彦左の正眼!

世の中、すっきり一刀両断!で始めたこのブログ・・・・、でも・・・ 世の中、やってられねぇときには、うまいものでも喰うしかねぇか〜! ってぇことは・・・このブログに永田町の記事が多いときにゃあ、政治が活きている、少ねぇときは逆に語るも下らねぇ状態だってことかい? なぁ、一心太助よ!! さみしい時代になったなぁ

美山荘

泊ってみたい宿=摘み草料理の美山荘

美山荘の蛍狩り(2006.7.5)
京都の旨い蕎麦処・“おがわ”は、味だけでなく、サプライズ!!(2013.6.30)

京都市左京区花脊原地町375

TEL 075-746-0231


この6月、京都北区紫竹にある蕎麦処の名店・“おがわ”で美山荘の若女将に偶然、お会いしてから3か月。

9月の初旬に美山荘を訪ねた。5年ぶりである。何だか、ずいぶんとご無沙汰していたことになる。

美山荘
美山荘

しかし、当日、母屋の前にタクシーが止められると、早速に若女将が雨のなか、風流な番傘を手にタクシーの窓を叩き、雨滴に濡れる硝子越しに笑顔でお迎えである。

母屋から離れ(川の棟)を見る
母屋からみた離れ(川の棟)

すぐに離れの“楓・岩つつじ”の間へと案内された。

岩つつじの間

床の間を背に月見台を正面に見ると、もう、心はいつもの山深い花脊の美山荘の世界へいっきょに浸り込んでゆく。

雨の月見台

しっとりとした雨音のなか離れの下を流れる清流の瀬音が表情豊かな旋律を奏でる。

お薄 お茶請け
到着時に供されるお薄とお茶請け

そうした世界にわが身がおかれているのだと感得した刹那、まさに“静謐(せいひつ)”というシュールな浮遊感をもつ小宇宙に抱きすくめられたような気分になった。

橙と翠

あぁ、美山荘へかえってきた。

母屋

そう思わせる奇妙な位相空間、距離空間がここには化石生物のように厳然と棲息しているような気になるから不思議だ。

母屋へ入る若女将
母屋へ入る若女将

若女将の佐知子さんはさしずめわたしにとって、ドーナツの穴のようなものなのかも知れない。いや、失礼!


薪で炊かれた熱いお風呂へゆっくりと入り、雨に濡れた体躯と心をとろかす。いつも、ここの檜の湯船につかると、どこの温泉よりも温泉らしく感じる。

お風呂への渡り廊下
離れから湯殿へ

清浄な清水を薪で沸かす・・・。自然の恵みに感謝するつつましやかな営み・・・。

清流をながめる湯船
清流を眺める湯船

浴衣に着替えて、さぁ、母屋へ・・・。

渡り廊下から母屋を
湯殿の渡り廊下から黄昏る母屋をみる

夕餉である。

母屋玄関内

今回、もっとも驚いたのが、母屋の日本間に洋風テーブルがおかれていたことである。“どうして”と、訊ねたところ、最近、高齢化の影響で畳に坐るのが辛いというお客様が増えたということでそうした要望が強いのだという。

母屋・夕餉の間

そういえば、わが家のお寺も最近は本堂の畳の上にならべられた椅子に坐って、法事などを行なっていたっけ。

次の間の流水の襖絵
テーブル席から次の間・流水の襖絵を
母屋夕餉の間・床の間
夕餉の間・床の間

何だか、日本文化を孫子(まごこ)の代へ伝えてゆくべき使命を担っている世代の人間が、その伝統文化を自らの使い勝手に合わせて毀すとまでは云わぬが、その連綿とした流れを結果的に断ち切る行為に手を貸してしまうというのも、ちょっと複雑な心持ちになる。(翌朝の朝餉はこのお部屋で坐っていただくように心配りされていました)

