「私のヒューマニズムからも受け入れ難い」と小佐古東大大学院教授のその表情は苦痛にゆがんでいた。

4月29日、小佐古敏荘東大大学院教授が菅内閣の原発事故対応に抗議し、内閣参与の辞任を表明した。

小佐古内閣参与は、菅首相が福島第一原発事故収拾に向けて、大震災発生の5日後の3月16日に放射線の専門家として内閣参与就任を要請した人物である。

 29日の辞任会見で同氏は、「原子力災害対策も他の災害と同様、法律や指針、マニュアルに則って進めるのが基本だ。しかし、官邸および行政機関はそれを軽視し、その場限りで臨機応変(出会いがしら)の対応を行ない事態収拾を遅らせているように見える」、「何を(菅首相に)提言しても無意味だ」といった発言は極めて重く、菅内閣の統治能力・危機対応能力の欠如・崩壊を示すものと云える。

 さらに、「(20ミリシーベルト以下の被爆は大丈夫と)容認したと言われたら学者生命が終わりだ。自分の子どもにそうすることはできない」と述べ、「この数値(20ミリシーベルト以下)を乳児、幼児、小学校に求めることは、学問上の見地からも、私のヒューマニズムからも受け入れ難い。この数値の使用に強く抗議し、見直しを求める」とし、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を法令で定められている手順通りに運用し、隠すことをせずに予測結果を迅速に広く公表することを求めた。

 この小佐古氏の発言は、菅内閣が国民の「生命と安全」を守るどころか、自己の政治生命を守るために放射能拡散情報を意図的に隠ぺいし、国民とくに子供の生命を危険にさらして憚らないという、為政者としてあってはならぬ、許しがたい行為、言ってみれば人殺しに等しい凶悪犯罪をおこなっていることを、震災対応や政権運営を内部から見た人物が糾弾したものと云える。


 「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、・・・立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とする憲法13条をないがしろにするものである。

 小佐古氏が「私のヒューマニズムからも受け入れ難い」とまで発言した意味は重大であり、犯罪行為に自分の良心として加担できぬと云っているのである。

 菅直人は何故に政治を志したのか。菅直人は何故に総理大臣になったのか。菅直人は国民の命を危機にさらして何を守ろうとしているのか。

 菅直人は「大震災時に自分が総理であることは(天が与えた)宿命である」と、自分をあたかも国難に立ち向かう悲壮な英雄になぞらえた。

 笑止である!!

 小佐古氏の辞任理由こそ、菅直人という人物の狡猾さ、欺瞞体質を摘発するものであり、隠ぺいされた情報の公開を早急に行なったうえで、国民を裏切る人物が国民のリーダーたる資格などないのは自明であり、即刻の退陣を求めるものである。