「NHKの使命」

 

 NHKは、職員の度重なる不祥事を契機として、昨年9月の「NHK新生プラン」の公表、今年1月の平成18年からの3事業年度にわたる「経営計画」を発表し、真に再建の道を歩み出そうとしている。

 

しかし受信料不払い行為は相変わらず続いている。NHK経営委員会は執行部に対し「企業体質等も含めた原因の分析(不祥事の)真因を真摯にとらえた実効性のある対策を講じることが最も重要である。そして、対策を全職員にしっかりと浸透させる必要がある。」と申し入れているが、執行部の動きは遅々としており、具体策に目を引かれるものはない。

 

先の「新生プラン」において「NHKは今、「すべては視聴者のみなさんのために」という公共放送の原点に立ち返り、新たに出発をします。」と宣言し、「経営計画」の「経営の基本方針」なかにおいても「NHKだからできる放送に全力を注ぎます」と、宣言した。

 

「公共放送の原点」とは何か?

「NHKだからこそできる放送」とは何か?

 

NHKは言葉面はまさに正眼の構えである。しかし、本気で彼らは自らの使命、原点について呻吟し、熟考を重ねているとはとても言いがたい。その具体例を、NHKニュースの報道内容、あり方に見ることができる。

現在、国会は会期中である。にも拘わらず、民放、大手新聞社とも、その関心は小泉後継問題に大きく移っている。NHKも然りである。そして、この両日はワールドカップの日本代表選考である。

 

視聴者も競馬予想よろしく、9月の自民党総裁選で誰が小泉総裁の後釜に坐るのか、また、何故、ワールドカップでフォワードの久保が落選したのか興味津々である。勿論、わたしもその例外ではない。一方、いま国会では、国民にとって非常に大きな影響をおよぼす法案が、衆議院の各委員会で審議されている真っ最中である。「共謀罪の創設」「教育基本法の改正」「国民投票法の立法」等、将来のわれわれの生活、思想信条のあり方に大きく関わってくる重要な法律が審議されているのである。

そして視聴率には決して結びつくことのない、その審議内容・経過をNHKは時々刻々と報道してはくれない。

 

NHKは視聴率と無縁の世界で、国民に知らしむべき事柄を適時・正確に、そして丁寧に伝えることこそその使命ではないのか。わたしは、NHKは、まず国民に何を優先的に知らせるのか、その優先順位のあり方の議論のなかにこそ、「NHKの原点とは何か?」「NHKだからこそできる放送とは何か?」の答えがあるのだと考える。うわ滑りする字面などではなく、日常の番組編成の姿勢こそNHKの原点を真剣に彼らが模索しているか否かのリトマス試験紙であると考える。ことに最近のNHKニュースの報道の視聴者に媚びるような内容、報道項目の選択、放映の優先順位を見るにつけ、まだNHKはことの重大性を認識していない、己の使命を体躯で理解していないとの感を深くせざるを得ないのである。