岩つつじの間・床の間
岩つつじの床の間
鞍馬より天狗風わく・・・軸にも縁を感じる
鞍馬より天狗風わく・・・

もちろん、医療的・物理的に無理な場合は、それはそれ、まったく別の話である。

月見台と木立と清流
お部屋から月見台、当日は雨で縁台へ出ることはかないませんでした

今の子供たちに高坏膳で食事をさせることなど、日常生活のなかではまずありえない。
だからこそ、こうした美山荘という位相空間、位相の遅れが起こるような世界において、どんな圧力を加えようが、どんな形に変形させようが、ドーナツの穴はひとつなのだということを、若い人たちに気づかせたい・・・。

美山荘・石畳

日本人の底流に流れる心の機微といったものはひとつなのだということを知ってほしい・・・と、わたしは考える。

まぁ、そうした気難しい話・・・、どうでもよい。ここ美山荘にくると、そうした七面倒な理屈、思念こそが、大悲山の上空高く、昇華され、霧消してしまう。そのことが言いたかっただけである。

花脊の空
花脊の空
花脊の山
花脊の山

さて、その日は6時半に夕餉がはじまり、席を立ったのが11時過ぎと、なんとまぁ長丁場となった。

八寸 ちょっとお洒落な八寸

ご挨拶に出てこられた大女将に長の無沙汰を詫び、手ずからの銘酒・“弥栄鶴”をいただきながら、

弥栄鶴
美山荘でいつもいただく弥栄鶴

大女将の変わらぬ美しさに少々、驚きを禁じ得なかった。山深い花脊という地をおおう清浄な空気、冴えわたった清水、深山に充ちる木霊たち・・・。そのものたちが化身しているのかも知れぬと、一瞬、脳裡をよぎったのは嘘ではない。

向付 季節の茸汁
向付と季節のキノコ汁
玉蜀黍とオクラ 鮨
玉蜀黍とオクラ 箸休めの鮎の鮨
鱧の汁 つくね
鱧のお椀     つみれ
鮎ご飯
鮎ご飯

そして、当夜はわれわれをふくめ双組だけの投宿であったので、のんびりとおいしい食事に箸を添えながら、お酒を嗜み、若女将ともゆっくり11時過ぎまでつもる話ができ、満足、満足の夜であった。

鮎の盛りつけ
若女将が鮎の塩焼きを、豪勢です・・・
鮎の塩焼き

そう言えば、翌朝、家内が、“毎回のことですが(余計だぁ〜!)、ほんとうに夜遅くまで長話のお相手をしていただいて申し訳ありません”と若女将に深々とお詫びしておりましたなぁ。


なぜ? 旅はこうした話ができるのも、その大きな魅力のはず。どうしてダメなの?となんぞ理屈を述べようものなら、冷たく、“世の中には自ずから常識の範囲というものがあります”と、お叱りの言葉が頭上から雨あられと降ってきそうなので、ここらで止めておく。

離れ前から峰定寺の正門を
離れ前から峰定寺正門を
峰定寺内を流れる清流・寺谷川
峰定寺前を流れる寺谷川・離れの下の清流の上流

翌朝、家内は、峰定寺の本堂をお参りした。わたしは石段がきつくて危ないとのご住職の奥様の指示のもと、麓の庫裡にて待機することに。

峰定寺仁王門
峰定寺仁王門


峰定寺・庫裡
峰定寺・庫裡


そして、いよいよ、美山荘ともお別れである。大女将と若女将ご両人のお見送りを受け、心を洗われた美山荘のひと夜を胸に、一路、周山街道を嵯峨野の清凉寺へ向けて南下していった。

