孫がやって来て慌ただしかったお盆。娘や息子夫婦も帰っていった翌日、蓼科の山荘へ向かった。最近はグループホームへ入ってしまった娘もいっしょに来ることも少なくなり、山荘へは家内と二人で行くことがとみに多くなった。
雨模様の日々が多いとの天気予報のなか向かった蓼科であったが、移動した日の17日に弱い雨が降っていたほかは幸いにも曇り日和の穏やかな天気がつづいた。 その曇り晴れのお天気の一日、メルヘン街道(国道299号)をひたすら駆け上がり、麦草峠を越えてから佐久方面へ下ったところに八千穂高原自然園はある。 その自然園へ辿りつく前、麦草峠を越えてから5kmほど下った標高1706mのところに“レストハウスふるさと”という食事処がある。 食事の必要がなくともぜひここで休憩をとって欲しい。 というのも、そこからの絶景がお勧めなのである。佐久の町を見下ろし、その向こうに浅間山が見える。この日は山頂に雲がかかり残念ではあったが、雲のない日であれば超絶景スポットであることは請け合いである。 この写真でここで味わえる解放感は皆さんに届くのではないだろうか。 その絶景を楽しんで10分弱でいよいよ八千穂高原自然園に到着する。 お盆も過ぎたということだろうか、園内に人影は少ない。一周するのに30分コース(白の径)、50分コース(青の径)、80分コース(緑の径)と三コースあったが、われわれは緑の径をゆき、途中で青の径へ入って2時間弱をかけてのゆったりとした散策であった。 園内には滝や湖もあり、散策路の路傍にはもう盛りは過ぎた高原の夏の花や秋の気配を届ける花など目を楽しませてくれる見どころがたくさんある。 落差は大したことがないのに、その瀑布の音はまさに森閑とした森の中に千丈の落差を感じさせるものである。 立ち止まっては一枚。 また、一枚。 そして、また、一枚・・・ と、なかなか散策の径の捗(はか)が行かない。もちろん、時間はいくらでもあるのだから・・・急ぐ必要はさらさらない。 この滝は小ぶりであるが、趣のある好みの滝である。ほんとに小さな滝壺がまた可愛らしい。 途中で蜻蛉が蕾に停まっているのを見つけた。パチリと一枚。 そして、緑の径の奥にトリカブトの花が咲いていた。 初めて見たが、思ったほどの毒々しさはなく、この根っこに猛毒が宿っているとはなかなか信じがたい。 園内の渓流をせき止めてできた湖だということで、流出口には堤防状のコンクリートが流れを塞ぐように立ちはだかっているのだが、この人工的な景観がなぜだかストンと胸に落ちる不思議な景観であった。 そのヤナギランの脇に黄色も鮮やかなアキノキリンソウが咲いていた。 最近の鹿害はますます大きくなり、信州の高原のいたるところでこうした無粋な柵を見受けるが、これも美しくも可憐な花を守ってゆくには当然、必要と思わねばならぬ。 カメラを向けてもキョトンとした可愛らしい瞳でじっと見つめられると、そうした鹿の害も大変だと感じつつも、つい、かわいいと思ってしまうのもこれまた正直な気持ちではある。 また、そのすぐ横にある八千穂レイクは“恋人の聖地”に認定されたのだとか。 白樺群生地と八千穂レイクを二人でゆっくり語り合いながら散策すれば、なるほど、恋も成就するだろうなと感じさせる↗↗なデートスポットでもあった。
まず、飛龍の滝にぶつかる。
次にもみじの滝へ向かうが、道端の可憐な花が訪う人々を迎えてくれる。
やがて、もみじの滝に到着。
そして、もみじ橋と名付けられた木橋はなかなか乙なものであった。
そして、途中から青の径へ入り、遊亀湖の畔に出た。
そこを過ぎると、もう管理棟へまっしぐら。往きに通り過した鹿害防護柵をめぐらした園内を通過する。そこにはようやく花をつけ始めたというヤナギランが見えた。
そう云えば、この日、別荘地内で小鹿に遭遇した。
八千穂高原自然園へ出たあと、少し先にある白樺の群生地と八千穂レイクを訪ねた。白樺の群生地は予想以上の景観で、今度は青空がぜいたくに広がった日にゆっくり来ようと二人で語り合ったほどに、なかなか雰囲気のよい場所であった。
そんないろいろなことを心に映しながら、2015年の蓼科、晩夏の一日は静かに過ぎていった。そして、こうした時間がゆったりと流れゆく人生のステージにわれわれ二人はもう立っているのだとしみじみと感じさせられた一日でもあった。