1911年7月14日、米人の歴史学者ハイラム・ビンガムが天空都市マチュピチュを発見してから100年目を記念して、現在、上野の国立科学博物館で6月24日まで、マチュピチュ「発見」100年“インカ帝国展”が開催されている。
1438年にパチャクテクの即位により南米アンデスの高地に興ったインカ帝国は、1533年にスペイン人コンキスタドールによって滅ぼされるまでの約100年間で、南北4千kmに広がる大帝国を築いた。 太陽神を崇拝し、金や銀、錫、銅といった鉱物資源を豊富に有し、金属精錬技術に長けた絢爛たるインカ文明であったが、世界が鉄器文明と呼ばれる歴史を重ねていた16世紀まで、鉄器を知ることなくまた火器も有することがなかった。 昨今の古人骨のミトコンドリアDNA分析からアメリカ先住民の祖先集団はアジアに由来し、ベーリング海峡が陸続きだった約2万年前にアメリカ大陸へ移動し、その後急速に南北アメリカ大陸へ拡散、展開していったことが分かって来た。 われわれ日本人の祖先とも遠い遠い古代に一緒に焚火でも囲んでいたのかもしれないと想像すると、インカ文明が至極身近に感じられて来た。 それもあって、科学博物館の会場は平日にも拘わらず来館者はかなりの数であったが、じっくりとひとつひとつの展示品を見て回った。 何か日本文化との共通点はないだろうかなどと、にわか考古学者を気取って見たのである。 もちろんそんな素人にビックリするような発見などあるわけもなかったが、ただわたしに流れる血がざわつき、少し泡立っているような奇妙な親近感のようなものを感じ取ったのは事実である。 最後のマチュピチュコーナーでは、コンドルとなって標高2430mの天空都市マチュピチュを俯瞰したり、“太陽の神殿”や“コンドルの神殿”などを歩き廻っているような感覚を覚える12分間におよぶ3D上映もあった。 日本文化との共通点をあなたなら発見できるかも知れない。ぜひ、インカ帝国展へ急がれると良い。 同展は国立科学博物館での展示のあとは全国8か所で2014年2月2日まで開催される。開催スケジュールは以下の通り。 2012年7月6日〜9月9日 仙台市博物館 2012年9月18日〜11月14日 山梨県立考古博物館 2012年11月27日〜2013年1月27日 静岡県立美術館 2013年2月9日〜4月7日 富山県民会館美術館 2013年4月16日〜6月23日 京都文化博物館 2013年6月30日〜9月1日 福岡市博物館 2013年9月10日〜10月23日 鹿児島県歴史資料センター黎明館 2013年11月9日〜2014年2月2日 沖縄県立博物館・美術館
15世紀末にインカに征服された集団チャチャポヤのクエラップ要塞への入口(撮影可コーナーの写真)