浜松城をあとにして、次は２０１７年のＮＨＫ大河ドラマ「おんな城主直虎」で一躍有名となった井伊家の菩提寺、龍潭寺(りょうたんじ)へと向かった。
当寺は天平5年（733）、僧行基によって開創されたと伝わる古刹であり、浜名湖の北端、奥浜名湖のその北に位置している。
庫裡から本堂の広い廊下山門を抜け、庫裡の拝観受付を通り広い本堂へと入ってゆく。
細長い縁側に一段高くなった畳敷きが設えられている。そこに腰をおろしてゆったりと庭園が鑑賞できる。
わたしはしばしコロナ騒動や世の喧騒を忘れて、小堀遠州が命を吹き込んだスピリチュアルな世界に身をまかせた。そして、さすが、小堀遠州！！と、通ぶってみた。
四百数十年という永い時間を摩り込んだその苔むした五輪塔は、歴代井伊家当主の墓石のなかに肩を並べ、何を語らんとし、そんなにひっそりと立ちつくしているのだろうか。
出生した井戸とはこれいかに？ 歴史上の人物の出生譚として、例えば弘法大師がここの水を産湯として使ったとの伝承を残す井戸など各地に多くあるが、この「井戸から生まれた」のだと伝えるものは初めてであるし、意味がよく理解できぬままに現地へ向かった。
案内板の通りにたどると、広々とした田んぼのなかに井戸らしき一画が見つかった。
説明板によると共保(西暦１０１０年生誕)公はこの井戸の傍らで、当地の国司であった藤原氏に拾われ、そのやんごとない様子を認められ、養子とされたとの伝誦を残すとのこと。
井戸から出てきたわけでなく、この井戸の脇に捨て子として置かれていたとのことらしい。ようやく、納得である。
そんな井戸が代々の井伊家当主によって千年もの間、大切に守られてきて、整然と整えられ今尚このように残されているというのは驚きであった。
そして、いよいよコキコキ・ドライブ旅も静岡県を離れて、今夜の宿、岐阜県の下呂温泉へと向かった。
