米新聞大手のニューヨーク・タイムズが19日に79月期決算が426万ドル(約35千万円)の赤字であったと発表した。前年同期に3560万ドル(約29億円)という大きな純損失を計上して以来、4四半期ぶりの赤字であった。


売上高は前年同期比で2.7%減少の55400万ドル(約450億円)に止まった。購読料収入が4.8%減の落ち込みを見せる一方で、広告料収入も1.0%減と引き続き減少したことが減収、延いては赤字の要因となった。広告収入減の内訳を見ると、インターネット広告は14.6%と二ケタの伸びを示したものの、従来からの収益の柱である紙広告の5.8%の減少が全体収入の足を引っ張ることになった。


その同じ日に国際電気通信連合(ITU)が、2010年内に世界のインターネット利用者が20億人に達する見通しとの報告書を発表した(ニュースソースはCNN)。


その報告書によると、世界のネット利用者は過去5年間で倍増。就中、途上国の利用者の伸びが顕著で、今年の純増22600万人の72%にあたる16200万人が途上国の新規利用者となっている。


ただし、地域ごとにネット利用の普及率を見ると、欧州で人口の約65%がネットを利用しているのに対し、アフリカでは未だ10%に満たないなど、依然、先進国と途上国との格差は大きいと報告している。


ITUはその報告書のなかで、携帯電話の契約件数がこの年内に世界人口の8割近い53億件に達するとの見通しも併せて発表している。その契約の内訳を見ると、全体の72%に当たる38億件が途上国における契約であるとし、固定電話の普及率の低い途上国での携帯端末の契約数の急増ぶりが伺われる。


ITUの報告書が述べるこうした傾向は、今後、ますます、ネット利用者数の急増を予想させるもので、ニュース等ネット配信の多様化の動きと併せ、広告媒体の紙からネットへという雪崩現象をさらに加速させるものである。


新聞社に限らずテレビなどを含めた旧来スタイルの大手メディアが、紙面・テレビ画面でのニュース配信、それに合わせた広告といった事業モデルの存立基盤が急速に浸蝕され、崩壊しようとしている。


NYタイムズ社の赤字決算が、日本の大手メディアの現在の窮乏がさらに深刻化する予兆のように思えてならない。


また、そうしたメディア媒体の世界的大変革の時代に、我が国メディアの日々の紙面づくり、番組づくりなどを見るにつけ、その危機感のなさ、時代のスピード、変化への順応度、適応力の低さなどがひどく目につくのが、実際に気になるところである。