テレビ朝日はメディア主体として失格

 

(朝日新聞928日記事参照)

テレビ朝日(本社・東京)が架空の番組制作費を制作会社に支払っていたとして、東京国税局から05年3月期までの3年間で、約1億3000万円の所得隠しを指摘されたことが分かった。バラエティー担当のチーフプロデューサー(59)が番組関係者らとの飲食費を捻出(ねんしゅつ)するため、番組で使っていた制作会社に指示して架空請求させていたという。ほかに経理ミスもあり、申告漏れ総額は約1億5000万円。追徴税額は重加算税などを含めて約6000万円とみられる。指摘を受けテレビ朝日は28日午後、記者会見し、このプロデューサーを懲戒解雇、君和田正夫社長ら計12人を減給などとする処分を発表した。」と、朝日新聞で報道された。

 NHKプロデューサーや日経新聞広告局員に引き続き、メディア関係者の不祥事が絶えない。報道番組や新聞紙上で事件なり不祥事を起こした国民、法人に対し、舌鋒きつくその非を糾弾する評論家、コメンテーターそして、その不祥事の当事者を執拗に追い掛け回し、罵倒するように詰問する記者連中は、こうした身内の一連の事件になると、途端に聖人君子のように物分りのよい態度に一変する。

 なぜかおかしくないですか? 報道回数も極端に少ないと感じるし、意図的にメディア全体でその関連の報道をお行儀良く自粛しているように見えてならない。

 当たり前の話だが、権力や世の不正を厳しく糾弾する使命を持つものは、自らの不正には、それ以上の厳しさを以って対処すべきであろうし、そんなことわざわざ言わずとも聡明なメディアの方々は分かっているはずである。

 今回のテレビ朝日の59歳のプロデューサーが犯した「横領事件」は、りっぱな犯罪である。それも事件の諸々の状況からしてその犯行は一回だけではなく常習性があったと語っているようである。

 しかし、テレビ朝日は本人はすでにその金額を返還しているので、刑事告訴はしないとして懲戒解雇ですまそうとしている。こんな理屈ってあるのだろうか。金品を盗んだ。見つかったので返還した。だから犯罪ではない。だから刑事告訴はしませんとテレビ朝日は、しゃーしゃーとうそぶく。

 では、よく夕方の報道番組でしつこく取り扱われている「万引き」ドキュメントも、番組中で「返せばいいという問題じゃないだろう、奥さん!」と、ガードマンに語らせる場面が放映されている。その通りである。たとえ十円のものでもお金を支払わずに着服すれば、それは盗みであり、りっぱな犯罪である。そんなこと今更言うまでもないことだ。

この事件はガードマンにそう語らせているテレビ局の人間の犯罪容疑である。

 だが、テレビ朝日は、盗んでも見つかったら元へ返還すれば「犯罪ではない」と言う。逆に言えば、見つからねば「やり得」なんだよと、言っているに等しい。一般私企業、個人の横領事件や接待饗応事件に対しては猫の首を取ったように大騒ぎし、当事者に群がり、殊更にプライバシーを露出させるが、身内の事件には容疑者の人権に配慮する紳士的対応に終始する報道機関とは、一体、何者であろう。わたしの喉もとまで汚い言葉がこみあげてくるが、決して言葉にはすまい。口に出してしまえば、この国のりっぱなメディアのレベルと、この自分も同じになってしまうから・・・。

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