1972515日の沖縄復帰から今年で41年目である。なぜ、41年目などという中途半端な数え方をするのか。

それは、去る428日、サンフランシス講和条約の発効により、日本が完全なる主権を回復し、国際社会復帰を果たした61年目だとして、政府主催が“主権回復の日”の式典を開催した中途半端な節目をつけたことに倣(ナラ)ったまでである。

要は、60年目の切りのよい節目の年には、自民党が政権の座に座っていなかったため、政権に復帰した最初の428日に、一年遅れの式典を開催したものである。

だから、沖縄復帰後41年目というのも、一応、節目の年と言っておこう。その節目の年に、前泊博盛(マエドマリヒロモリ=沖縄国際大学教授・前琉球新報社論説委員長)の“日米同盟を問い直す”という講演会を聴いた。  

日米同盟を問い直す

前泊博盛氏は、2004113日に「日米地位協定の考え方」という外務省の機密文書を全文スクープし、同年のJCJ(日本ジャーナリスト会議)大賞や石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。そしえ、今年の31日に、“本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」”(創元社発行)という本を共著で上梓している。

前泊博盛氏
前泊博盛氏

なぜ、この講演についてわざわざブログにアップしたかというと、恥ずかしながら、わたしは今回の講演で、初めて“日米地位協定”の真の中身について知らされたからである。そしてその恐るべき本質を知るに至り、この国が戦後、この協定により米国の植民地に貶められたのだという事実に愕然としたからである。

講演会
日野市新町交流センターでの講演会

これまでも、米海兵隊のグアム移転費用の肩代わりやオスプレイの強引な沖縄配備や訓練地域の決定など、事あるごとに、この国は米国の属国なのではないかと考えさせられたことがあった。


それが米国の無理強いというのではなく、密約も含め法的な形で雁字搦(ガンジガラ)めに規定された、法的には当然の権利として米国は振る舞っていたのだという事を知り、正直、ここまでやられているのかと愕然としたのである。


そして、講和条約>日米安保条約>日米地位協定という通常に考えられる法体系が、実はその逆で、講和条約<日米安保条約<日米地位協定という、驚くべき法支配が外交密約により緻密に構築されていることも知った。

この国に主権があるのか? この国は本当に独立しているのか? 

日米地位協定は、この国家の存立にかかわる問題である。これから主権確立に為すべきことは何か、真の独立に必要な決断は何か、真剣に考えねばならぬ時機に来ていると感じたのである。

北朝鮮の核武装。中国海軍の軍備拡張と尖閣諸島接続水域への日常的な進入。韓国の竹島実質支配。ロシアの北方4島実質支配など、わが国領土・領海を侵犯する脅威は急速に高まり、実力行使もその過激さを増してきている。

国際情勢は緊迫度を急速に高めてきている。

その中で、わが国は日米同盟という絆にすがり、米国の核の下にいるというこの一点に依存し、国家の安全保障を担保していると思っている。

しかし、前泊氏は云う。「米国はいわば一夫多妻である。日本というオメデタイ妻は、米国は自分だけを愛してくれていると信じている。」

しかし、米国は軍事同盟関係でも韓国(米韓相互防衛条約) 、イギリス・フランス・カナダ・オランダなど北大西洋条約機構(NATO)、フィリピン(米比相互防衛条約)、オーストラリア・ニュージーランド(太平洋安全保障条約)、ラテンアメリカ諸国(米州共同防衛条約)と多くの国と締結している。

さらに、イスラエル・エジプト・サウジアラビア・パキスタン・イエメン・グルジア・タイ・マレーシアなどにも実質的な軍事援助を継続している。

そうした状況下、当然の如く、米国の紛争地域に対するコミットは半端ではなく、広範囲にわたっている。


今後、日本の為に戦闘を想定した実践的軍事展開の事態が発生した場合、本当にどこまで米国はこのone of themの妻のために、自国の若者の血を流してくれるのか。

こう問いかけられた時、この国の安全保障をどう考えるのか。日米安保同盟の問題、自衛隊の問題、そして、その延長線上に憲法改正の問題が当然のように浮かび上がって来る。

完全なる主権回復61年目の記念式典。沖縄復帰41年目。61年前に完全に日本の主権が回復していたというのであれば、沖縄は日本ではなかったというのか。

こうしたこと一つ取っても、この国の独立とは一体、本物なのか、考えさせられる問題は多い。

前泊博盛編者の「日米地位協定入門」は、そうした国家の主権とは何か、独立とは何かを深く考えさせられる素晴らしい本である。

非常に易しく、分かりやすく書かれているので、ぜひ、皆さんにも、ご一読いただければと思う。