大女将と若女将のお見送り

さて次回は、若女将が云う平野屋に負けぬ“鮎のせごし”を食しに美山荘へ伺うとしよう。


その季節には事前に頼んでおくと、“献上鮎のせごし”が用意できるとのことであった(“せごし”はお客様によって好き嫌いがあり、依頼があったらご用意するのだそうだ)。

相変わらずおきれいな若女将

鳥居元の平野屋の鮎の“せごし”をわたしが褒めすぎたものだから、花脊の化身ともいえる淑やかな若女将も、やや、本気モードでありましたなぁ。

美山荘・扁額

そんなこんなで、久しぶりの美山荘へのひと夜の旅。やはり、行ってよかった。

美山荘母屋玄関

泊ってみたい宿。このタグでこれまで美山荘をアップしていぬことに、今回、気づき、美山荘の鮎のせごしもおいしいと語る若女将に敬意を表し、旅の思い出として心を籠めてここに記すこととした。



新緑に映える美山荘(続編)5

新緑に映える美山荘(続編)

京都市左京区花背原地町375
電話番号:075-746-0231

峰定寺を

朝の母屋

玄関より

 

 

 

 

 

 

母屋前より峰定寺を  朝の母屋     母屋玄関

翌朝は母屋にある名栗の間で朝食を摂った。「名栗」という名前がこの部屋に冠されたのは、おそらくその栗材の床が「釿(ちょうな)」で波状に荒く削られたいわゆる名栗面(なぐりめん)といわれる表面仕上げになっているところから来たのだと思われるが、その趣のある床に腰をおろし囲炉裏型のカウンターの下に掘られた窪みに足を落とす。

寝ざめの茶

朝食が運ばれる前に朝の一服。梅の香りのするお湯で昨夜の残った酔いもすっと吹き飛び、胃袋が活き活きと動き出すのがわかる。

 

 

目覚めの梅湯

 

日頃、朝食を抜く習慣のわたしもこの美山荘では、箸を採る。森閑とした深山の宿でのんびりとした朝食をとる。おいしい!

朝御飯1

朝御飯2

朝御飯3

 

 

 

 

                              

              

                                 豆腐       味噌汁

朝御飯4

朝御飯5

朝御飯6

 

 

 

 

 

 

のへしこ   肉厚の椎茸の煮しめ   野菜のお浸し    

そして、いつものデザートが目の前にあらわれる。黒砂糖味のお菓子。大好物である。それをいただき終わると、美山荘とのお別れの時間が迫っていることを知る。名栗の間に静寂がただよう・・・。

 

朝御飯デザート

母屋玄関に置かれる硯母屋から離れを 

 

 

 

 

 

 

黒砂糖菓子   玄関脇の硯と宿帳   母屋より離れを

大女将、若女将に加え、今回はご主人の久人氏にもお見送りをいただいた。本当にお世話になり、ありがとうございました。次回は、久人氏は夏も素敵ですよと、若女将はわたしは冬の花背は素晴らしいと云う・・さて、さて、どっちのご意見を取り入れようか・・・。

お見送り

御似合いのご夫婦

 

御似合いのご夫婦 

 

 

 

 

 

若女将、久人氏、大女将

 

楽しい悩みを抱えて、然る方のご厚意で思いがけずいただけた葵祭の招待席のある下鴨神社へと向かった。

鞍馬街道1

鞍馬街道2

京都の街並が見えてきた

 

 

 

 

 

 

 

花背の辺りの風景   鞍馬街道   京都の街並を見る 

 

 

中東久人氏のブログ「美山荘だより

 

 

彦左の正眼「美山荘の蛍狩り 2006

 

彦左の正眼「新緑に映える美山荘(前編)

 

 

彦左の正眼「葵祭の日、割烹やましたへ」

 

         

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新緑に映える美山荘(後編)5

新緑に映える美山荘(後編)

野草一味庵

京都市左京区花背原地町375
電話番号:075-746-0231

 

天魚(あまご)の塩焼きと夏蜜柑酢については中東久人氏のブログ「美山荘だより」の5月15日付けに詳しくその極意が書かれています。ブログを帰宅後に読ませていただき、食材を活かすために斯程(かほど)にさまざまな工夫と手間が掛けられていることを知り、お客冥利に尽きるとはこのことと心より感謝した次第です。

 

