7月17日、祇園祭の山鉾巡行の日である。当日の人出はすさまじく、ホテル出立がひとり遅れたわたしは長刀鉾の注連縄切りを見ることが叶わなかった。
先発した細君以下の同行も人混みの中で離ればなれになり、後刻の聴き取りで、注連縄が生き稚児さんに切り落とされた瞬間を目にできたのは180cmを超す長身を誇る従妹の旦那一人だったことが判明。
頭一つ抜けると群衆を睥睨し見通せたというから、“平等社会を”というお題目も所詮空念仏に過ぎないことを悟らされた「祇園精舎の鐘の聲」であった。
とくにわたしときたら杖を衝きながら歩道を埋める人だかりを一人、搔き分けてゆくのが難儀で、4番目の芦刈山に追いついたのが精一杯だったのだから。
そして、凄まじい群衆に気圧されたわたしは結局、四条河原町の高島屋の開店と同時に、クーラーの効いた店内へと入店、出たり入ったりしながら人の頭越しに山鉾を遠めに見るといった省エネスタイルの祇園祭観覧となった。
それほどに2023年の巡行日は猛烈な暑さと驚くような人出であった。
だから四条河原町交差点での辻回しを人垣越しに2、3基見て、汗だくになって早々にホテルへもどった。
四条河原町で鶏鉾の辻回し・3回目
ほぼ同時に先発組も猛暑とひと気にあてられて、ヤレヤレといった態でホテルご帰還となった。
一日目の宿・sequence KYOTO GOJO(下京区五条烏丸町)は午後2時がチェックアウトタイムで朝・昼食付とお得なホテルで、我々一行も冷たい飲み物とランチをとりながら小休止。
そして、夜に「割烹やました」で神輿の神幸祭を愉しむのがわたしたちの眼目であったため、二日目の宿、「やました」へ徒歩1分のホテルオークラ京都へ移動。部屋でシャワーを浴びてやましたへの出陣を待った。
数か月前の予約であったが、宵山の日は既にオークラは満室であった。
東山連峰が見渡せる部屋からは比叡山は勿論、真下に実は贔屓の「割烹やました」が見下ろせる。
午後5時、「やました」が西御座・錦市場の衆にふるまう酒、ジュースなどの用意がはじまった。これは祇園祭神幸祭の「割烹やました」のいつもの決まりである。
その様子を見て、昼の猛暑の疲れも癒えた私たち勇躍「やました」へ出陣、5時半、やましたへ予定通りに入店した。
高瀬川にはいつも通りに高瀬舟が浮かんでいる。