出早雄小萩(イズハヤオコハギ)神社という聴きなれぬ神社である。ここの社叢にカタクリや二輪草が群生しているというので、訪ねてみた。
鳥居をくぐり一本道の簡素な参道の脇に、そう、何気にカタクリの花が咲いている。
それもその傍らに可憐な白い花を咲かせる二輪草が群生しているというとても心豊かな景色である。 木漏れ日の中、愛情豊かに大切に育まれてきた社叢であるからこその光景であると、感じた。 そして、神社の本堂裏手には渓流をそなえる広々とした“出早公園”がある。 秋には紅葉が見事であるという。いまは、モミジの小さくてかわいらしい花が満開を迎えようとしていた。 カタクリというこの紫色の花・・・、この時代、こうしたほの暗い草むらに、こうしてまだひっそりと、でもみんなで力を合わせて群れている。 いいよな!! この空気感・・・、そう思ったのである。 出早雄小萩神社、聴いたことはなかったが、諏訪大社の祭神、建御名方神の御子神の第ニ男の出早雄命(イズハヤオノミコト)と、第八男、興波岐命(オキハギノミコト)を御祭神とする、「中古勧請の社には無之、神代鎮座也」たる由緒ある神社である。 拝殿の真正面、鳥居の遠くにいまだ白き雪をまとう神々しい北岳が見える。鳥居を額縁とした一幅の崇高な絵画・・・ 気ぜわしい日常から解き放たれたひと時。“時”という気まぐれな抽象がポツリ、ポツリと空を覆う木々から滴り落ちるような・・・、そんな幻想的時空がこの社叢に息づいている、そう確かに感じたのである。 そんな由緒古き社の社叢に咲き乱れる可憐なカタクリと二輪草・・・、ぜひ、ひっそりと息をひそめて訪れてみられてはいかがでしょうか。