箸休

箸休

 もみじ傘 へぎかつお

 

 

 

 

 

炊合

炊合

 筍・わらび・鰻

 

 

 

 

 

御飯

御飯

 山蕗(ふき)ごはん

 胡麻 香の物

 

 

 

 

水物

水物

 美山羊羹(ようかん)

 チーズアイス

 いばら苺

 

 

 

 

デザートの最後に菓子が出たのですが、餡子(あんこ)に目のないわたしは、目の前に出された「よもぎ餅」をパチリではなく、パクリとしてしまい、写真がありません。そういうことで、今回も、有終の美を飾ることができませんでした・・・。

 

そうこうして料理すべてを堪能しつくした時分には、時刻は十時を過ぎていました。遅くまで御もてなしを尽くしていただいた美山荘の皆さんにはいつもいつも感謝の気持ちでいっぱいです。

 

そして、料理というものは目で楽しみ、舌で楽しみ、そして耳で愉しむ(会話)、その三拍子がそろって初めて食三昧であると心底知らされた山斎(さんさい)での思い出に残るひと夜でありました。

 

 

 

 

 

美山荘当主の中東久人氏のブログ「美山荘だより

 

【しつこく続編につづく

 

 

 

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京都・美山荘 花もごちそう

 

雪峰花譜―摘草料理 美山荘

京 花背 摘草料理


摘み草クッキング

新緑に映える美山荘(中編)5

新緑に映える美山荘(中編)

京都市左京区花背原地町375
電話番号:075-746-0231

盛り付け、器、食材の命である新鮮さ(ここまでは何とか写真でお楽しみいただけるが)、そして味付け、そのすべてがそろったのがここ美山荘の摘み草料理であると云ってよい。以下、献立に沿って写真で料理を紹介する。まずは当日の御献立である。

 

当日の御献立

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、せっかくのお料理も名前を(加齢のためか?)忘れてしまうので、大女将に御献立の明細を知りたいと無理をお願いしたところ翌日、こんなにりっぱなものをいただいた。お忙しいなかこうした我儘をお許しいただいたことにいたく恐縮したところである。

 

そこで、その献立に沿って写真での紹介に移ることにする。中にピントボケが多いのはお料理に舌鼓を打ち過ぎたあまり、つい写真への集中力が減殺されたためであり、決してお神酒の所為ではないことを言明しておきたい(誰に?)。

 

向付と汁

向付

 鯉造り 其皮湯引・芽独活(ウド)・

 のびるおろし・野人参花

 よもぎ生麩・からし白味噌仕立

 

 

 

筍杣焼き

 

青竹杣(そま)焼き筍 木の芽味噌

 

 

 

 

 

 

揚げ物

揚物

 

蒲公英・こごみ・つつじ花・行者にんにく・

こしあぶら・みつ葉・いたどり・たらの芽

 

 

 

 

 

口取

口取詳細お凌ぎ

 

 

 

 

 

 

 

口取(若狭鰈・雁足・うるい・芽うど・たら芽) お凌ぎ

 

 

凌ぎ鯖すし

煮物椀

焼き物

 

 

 

 

 

 

 粽鯖すし      揚岩魚の煮物椀   天魚塩焼・夏蜜柑酢

 

若女将

 

 

談笑する若女将

 

 

 

 

 

「鯖すし」は祭の日に昔から京都では、町衆の御馳走として食べる風習があったそうです。若狭から鯖街道を通って運ばれてきた、周りを山に囲まれた京都では貴重なお魚だったのでしょう。葵祭本番の15日を翌日に控えた夜、往時に想いを馳せたところです。

 

 

 

 

 

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中東久人当主のブログ「美山荘だより

新緑に映える美山荘(前編)5

新緑に映える美山荘(前編)

美山荘 蛍狩り

京都市左京区花背原地町375
電話番号:075-746-0231

 摘み草料理が一番美味しい時期である5月のゴールデンウィーク明け、学生時代の先輩ご夫妻と一緒に美山荘を訪れた。今回は桂離宮を拝観後に花脊(はなせ)へ向かうため周山街道経由の道行きとなった。

