伊豆半島二日目の宿は知人の別荘から坂を下った海岸線に広がる伊豆高原のスパ・リゾート「赤沢温泉郷」のなかにある赤沢温泉ホテルである。
といったホテル紹介はこれくらいにして、当方はというとその日は知人宅で話に花が咲き、また、広い庭に植わる果樹や野菜をもぎとったりと時間はあっという間に過ぎた。
ということで、われわれはホテルは夕食無しの朝食付き一泊の予約をとっていた。
これまでの旅で食事の写真を撮影していないのは初めての経験であったと思う。
それほどにおしゃべりに夢中になっていたのだと思う・・・
このコロナの三年間、LINEの映像越しに何度か会話していたのだが、人という生き物は、どうも社会や他人との関わりのなかで異質で多様な事象・意識とぶつかりあうことで脳内細胞が活性化し、東京のミドリの狸ではないが自分の思考・意識を“アウフヘーベン”させることで知力をステップアップしていく生物なのだと、改めてそう感じたところである。
まぁ、そんな小難しいことは脇に置いて、互いに七〇歳という大きな節目を思い思いに超えて、それぞれ人生について深く思う日々が増えた仲間と語り合える時間はとても貴重であり、殊の外、愉しかったのである。
そしてそうした時間はあっという間に過ぎ去り、この伊豆の夜は更けていった。
その翌朝、好天に恵まれ、ホテルの部屋からは伊豆七島がよく見えた。