「米国・中国・北朝鮮は近く6カ国協議を再開することで合意した」と中国外務省が10月31日、発表した。北朝鮮が10月14日の国連安全保障理事会による国連憲章第7章第41条に基づく制裁決議案を受けて、瀬戸際外交を止め会話路線に転じたのであれば、これほど幸いなことはないが、そう断じるのは早計であり、危険である。
10月9日の地下核実験が十分な成果をあげ得たか否か、その規模の小ささから失敗の可能性が指摘されている。もしそうであれば、これまでの核保有国と非核保有国に対する米国の外交圧力のかけ方に明確な対応の違いがあることを熟知している金正日が、核開発の完成を急ごうとするのは当然の帰結であろう。
そう考えると今回の6カ国協議への復帰の動きは、単純に喜ぶべき話ではなく、逆に北東アジアの緊張をさらに高めることになる単なる時間稼ぎなのではないかと邪推したくなる。あと数週間なのか、あと数ヶ月なのか、同国が核開発に必要とする時間がどれほどであるかは、もちろん知る由もない。
しかし、平成14年9月17日に発された日朝平壌宣言の不履行やこれまでの米国との狡猾な外交手口および国連の場における傍若無人な立ち居振舞い、老練な手練手管を見ていると、今回の復帰宣言を素直に「はい、そうですか」と、鵜呑みにするわけにはいかない。
わが国の安全保障上、きわめて懸念すべき隣国の核保有に時間的猶予を与えるべきではない。核関連施設に対する不断の監視体制をさらに強化し、慎重でかつ注意深い外交交渉が引き続き求められる。そして北朝鮮に不適切で不穏な動きが認められたときには、米中韓露と十分連携し、国連安保理決議違反として即座に、国連憲章第42条に掲げられる「安全保障理事会は、第41条に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。」による軍事的措置という制裁に踏み込むことを覚悟し、準備を進めておくべきである。
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