い、現在対話がほぼ途絶えている状態の中国側に対し、我が国の考え方を伝えるとともに理解を慫慂することも国益上必須と考え」たからであると述べている。


そして、最後を、「我が国の政治家として主権と領土を守る国益に背中を向けることができなかったことが、今回の私の行動の理由であった」と、政治家としての矜持に満ちた言葉で締めくくっている。


政治の劣化が叫ばれて久しいが、久しぶりに、真の政治家の言葉を聴いたようでもある。川口議員の渡航延長は速やかに承諾すべきであったし、暴挙とは野党の承諾拒否の行動にあったというべきである。

議事堂

こうした今回の解任劇の一連の顛末は、自民党政権の揺さ振りをはかった野党の狙いとは反対に、結局、“政治家とは一体、何か”という根源的問いを解任決議に賛成した野党議員に厳しく衝き付けたものとなったと言わざるを得ない。


当日夜の輿石東・民主党参院議員会長の「国会ルールを破ったのだから当然の結果だ」とのコメントに、これで民主党復活の夢は潰(ツイ)えたと思った以上に、この党が政党で有り続けること自体が無意味であると強く感じたところである。


そして維新の会をはじめとする他の野党に国政に携わる資格はないとの思いも同時に抱いたところである。