23日午後7時10分から東京体育館において、女子バレーのロンドン五輪世界最終予選の日本対韓国戦が行なわれた。
日本女子チームはこれまでペルー・チャイニーズタイペイ・タイを下し、3連勝と好調な滑り出しである。テレビ観戦で盛り上がっていたわが家も、それじゃ、韓国戦を東京体育館で応援するかと急遽思い立ち、当日の朝、チケット販売のローソンでアリーナ席を二枚ゲットした。結構、簡単にチケットが入手できたのには、正直、驚いた。
そして「盛り上がっているのは結構、ウチだけだったりして」という家内の言葉に、すこし不安も感じ、納得もしながらも、千駄ヶ谷へと向かった。
当日の組合せは第一試合ロシア対ペルー、第二試合タイ対チャイニーズタイペイ、第三試合セルビア対キューバ、そして第四試合がお目当ての日本対韓国であったが、われわれは第二試合の後半からの観戦となった。
館内へ足を踏み入れると、予想通り客席はパラパラの状態であったが、日韓戦が始まれば相応の盛り上がりは見せてくれるに違いないと、それまでは実にゆったりとしたスポーツ観戦であった。
シートは正審判をちょうど真後ろから見る素晴らしい位置であったが、贅沢を言えば逆にネット際のプレーが見難い角度でもあった。
第二試合も第三試合もワンサイドのゲームでそれぞれタイが3-0、セルビアが3-0と簡単に試合を制した。
そして、日韓戦までの待ち時間にコーヒーを呑みながら、日本チームがこれまで1セットも失っていないこともあり、「日本もこの調子でいくといいね」、「でも、あんまりすんなり勝ってしまうのも、折角、大枚叩いてアリーナ席で観戦しているのだから、少しは接戦を見たいね」と、勝負の怖さをまったく知らぬわれわれは能天気にもその時、語り合っていたのである。
日韓戦前には華やかなアトラクションも挟まれ、スポーツ観戦というよりまさに“The Show”を観ているようで、すでに気持ちは戦勝気分であった。
しかし、一旦、試合がスタートするとその浮かれ切った気分は木っ端微塵に打ち砕かれ、まるで冷水が浴びせられたようで、あっという間に気持ちは萎縮。
第1セットの立ち上がりから、動きがいつもの日本チームらしくない。
サーブミスやレシーブミスといった凡ミスの連続で、「いったい、どうなってんの」と、いつしか満員となった観客席のあちこちからボヤキや悲鳴が挙がっていた。
結局、第一セットはいいところなく、18対25で落とすこととなった。
第2セットも一進一退の試合展開ではあったが、何とか25対22でセットをもぎ取ったものの、韓国のエース・金軟景(キム・ヨンギョン)の高い打点からのアタックを阻止することができず、前日までのブロックポイントや粘りのレシーブもとんと影を潜め、韓国チームのアタックの強さ、どんな球でも拾いまくる粘りだけが光るセットであった。
続く第3セットこそはとわれわれも熱を入れての応援となったが、結局いいところなく、17対25で実質、韓国ワンサイドのゲームであっさりとセットを失った。
そしてこれを失えば敗戦となる第4セットと言えば、結果は13対25とまったくいいところなし。あっという間の出来事であった。
正直、試合中、のべつ悲鳴だけ挙げ続けたというのが実態で、それはこの日韓戦の試合全体の観戦記そのものの総括であったともいえる。
2004年のアテネオリンピックで負けて以来、負けなしの22連勝中の韓国戦でのこの手痛い一敗。
日本がロンドン五輪へのキップを手に入れるには、同じアジアの韓国の順位如何にもよるが、ロシア、セルビアなど残る強豪との三試合にもう一敗も出来ないという切所へ一挙に追い込まれることになった。
われわれの試合前の「少し接戦を期待」な〜んて、思い上がりもここまで言うかというほどの気持の驕りであった。そのことをいま厳しく戒める必要がある。
“勝って兜の緒を締めよ”とはよく耳にする格言だが、ここは気を取り直して、もう一度、“負けて兜の緒を締めよ”で、全日本女子チームの奮起を促したい。
日本の女子バレーの実力は、数年前までは放映TV局の視聴率アップを狙うための大甘解説で人気倒れと言ってよいもので、世界の実力にはほど遠いところにあったと思う。
しかし、ここ2、3年は明らかに世界の上位チームと何とか戦えるレベルまで、その実力が向上しているのも事実である。
だからこそ、われわれ老夫婦もこうして東京体育館までわざわざ足を運び、“火の鳥NIPPON”の戦士たちに熱い声援を送ったのだ。
韓国チームは日本バレーの分析を緻密にやっていた。ことごとくと言ってよいほどにこちらのアタックやクイック攻撃、バックアタックを読み切り、それを阻止した。為す術がないとはこのことである。
そのうえ韓国の勝負への強いこだわりが、打たれても打たれてもしつこく、泥臭く、玉を拾い、追いかけ回すひたむきなプレーに見て取れた。観戦していて最後の方は、韓国チームの勝負に対するそのひたむきさに、逆に胸が熱くなるといった場面も度々あった。
韓国チームの見事な勝利に対しては心からエールを送りたいと思う。
そして最後に、“火の鳥NIPPON”なんてそんな恰好つけたネーミングなんかつける必要はないと思っているが、木村沙織さんをはじめとする若い選手たちに、“負けて兜の緒を締め”直して、もう一度ネジを巻き戻しロンドンオリンピックへのキップはもちろん、目標に掲げる金メダル奪取という夢を是非かなえて欲しいと願っている。-
それだけの血のにじむような努力をこの若い人たちはやって来ているのだから。この日韓戦はドタバタの試合ではあったが、わたしも含め、勝負というものの本当の怖さを改めて知らされたという意味において、大変得難い経験をしたのだと思ったところでもある。
さぁ、勝負はこれからだ。頑張れ、ニッポン!!
これからの活躍をわれわれ夫婦も心から応援している。