レッドソックスの落札額60億円が「草野球文化」を変える
15日、西武ライオンズの松坂大輔投手(26)はポスティングシステム(入札制度)で、ボストン・レッドソックスにより約60億円という目の玉が飛び出るような金額で落札された。松坂投手の年俸交渉などはこれからとなるが、30日間の独占交渉により条件がまとまればこの60億円は現在の所属球団である西武ライオンズの懐に入ることになる。
英国BBCも「Boston think big over Matsuzaka 」とのヘッドラインでこのニュースを伝えた。「ボストンは松坂に途方もない望みをかけた」、松坂との交渉権取得だけに60億円という記録的金額を西武ライオンズに支払うことに戸惑いを隠していない。北米チームのなかでレッドソックスがアジアの優秀な選手獲得において遅れをとっていたことを理由としてあげ、この異様な金額を何とか自分自身に納得させるかのように見える。まさに金額の大きさに対する戸惑いの気持ちが正直に記事の行間ににじみ出ている。
ポスティングシステムというと横文字効果なのか聞こえはよいが、「松坂投手が落札された」と聞くと、どうも人身売買をイメージさせ、それを公認しているようで何とも落ち着かない。オリンピックの商業化が言われ出して久しいが、いまやスポーツは莫大な金を成らせる巨木に成長し、りっぱなショービジネスとなった。今回はそのスター選手の移籍である。巨額な資金が動くのもビジネスであると割り切れば納得はいくのだろうが、日本のスポーツがアメリカ拝金主義にどんどん毒されていっているようで、正直なところ心穏やかではない。少年の頃に原っぱで誰もが馴れ親しんだ「野球」、いわば「草野球文化」が、われわれの日常生活とはかけはなれた別物の遠い存在になっていく、そんな寂寥感を感じてしまうのである。日本の選手が堂々と世界に通用するのだという晴れがましい気持ちもないわけではない。しかし何か違うのではないか、このままでは日本のスポーツ、スポーツの持つ野趣や素朴さといったものがアメリカという国の拝金主義的価値観に支配され、将来の道筋も規定されてしまうのではないか。松坂のMLB移籍問題で、かつての野球少年はついそんな取り越し苦労をしてしまった。
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