出生率1.26で百年前に逆戻り?

20日、国立社会保障・人口問題研究所は2055年にはわが国の合計特殊出生率は1.26、推計人口は8,993万人になると発表した。

 

合計特殊出生率という用語は2004年の年金国会の際に、広く人口に膾炙(かいしゃ)した。出生率が1.322002年実績)から50年後の1.39に回復することを前提に年金財政を試算し、年金改革法は議論され、そして採択された。その直後に03年実績が1.29と公表されたことで、法案の大前提となる出生率の推定値に早々と疑問符が打たれ「法案の白紙撤回」など大騒ぎになったことはまだわれわれの記憶に新しい。

 

今回の推定値は5年ぶりに更新されたものだが、05年実績の1.260から06年は一旦1.29へ上昇するが、下落傾向に歯止めはかからず2013年に1.21と底を打つ。その後上昇に転じるもののその歩みは遅々として進まず、ちょうど50年後の2055年は1.264と今とほとんど横ばいの数字に止まる。

 

合計特殊出生率は年金財政を語るときにその数字抜きに議論を交わすことはできぬが、それ以上にわれわれが深刻に考えねばならぬのが、人口の絶対数の減少である。50年後の2055年の推定人口8,993万人は奇妙にも今からちょうど50年前の1955年の人口9,008万人とほぼ同規模となっていることに気づく。

 

戦後初めての減少を示した05年の人口は1億2,776万人である。そのことは、昨年末、少子化の影響として大きく報道された。そして今回の発表によりその傾向は加速化することはあれ改善することはなく、この国は人口減少という坂道を転がり落ち、50年後には現在のちょうど50年前と同規模すなわち今の7割の人口規模へと縮小する。

 

いまから50年前と言えば「もはや戦後ではない」と経済白書で高らかに戦後復興期からの脱却を宣言し、高度成長へと舵取りを変えていった転換点であった。三種の神器といわれた白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫がまだ一般家庭では高嶺の花であった時代である。もちろん自家用車などは夢のまた夢、高速道路などは日本中に影も形もない時代であった。

 

この国は2005年を分水嶺とした百年間で人口が増えて、減ってチャラということになる。この意味をどう捉え、このことがどうわが国の将来に影響を及ぼすのか腰を落ち着けてよく考えて見なければならない。大幅な人口減少は年金財政だけが悪化するのではなく、肥大化したこの国の図体(ずうたい)を支える力が弱まるということを知らねばならぬ。具体的にそうした問題を個々に想定し、的確に対応策を講じていかねばこの国は成人病から死への道を確実に歩んでいくことになる。

 

ちなみに平成16年の日本の道路総延長は1,247,880劼砲よぶ。これは千人当たり9.8劼瞭始をこの国は整備していることをあらわす。50年後の推定人口でこれ以上道路延長がないとして試算すると13.9劼箸覆襦このことを社会資本整備が充実したと評価すべきではない。道路を常に通行可能にしておくには維持補修は定期的に行わねばならぬ。その道路管理費は元道路公団で年間3800億円、首都高で840億円もの金額を要し、全国一般道の補修工事費になればコストは膨大である。人口減による50年後の一人当たりの管理コストは1.4倍になってかぶさってくる計算になる。

「百年前に逆戻り」であればまだ救いはあるが、その百年間で身についた無駄な脂肪が人口減少という動脈硬化で心臓に大きな負担をかけたままでは、この国の未来はないと思わねばならない。

 

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