 

桂離宮4

桂離宮1周山街道

 

 

 

 

 

 

 

     桂離宮       桂離宮      周山街道      

 

 そのおかげで高雄から花脊の新緑のなかに自生の藤の花がたわわに垂れ下がっている様を目にできたことは、望外の喜びであった。腕周りほどもある藤の樹の蔦の太さと長さは、藤棚になじんでいる都会の人間には新鮮な驚きであった。そもそも自然が持つ逞しさが与える不作為の心象は、「人工美」を何倍にも超える感動を与えるものなのだと得心したものである。とくに桂離宮という人工的造形美の円熟の極致を堪能した直後であったことが、余計にその思いを強くさせたのかもしれない。

そして山気をふくんだ翠色のイオンで胸が一杯に満たされたころ、車が美山荘の母屋玄関前に横づけにされた。

 

美山荘母屋表札

美山荘から見る新緑

離れ入口

 

 

 

 

 

 

 

東大寺管主揮毫の表札   美山荘の新緑       離れ玄関

 

 ちょうど若女将が清流沿いに建つ「川の棟」と呼ぶ離れに向かっているところに鉢合わせた。無沙汰の挨拶を交わした。われわれは離れの「山椒の間」と「楓・岩つつじの間」に通された。お香の焚き染められた部屋でいつも通りにアケビ茶がふるまわれた。お香の匂いがほのかに漂う静寂のなかでアケビ茶を喫む。そのいつもながらの手順を踏むことで、「美山荘の小世界」に普段着の気持ちのまま入りこめるから不思議である。

 

山椒の間

山椒の間から月見台

床の間のウワミズ桜

 

 

 

 

 

 

 

                   

 山椒の間     山椒の間から月見台  ウワミズ桜

 

そして夕餉前に高野槙の湯船につかる。花脊の湧き水を薪で焚いたお湯は、一日中歩き続けた体躯の疲れをやわらかく揉みほぐしてくれる。

 

 夕餉の間は「楓・岩つつじ」をつかった。母屋での襖絵を目の保養にしながらの(と云っても、銘酒「弥栄鶴」を数献?いったころには目は回っているのだが・・・)宴も乙なものだが、離れで清流の音を聴きながらの夕餉もまた異なった趣があってよい。鞍馬山のさらに深山の宵闇が徐々に深まってゆくころ、美山荘の宴の儀式とも云える野趣にあふれる「栗箸」とともに「菜篭(さいかご)」が運ばれてきた。篭のなかには葵祭りの璽符(みしるし)である双葉葵が誂(あつら)えられ、旬の食材に加え、この季節(とき)にしかできぬ御もてなしを感じさせられたものである。

 

楓・岩つつじの間から月見台

菜篭おもて

野趣あふれる栗箸

 

 

 

 

 

 

                

 

楓・岩つつじの間   朱塗り盃と菜篭   曲った栗箸      

 

 この宵は賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社の例祭の5月15日の葵祭の前夜である。大女将にそれに縁(ゆかり)の床の間の掛け軸の説明を受けてから、朱塗りの盃でまず恒例の「弥栄鶴」をいただいた。花脊の夢のような夕餉の開宴である。

 

菜篭のなか、ふたば葵

葵祭の掛け軸

弥栄鶴

 

 

 

 

 

 

 

 

菜篭の中、双葉葵   葵祭縁の掛軸    銘酒 弥栄鶴

 

 今回の訪(おと)ないは摘み草料理の真髄の一端に触れるのが主目的である。好きなお酒はほどほどに、料理の写真もちゃ〜んと撮ってブログにアップすることを誓いやって来た。家内からも事前にその主旨をくれぐれも逸脱せぬようにと強いお達しが出ていた。

 

