世田谷区深沢3-5-14

03-3704-0702


お店のプレートがないので・・・
お店にプレートがないので・・・

家内の友人のお宅へお呼ばれし、近所の“5WATTS(ファイブワット)”という変わった名前のお店でディナーをごちそうになった。

5WATTS
5wattsの外観

奥様が参加するエコ活動の一種とでもいってよいのだろう “恵比寿ビエンナーレ”(ゴミから、アートへ)というグループのお仲間のおひとりがやっておられるお店だという。


深沢の閑静な住宅街に位置する小ぢんまりしたお店である。フレンチレストランと呼ぶような肩肘張ったお店ではなく、雰囲気はいわゆる“ビストロ”と表現するのがぴったりの普段着感覚のお店である。

“5WATTS(ファイブワット)”とはちょっと変わった名前である。5ワットといえば、いまの若い人はご存じないが、蛍光灯などの脇についている二燭光(にしょくこう)〔現代ではナツメ球(常夜灯)というのだそうだ〕の明るさ、ワット数である。

二燭光の灯り
二燭光(にしょくこう):5ワットです

ナツメ球という製品名は性能・仕様ではなくその形状のみに着眼したネーミングで、物の質より形や見栄えに価値を認める現代の表層的風潮を象徴しているようで、どうもしっくりこない、というより、気にくわぬ。


なにせ、由来を蝋燭一本の光度とする明るさの単位である“candela(カンデラ)” は、国際度量衡委員会で採択導入されている光度の国際標準単位なのだから。一燭の光度は1.0067カンデラであり、1燭≒1カンデラ≒一本の蝋燭ということになる。最後の“≒一本の蝋燭”の部分はわたしのかなりアバウトな決めつけではあるが・・・。


そういうわけで、わたしは蝋燭2本分の明るさを字義通り表わす“二燭光(にしょくこう)”という呼び名の方がその仕様が分かりやすく実に科学的なネーミングであると考える次第なのである。それは単なる年寄りの僻みというものなのだろうか、う〜ん・・・。


待て待て、そうだ、そんな光度単位を力説するより本題へ戻らなければならぬ・・・


“ニ燭光”、もとい、その“5WATTS”だが、さすがに店内は蝋燭二本の光度よりも明るくはあるが、厨房の灯りがお客のテーブルへ照り映え、ほんのりと辺りを照らし出すといったイイ感じの温もりある空間を作り出している。

5ワットの小世界
小ぢんまりした温もりのある店内

そこで当夜の料理であるが、いわゆる“食いしん坊”四名の食?望が一致し、量は少な目で品数は多くというシェフ泣かせの、いや、シェフの腕が存分に振るえるオーダーとなった。

DSCF1908
当夜のお薦めメニューです

下の写真を見ると、年甲斐もなくまぁチョコチョコとこまめに頼んだものだと大いに頬を赤らめる次第である。

野菜のマリネ
野菜のマリネ
広島湾生カキ・大黒神
広島湾生カキ・大黒神
ヤリイカのバジル和え
ヤリイカのバジル和え、わたしが食べたいと言ったのでした・・・

シェフの本木さんが腕をふるってくれた料理を青木さんの軽妙洒脱なサーブでいただく。 

当店ご自慢の玉ねぎのムース
5wattsご自慢の玉ねぎのムース
鯛のポアレ
鯛のポアレ
フォアグラのポアレ
フォアグラのポアレ

おいしい料理に心許すご夫婦との楽しい語らいの時間はあっという間に過ぎ去る。

タケノコのリゾット
タケノコのリゾット
おいしいグラスワイン
おいしいグラスワイン・・・、ちょっと呑んじゃいましたねぇ・・・
デザート
デザート

そしてすっかり暗くなった外へ出ると、“5WATTS”の橙色の灯りが雨で冷えた舗道をそっと温めるかのように洩れ出ていたのに気づいた。

温もりのお店です
外に洩れ出す5wattsの温もり

青木さんと本木さんお二人が外までわざわざお見送りに出てくれたが、お料理への感謝や来店へのお礼の言葉などが飛び交うなか賑々しい退場となった。

青木さん(左)と本木さん
青木さん(左)と本木さん

そこでのお二人の心安らぐ言葉を聴いているうちに、“5WATTS”とはお二人が二本の蝋燭となってお客様に温もりある灯りを届けてくれる心温まる場所のことなのだと分かったのである。


遠い幼児の頃、夜中に目を覚ました時、真っ暗な闇のなかにボ〜ッと光るニ燭光を認め、傍らに添い寝する母の姿に安心し、またヒーローとなって冒険活劇の世界で活躍する夢の世界へと入っていった・・・、そう、あの頃のようなどこか甘酸っぱくも、あったかな蒲団のなかの空間のような・・・