ソチ五輪のスノーボード・ハーフパイプ男子は11日(日本時間12日未明)の決勝で、15歳と18歳の若人が銀メダルと銅メダルを獲得した。


一方、ほぼ同時刻にルスキエ・ゴルキ・ジャンピング・センターで行われた女子スキージャンプで、17歳の高梨沙羅選手が4位に終わった。


晩酌で熟睡できたのか、午前3時頃に目が覚めてしまった。枕元のラジオをつけると女子スキージャンプを放送中だった。“あぁ、沙羅ちゃんが飛ぶんだ”と、パジャマの上からセーターを着込み、靴下をはき、階下の居間でテレビをつけた。


NHK総合でスキージャンプ、BS1でハープパイプを放映していた。BSと地上波放送をボタン操作で目まぐるしく切り替えながら、青春のエネルギーを発散させる様子を見逃すまいと目を凝らした。


まず、ハーフパイプで息を詰めるようにして平岡卓と平野歩夢の二回目の試技を観た。最後の絶対王者のショーン・ホワイト(米)の競技を残した時点で、平野歩夢選手が二位、平岡卓選手が三位。


そしてショーン・ホワイト(米)の最終滑走がスタート。

ちょっとだけ胸は痛んだが、正直言って、失敗してくれぇ〜・・・と強く祈ってしまった・・・

いま一つ技のキレは悪い・・・ようにハーフパイプ即製評論家は見切った。


その結果、ショーン・ホワイトの点数は90.25

三位の平岡卓は92.25   あぁ〜凌ぎ切ったぁ〜・・・

ショーン・ホワイトの急追を退け、銀と銅のメダルをとった。


その頃、ルスキエ・ゴルキ・ジャンピング・センターでは、一回目第三位の記録に終わった高梨選手が二回目の試技に挑もうとしていた。


五輪前のW杯で圧倒的強さを見せていた高梨沙羅選手。初の五輪競技ということで注目を一段と浴びたなかでの本番。


一回目は上位選手が向かい風のなか有利にジャンプしたなか、最終試技の高梨選手の時のみ、不利な追い風という不運も重なったなかで、100mのジャンプ。

そして、遠く日本の地から還暦を過ぎたひとりの男が念力を送るなか、二回目の試技がはじまる。


サッツ(踏みきり)はうまくいった、空中姿勢もよし、あとは飛距離・・・・・・


着地!うーん、テレマークは入ったのかなぁ・・・、ちょっと不安・・・


飛距離は98.5m。あれっ?100mいってないんだ・・・・・・


点数を待つ。残り二人を残すこの時点で・・・二位。


そして一つずつ順位を落とし、残念ながらメダルに届かず、無念の4位。

時刻は午前4時(日本時間)。テレビを消し、寝に上がる。


その日のお昼。メダルを逸した高梨選手が涙を流す写真を見た。


胸がキュ〜ッと締め付けられた。そして、“そんな顔しないでいいんだよ、沙羅ちゃん”と、心の中でつぶやいた。


メダルに輝いた若人・・・・・・

確実視されたメダルを逃した若人・・・・・・


それもこれもひっくるめて、ぜ〜んぶ、青春。

それもこれもあるのが、人生。上がったり下がったりが、そう人生ってもんなんだよな・・・と、しみじみ思う。


でも、ティーン・エージャーが躍動したこの日。

栄光の歓喜にキラキラと輝く瞳・・・・・・

悔し涙にうるむ瞳・・・・・・


両者ともかぎりなくいとおしい・・・美しい・・・

そして、なぜか甘酸っぱくて、切ない・・・


そんな瞳のみずみずしい表情をいつの頃からかこの自分は失っていたことに気づいた。


青春・・・・・・

それは可能性を何度でも試し、チャレンジできる“時間の泉”を、両腕いっぱいに抱え込んだ人生のスタート地点だったのだなと気づいた。


そして、しばらくして・・・還暦を過ぎたわたしに、青色の濃さが薄くはなったものの、“浅葱色の青という春”のスタート地点に臆することなく、恥じることなく立っていいんだよと、この若人たちに言われたような、背中を押されたような気がしてきた。


やはり、青春の真っただ中にいる人たちの持つエネルギーは凄い。

遠いロシアのソチの地からこの日本の片隅にいるひとりの人間に、こんな当たり前のようででも、大切な人生訓という手紙を届けてくれたのだから。


ありがとう、平野歩夢君、平岡卓君。

ありがとう、高梨沙羅さん。


ありがとう!! 日本のティーンエイジャーたち!