 美山荘の料理はその調理ひとつとっても手が込んでいるのは当然であるが、何といっても一つ一つの料理に御もてなしの心が籠(こも)っているのがうれしい。しかも御献立を見ていただくとわかるが、食材(特に当日は、摘み草)の種類も豊富である。このブログでは写真を活用、紹介することで、摘み草料理の粋と美山荘の御もてなしの心を少しでもお伝えできればと願っている。

 

中編に続く

 

 当主 中東久人氏のブログ「美山荘だより

美山荘の蛍狩り5

(ブログ「彦左の正眼」内の写真等の一切のコンテンツの転用を禁止します)

泊ってみたい宿=摘み草料理の美山荘(2013.10.23)
新緑に映える美山荘--2008

東京の「ほたる狩り」=うかい鳥山(八王子)6月3日〜7月13日(2010.5.29)
京料理・「粟田(あわた)山荘」で「蛍の夕べ」を愉しむ(2011.7.1)
“辰野・ほたる祭り”に行って来た=松尾峡・ほたる童謡公園(2012.7.2)

梅雨の真っ只中の七月二日に京都花背にある美山荘に蛍狩りに行った。八ヶ月前にこの日を予約した。蛍が出るのがこの日をはさんで前後、5,6日間ということで、当たれば儲けもので予約した。梅雨前線が行きつ戻りつする空模様に一喜一憂して、この日の京都行きを待った。

当日、午前9時半頃に京都へ到着したが、まさに到着と同時に篠突(しのつ)く雨。タクシーに乗るのも、十センチほどの水溜りを避けて必死に座席に滑り込む。当日は、美山町にある「かやぶきの里」を見てから、美山荘に向う予定。


まずは、「かやぶきの里」へ。これほどの僥倖があろうか、空模様は一転、晴れ模様。午後、3時半に美山荘に到着。

母屋の玄関

2006美山荘若女将

若女将

お部屋の床に生け花が・・・

母屋の縁側

母屋の床の戸袋の絵

飾る壺 

お風呂に入り、夕食に舌鼓を打ち(下の写真は最初のお皿のみで、あと次々と出された料理は女将との談笑とおいしい日本酒「弥栄鶴」にかまけて、写真がない・・・。でも、献上鮎のおいしかったこと・・・)。そして、ついに午後9時ころに夢に描いた蛍狩りに出発した。

恒例の籠に盛られた八寸

母屋食事の間の襖絵

離れの部屋・床の間に片栗の活け花 

蛍狩りという言葉は知っていたが、実際にどうするのかを知らないわたしは、家内や娘ら同宿の人たち9人とともに美山荘のワゴン車で7、8分ほどの渓流の橋の上に向った。樹林の細い径、と云っても真っ暗であるが、その間も車のライトのパッシングに釣られて樹間(おそらく)に蛍が青白い灯をぼ〜っと点す。ある時は数匹が寄り添うようにして、またある時は離れていくようにして、車の動きに合わせるように、陸続と蛍が湧いて出てくる。

寄り添う二匹の蛍

清流から立ち昇る蛍

漆黒の闇に蛍が・・・  

まさに幽玄の世界とはこのこと。これから初めて経験するであろう蛍狩りに心が昂ぶって来る。橋の上は漆黒の闇である。おそらく上空は梅雨の雲が厚く覆っているのであろう、一条の月の光も一粒の星の影さえ見ることが出来ない。右も左も真っ暗である。

 
橋の下に渓流の大きな音が聴こえてきた。そして、十数個の蛍火がゆらゆらと、そしてす〜っと昇ってきた。あっと思う間もなく、今度は頭上から数匹の蛍がまるで流れ星のように降ってくる。それは、暗黒の世界をキャンバスにして繰り広げられる繊細な光の映像劇である。時間は止まったように動かない。

