札幌地検特別刑事部が3月1日、北海道教職員組合(以下、北教組)の実質トップら幹部3名(長田秀樹委員長代理・小関顕太郎書記長・南部貴昭会計委員)と、小林千代美衆議院議員の会計責任者で自治労北海道本部財政局長でもある木村美智留を政治資金規正法(企業・団体献金の禁止)違反容疑で逮捕した。

 

容疑内容は、08年12月〜09年7月にわたる計4回、総額1600万円の違法献金とのことである。鳩山由紀夫首相の毎月1500万円の母親からの贈与といい、この北教組の違法献金容疑といい、民主党には金回りのよい、しかも法律を無視することをなんとも思わぬタニマチがずいぶんとたくさんいるようだ。

 

今回、違法献金を受けたとされる民主党の小林陣営は、09年8月の総選挙において、既に、公職選挙法違反(買収約束、事前運動)の罪で、元連合北海道の札幌地区連合会長であった山本廣和被告が逮捕されている。そして、この2月12日、札幌地裁(辻川靖夫裁判長)より、懲役2年、執行猶予5年(求刑・懲役2年、公民権停止5年)の判決が言い渡されている。本件は今後、この刑が確定すれば連座制が適用され、小林千代美氏の衆議院議員の籍は剥奪されることになる。

 

それに加えての北教組の同陣営への違法献金容疑による逮捕である。今回は小林陣営の会計責任者の木村満美智留も逮捕されているが、同人は自治労の北海道本部財政局長のポストにある人物である。

 

今回の事件で気分が悪くなるのは、公職選挙法や政治資金規正法の違反に係わっていると見られる者が、民主党の大きな支持母体である連合・自治労・日教組などすべて労組関係者であるという点である。遵法精神の点で大きな欠陥を当世の労組は内包しているとしか思えぬ有様である。

 

就中、今回の北教組幹部の逮捕については、教育公務員特例法などで選挙運動への直接関与が禁止されている公立学校の教員を含めた組織ぐるみの選挙活動ではなかったのかという視点での検証が必要であると考える。

 

教育公務員特例法では、第18条「公立学校の教育公務員の政治的行為の制限」において、「公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、当分の間、地方公務員法第36条の規定にかかわらず、国家公務員の例による。」と規程されている。

 

そして、政治的行為の制限に関する「国家公務員の例による」を見ると、国家公務員法で以下のように規程されている。

 

第102条の「政治的行為の制限」の第1項において、

「職員は、政党又は政治的目的のために、寄付金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」とある。

 

そして、政治的目的・政治的行為については、人事院規則の14−7において厳格な定義がなされているが、今回の事件に関すると思われるものについて以下に記してみる。

 

(政治的目的の定義)

規則一四五に定める公選による公職の選挙(衆議院議員・参議院議員・地方公共団体の長・地方公共団体の議会の議員等)において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。

特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。

特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。

 
(政治的行為の定義)

「政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をな」すこと。

「政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること。」

「特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。」

 

現場の教員の政治活動の制限は以上のとおりであるが、一方で、「日本民主教育政治連盟議員」という日教組の関連団体がある。

 

日教組のHPにおいて、「what‘s 日教組」のなかの「関連団体」WEB上で、この「日本民主教育政治連盟議員」は次のように紹介されている。

 

「日本民主教育政治連盟(略称:日政連)は、教職員出身の議員や、子どもたちのためにより良い教育の推進をめざして活動する議員の集まりです。衆議院議員2名、参議院議員7名、自治体議会では約200人の議員が所属しています。」

 

さらに、輿石東民主党参議院幹事長ら所属議員9名(民主党8名・社民党1名)のHPアドレスがリンクされている。

 

そして「日本民主教育政治連盟」は、れっきとした政治団体である(Wikipedia)。

 

日教組はもちろん労働組合である。そして、その支持政党があってもなんら差し支えはない。また、教員がその組織に加入することにも問題はない。

 

しかし、北教組の違法献金容疑を契機として、その日教組の活動実態を垣間見るだに、教育公務員特例法の第18条に定める「公立学校の教育公務員の政治的行為の制限」は有名無実化していると言うしかない。延いては、日本の教育現場のあり方、いや公立教員のあり方に重大な疑義を呈すべき事件なのではないかと考える。

 

北教組事件を受けた3月3日の参議院予算委員会では、自民党の義家弘介議員が教員の政治活動について鳩山首相等に質した。そのなかで、同議員は、

 

北教組の地方支部が組合活動の一環として、勤務時間中に学校職場から送ったとされるファクスのコピーを提示。勤務中に教職員の組合活動が行われている疑いがある」と追及した。

 

また、現職教員の証言として、北教組の教員に支持者獲得のノルマが課されていることを紹介し、「選挙に莫大(ばくだい)な公金を原資とした裏金を使い、先生たちを違法に動員して自分たちのイデオロギー実現のために議席を買っている状態だ」とも非難した。

 

さらに同議員の「北海道で『竹島は歴史的に韓国の領土』との教育が行われている」という指摘に至っては、北海道の教育現場の政治的中立性はどのように担保されているのか、いやそれ以上に、その著しく偏向した教育実態に驚くとともに、一日本人として、深い憂慮を抱かざるを得ない。

 

こうした明らかな直接的政治活動やイデオロギー教育が北教組において実際に行なわれているのであれば、「教育公務員特例法」や「人事院規則」に、即座に違反する行為である。

 

その当事者たる北教組は1日、「政治資金規正法に違反する事実は一切なく、不当な組織弾圧と言わざるを得ない。事件の推移を見守るとともに、不当逮捕に対して弁護団と十分協議のもと、嫌疑を晴らすべく組織一丸となってたたかっていく」との声明を出した。

 

しかし、「日本民主教育政治連盟議員」を関連団体と謳う日教組の一支部が、そうしたことを言うのであれば、日教組の支援を受ける民主党にこそ、法令遵守の視点での事実解明をぜひ今国会でやってもらい、実態を詳らかにして欲しい。加えて、検察にもその方面での実態解明を急いでもらいたいと考える。これは北教組のいう組織弾圧でもなく、ましてや思想弾圧捜査などではない。法律遵守をせぬ輩を懲らしめるという意味において、その事実解明を進めてもらいたいと考えるのである。

 

20089月、当時の自民党政権時の国交大臣であった中山成彬氏は「日本の教育の『ガン』である日教組をぶっ壊す」とぶち上げ、その結果としての国会混乱の責任をとり、大臣辞任、そして議員辞職をした。その時、わたしは「辞任する必要などない、中山成彬国交相」と、書いた。日教組が日本の教育のガンであることは、今回の北教組事件を見て、やはりそうなのだと言わざるを得ない。

 

義家議員は自民党の票収集マシーンだけの人物かと思っていたが、意外や意外、ヤンキー先生、やるじゃん!!と、思った次第である。