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２０１４年８月上旬、霧ヶ峰高原・八島ヶ原湿原の植物図鑑--- その２
２０１４年８月上旬、霧ヶ峰高原・八島ヶ原湿原の植物図鑑 --- その３
２０１４年８月上旬、霧ヶ峰高原・八島ヶ原湿原の植物図鑑 --- その４
２０１４年８月上旬、霧ヶ峰高原・八島ヶ原湿原の植物・昆虫図鑑 --- その５
８月２日、霧ヶ峰の天気は晴れのち曇り、雲の流れは速いが雲量の多い一日であった。
午前中も早めに少しでも空気の澄んだうちにとビーナスラインを疾駆する。
窓外には早起きの甲斐あって大パノラマが展開する。
夏霞がうっすらとかかる信州の空に八ヶ岳の稜線が見える。
その長い山裾の右手に目を転じると、その奥に北岳を頂とした南アルプスの悠揚たる山並みが見える。
そして霧ヶ峰の山腹を縫って走るビーナスラインの急カーブを曲がると視界が一挙に開けた。雲は多いが、円みを帯びた丘陵の先に今度は薄絹越しに見えるシルエットのように中央アルプスの山脈が浮かんで見えた。
霧ヶ峰付近を遠望する高原の景色はわれわれ夫婦が安らぎを覚える大好きな景色である。
霧ヶ峰自然保護センターを右手に曲がると八島ヶ原湿原はもうすぐ。
そして八島湿原の駐車場へと到着。まずは八島ビジターセンターへ向かう。
そこでこの日、８月上旬に咲いている花々の“週間情報（１００円）”を求める。
クリックして拡大してください
これは隔週で編集改定がなされているようだが、湿原に咲く花の名前をこの“花情報”を手にああでもないこうでもないと言い合いながら歩くのも一興である。
この小さなトンネルが八島湿原への入口。拡大するとネットが見える。
八島湿原へは小さなトンネルを通って入ってゆく。その入口には鹿害を防ぐためのネットが下ろされている。
霧ヶ峰一帯で鹿に花の芽を食い荒らされる被害が拡大し、この八島湿原にも遊歩道の途中に鹿の侵入を防ぐ柵が設置されている。
遊歩道に無粋な柵が・・・
植物図鑑にゆく前に、ここで八島湿原の概要を簡単に述べておく。
ここから八島湿原へと入ってゆきます
八島ヶ原湿原植物群落は標高１６３２ｍに位置する面積は３４・７haの高層湿原である。日本の高層湿原の南限にあたり、昭和１４年に国の天然記念物に指定され、昭和３５年には国定公園内の特別保護地区になっている。
入口脇に説明板
高層湿原は養分が少なく貧石灰、貧酸素で、水質は酸性、低温など制約の多い環境のためカヤソリグサ科などの矮小な植物が侵入繁茂して生成される。
八島ヶ原湿原一望、手前が八島ヶ池
即ち、これらの水生植物が枯れても、高緯度で標高が高く寒冷な気候のため腐敗・分解が進みにくくそのまま堆積し泥炭化してゆく。
八島ヶ池
そして新しい苗がその上に生長していく結果、湿原は付近の水面より高く盛り上がってゆく。
鎌ヶ池
八島湿原では最高所は水面より７ｍも高く、泥炭層の厚さは８・５ｍにおよんでいる。
鬼ヶ泉水
この現在の姿をわれわれがいま目にするのに１万２千年という気の遠くなるような時間を必要としたのだという事実に、わたしは人類の知識というものの限界、人智のおよぶ世界がいかに矮小かということを心底思い知らされた。
悠久の自然が事も無げに成し遂げた驚異の仕業なのである。
そんな八島湿原の夏の一日、高原に咲く可憐な花を求めてぐるりと一周したのである。
板敷の遊歩道を杖をつきつつ写真撮影も貪欲にこなす道行き。時折の緑陰に癒されながらの９０分の所要時間というコース。それをわたしはなんと５時間を超える時間を費やして踏破？したのである。
壮挙と云ってよい。左半身に強い痺れと麻痺を残す身体。
日頃の運動不足、リハビリ不足を一挙に挽回すべく板敷の遊歩道を、足を踏み外さぬよう慎重にゆっくりと歩いた汗と日焼けという勲章をともなう涙ぐましい快挙であった。盛夏の八島湿原・・・
その湿原を歩き通したリハビリ・ハイキングの成果が次稿から掲載する八島湿原の花々、湿原の生き物である。
八島湿原、こうやって見ると８月の上旬が高原植物の華やかな舞踏会の季節なのだとあらためて思ったものである。