蛍袋の花芯で蛍が幻想的に灯をともす

緑色と薄紫の世界がきれい

鑑賞後は自然のもとへ・・・

若女将に渡されたうす紫色の蛍袋(ほたるぶくろ)の花弁に掌にとまる蛍を流し込む。花芯(かしん)に落ち着いた蛍が間歇的にぼ〜っと仄かに明かりを灯す。車の中で蛍袋という王朝絵巻のような名をつけられた花芯は強く弱く点滅を続けていた。その花びらを手にしたまま宿に戻った。部屋の縁に置いた蛍袋の花芯をのぞいた。そこにはうす紫の世界の中で、幻想的なみどり色の光を灯す蛍がいた。ゆっくりとした時間が流れ、待ち焦がれた京都の深山の夜が更けた。

寝ざめの梅茶

名栗の間で朝食

いつもおいしい朝食です

名栗の間の名栗面の床です

離れの部屋には露台が

いよいよ若女将ともお別れです

大女将もご一緒でのお見送り、また、お会いしましょう・・・ 

蛍狩りを楽しんだ翌日は、小糠雨(こぬかあめ)が朝から降っていた。寝覚めに効く梅茶を飲み、遅めの朝食をゆっくりと堪能する。やはり素材の野菜も厳選されておいしい。


そして夢のようで一幅の絵のような過ぎし日を心に仕舞い込み、大女将、若女将に別れの手を振った。

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雪峰花譜―摘草料理美山荘


小さくて贅沢な宿

 

「古都散策」――花脊 美山荘4

「古都散策」――大悲山花脊

  

 京都の北嶺、鞍馬山のさらに北側に花脊(はなせ)というひなびた邑がある。水道も都市ガスもまだ通っていない山麓に、摘み草料理で有名な「美山荘」という料理旅館が人里を遠く離れたところに自然の懐に抱かれるようにしてひっそりと建っている。

 花脊の山

 

美山荘から花脊の山を

 

離れからの清流

 

 

 

 

 

 

 

 

 古刹、峰定寺(ぶじょうじ)の宿坊を改装したもので、一晩の宿泊客は本館と離れで四組(場合によっては五組)といういたって小規模で瀟洒な宿である。離れの下には清流が流れ、秋になると室外に張り出した縁台から、絢爛な紅葉が瀬音とともに手に触れるほどの近さで見える。

 

 美山荘でおもてなしをしてくれる女性たちは、薄い紫がかったグレーの作務衣を身にまとっている。その装束は活動的な美であり、しかも楚々とした印象を与え、山深い宿におよそ良く似合っている。

 

 大女将の中東和子氏と若女将の佐知子氏は、まるで親子というか姉妹のように見える。お二人の美しい白い肌は、もちろん生来のものであろうが、この花脊の冷たく清冽な湧き水でさらに美しく磨き上げられたものといってよい。

 

 部屋を担当してくれる若い女性も礼にかなった所作で、ほのかに香の薫りの篭る室内の凛とした空気に見事に馴染んでおり、もてなしを受けるわたしたちも、いつしか清々しい清澄な心持ちになっていく。彼女達の何気ない立ち居振舞いやちょっとした会話の遣り取りのなかに、お客の心をゆっくりとほぐしていく何か隠し味のようなものがふくまれているように思えてならない。

 

 

美山荘本館

 

美山荘離れへ

 

個室から 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今年は、花脊に蛍を見に行く予定である。もう少しの辛抱で、この東京のわずらわしい喧騒から離れることが出来るかと思うと、一日、一日が過ぎていくのがまどろっこしく感じられ、そして、その日が来るのを待つ想いは日毎に強まってくる。

 

 今回、旬の摘み草料理の御品書きは何だろう・・・。

都会では、ことさらにオーガニックとか、無添加食材とか、うるさいほどに「食材」の差別化を喧伝する。最近は、それが逆に耳に障るほどになってきた。自然が人間から遠ざかっていくにつれ、いや、人間が自然を遠ざけるにしたがって、そうした「ことさら」の声はわたし達の自然への耳を聾していくのだろう。

 

もう幾つ寝ると・・・、美山荘♪



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