未曽有の危機が迫るなか、政治空白を許す能天気な国家
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の重病説が伝えられるなか、朝鮮日報が韓国政府の北朝鮮情報筋の話として「北朝鮮が今年に入って東倉里(トンチャンリ)試験場で長距離ミサイルのロケットエンジン燃焼試験を行っていることが、米国のKH―12偵察衛星により把握された」と、伝えた(16日)。今回のエンジン燃焼試験は、2006年7月、試験発射が行われ失敗したテポドン2号(射程距離6700km)、あるいはその改良型(射程距離1万km以上)と推定されているという。テポドン2号は米アラスカ州を、その改良型であれば米国のほぼ全域を射程範囲に収めるという。そうした国際関係の緊張を高める軍事実験が海を挟んだ指呼(しこ)の距離の国で行われていると言う事実。
また日本の領海内でもこの14日早朝、足摺岬沖の豊後水道周辺において国籍不明の潜水艦を海上自衛隊のイージス艦「あたご」が発見したものの、潜水艦が領海外に出奔(しゅっぽん)した後に見失ったという失態ともいうべき事件が起きたばかりである。
日本の安全保障を脅かす事態が続けざまに起きている。
そして、経済面ではリーマン・ブラザーズの経営破たんが世界的な金融危機ひいては大恐慌のトリガーとならないか、いま、全世界は息を潜めて米国政府の一挙手一投足を見守っている。わが国の金融システムへの影響は本当に大丈夫なのか。ただでさえ後退局面に入った国内景気に甚大な影響が及ぶのではないのか。
日本の経済を脅かす事態も急速に現実化してきた。
そうした緊迫した国際環境と金融不安や更なる景気悪化が懸念される国内情勢のなか、わが国の政治はというと、与党自民党は22日の自民党総裁選挙に向けてメディアと国民の目を釘づけにしようと、総裁候補仲良し5人組みによる全国行脚が・・・。片方ではメディア・ジャックの戦略に遅れをとった、いやドブ板行脚が政権への近道なのだ云々と党内議論にエネルギーを費やす相変わらずの民主党・・・。
福田康夫首相はとんでもない時期に政権を放り出してくれたものだ。これから総裁選挙、臨時国会そして、憲政の常道から言えば、臨時国会冒頭での解散、総選挙による国民の審判を問うという手続きが今度こそ必要なはずである。
しかし、ここ数週間で内外情勢は激変した。解散総選挙などという政治の空白期間をこれ以上、続けることが果たして許されるのだろうか。当然のことだが国際情勢はわが国の都合で動いてくれるわけはない。ましてや自民党の都合で動きなどしない。
政治は寸時に情勢の変化に対応しなければならぬ。その政治の頂点にいるはずの総理大臣が辞意を表明し、内閣はまさに開店休業の状態である。民主党も政権奪取に血道を上げ、目下の危機に対しての国家の対応をどうすべきかの議論をしようとしない。国会閉会中審査を与党に要求し、国家の危機管理につき早急な対応策を講じるべきである。政府与党も汚染米や年金不祥事問題の追及を怖がり、野党が言わぬからと頬かむりをせずに自らの発意で閉会中審査を開くべきである。
それが政治、政治家の最も大切な責務であり、政権を預っている、またこれから預ろうとしている政党の大事な資質だと思うのだが。
本当に、こんな能天気な国ってあるのだろうか。いや、極東の島国に厳然と無責任極まりない政治を行なう能天気な国があるのだから、「こんな国って嘘みたいだが、存在するのだ」ということになる。