ひと夏の忘れ物 足摺岬


ひと夏の忘れ物でどうしてもお伝えしておきたいのが、足摺岬探訪で泊まった「TheMana Village(ザマナヴィレッジ)」という奇妙な名前のホテルである。

theMana village ロビー
大平洋を望む開放的なラウンジ
ネットで足摺岬に近い「評判の宿」を探していたら、「TheMana Village」と書かれた一枚のスライド写真に目が釘付けになった。

TheMana Village(ザマナヴィレッジ) HPショット
HPの写真
夕暮れ時、茜色の雲を映す水上に浮かぶデッキで憩う人たち・・・

そこには「悠々とながれる時間」が切り取られていた。

TheMana Village(ザマナヴィレッジ) エントランス
TheMana Village(ザマナヴィレッジ)エントランス

即座にこのホテルへ泊まってみたい、泊まろうと決めた。そして予約を入れた。

ウェルカム・ドリンク
ウエルカム・ドリンク
TheMana Village(ザマナヴィレッジ)はそもそも「足摺パシフィックホテル花椿」といっていた老舗旅館で、今般、それを一新、アジア屈指の滞在型リゾート施設として再生させて地方創生のひとつのモデルとしていきたいというのだそうだ。

海側 ツインルーム
ツイン でも掛布団が・・・
ただ宿泊してみて、予約したツインルームのベッドメイキングなど相応のホテルとして洗練度をブラッシュアップしてゆく点は多いと感じた。
部屋からレストランエリアを
宿泊棟からレストラン棟をみる

またホテル棟からレストラン・温泉棟へ移動する長い廻廊、周りのガーデニング、付属建物など「アジア屈指」を謳うにはまだまだ手を加え整備すべき箇所があり未だ改装途上にあるというのが実際のところである。

室内から太平洋をみる
ツインルームからの景色

そうした未熟さを知ったうえでも、当ホテルを推奨する所以は、ひとつは黒潮をながす大海原を前面に随える比類なき立地条件である。

室内からの眺望
室内から
広いラウンジやツインの部屋、どこからでも空と海を劃す水平線を一文字に引く太平洋が見渡せる。

もう一つが大自然と一体化したかのようなイタリアンレストランAzzurrissimo(アズリッシモ)の存在である。

Azzurrissimo店内
Azzurrissimo

このレストラン、今年3月にオープンしたばかりだという。

その事実こそが「TheMana Village(ザマナヴィレッジ)」がまさにこれから「名」に「実」をともなわせ「アジア屈指」へと変貌をとげてゆく、その可能性の途上にあるのだとおもわせたところである。

イタリアンレストラン
夕暮れのテラス 
Azzurrissimoよりみる
三つ目が「ONSEN」である。

懸崖に設けられた小さな露天風呂から眺める足摺岬の大海原は掛け値なしに素晴らしい。

残念ながら撮影禁止のため写真をお見せすることはできないが、遥か遠くに水平線を見晴るかし露天の岩風呂につかる。風にのって潮の仄かな香りがとどけられる。そっと瞼を閉じると磯をあらう潮騒の音や岩肌をたたく風の音が聴こえてくる。そして瞳をあけると頭上にはどこまでも蒼い空がひろがっている。

デッキから太平洋が一望
レストランからの景色
青い国、四国のはずれで猥雑な喧噪から解き放たれ大自然を体感できるTheMana Village(ザマナヴィレッジ)は都会の生活や人間関係のうっとおしさに疲れた人にはまさにうってつけの宿であるといってよい。

 

さて、そんなホテルのレストラン・「Azzurrissimo(アズリッシモ)」からは部屋から見渡す大海原を、より間近に感じることができる。

デッキから大海原
水平線が空と海を劃す
と云うよりも、大海原の真っ只中に浮かんでいるレストランであるといった方が感覚としては近い。

ザマナヴィレッジ
レストランのデッキ
レストランのデッキの突端に立ってみるとわかるのだが、爽快感というのとは少しちがう、潔(いさぎよ)さのような不思議な感覚に囚われるのである。

海風のなかで
朝のデッキ
朝食後の珈琲を突端にならぶテーブルで喫んだのだが、目の前にひろがる青海原と白い雲・・・その涯しない風景のなかで自分の姿はあまりに小さかった。

青海原で珈琲を
デッキ突端で珈琲を喫む
そして連綿と流れる時間のなかで「人の一生」とは瞬きの間にも充たぬと実感させられた。

人生の思い切りとでもいおうか、「見切る」時がすぐそこにきた・・・そんな潔い心持に自然とさせられる、不思議な小世界がこのデッキの突端には息づいていた。

夏の終わりに
ひと夏の忘れ物

さて、そんな絶景のなかでいただく「Azzurrissimo(アズリッシモ)」のイタリア料理であるが、

これがまた地産地消、地元の有機野菜をつかった一皿もおいしいし、盛り付けもきれいだ。
生ハムと山崎さんの有機野菜
地元の有機野菜と生ハム

海の幸は勿論おいしいにきまっている。

土佐清水の鮮魚のカルパッチョ
地元鮮魚のカルパッチョ
まず鮮魚のカルパッチョ。野菜との色合わせもよい。

鮮魚丸々一尾のアクアパッツァ
鮮魚一尾のアクアパッツァ
さらに、お薦めが鮮魚丸々一尾のアクアパッツァが豪快である。

手際よく骨をとってくれます
若い男の子の手さばき・・・
若い男の子が・・・、細君はそれだけで満足の様子・・・手際よく骨と身をとりわけてくれるから、不器用で面倒くさがり屋のわたしも問題なく美しくいただけた。

食べやすくなったアクアパッツァ
こんなきれいに捌いてくれました
この一皿が「あぁ土佐の国だぁ」と老夫婦を一挙に納得させたことは言うまでもない。

大きいピザ
この大きさ!!
さらに「安芸・土佐の赤うし」も旨かった。
土佐の赤うし
土佐の赤うし これで一人前なんです・・・

その前に実は、えっ!というほど大きなピザがサーブされていたので、赤うしの時には二人とも「いやぁ・・・おいしそうだけど・・・こりゃお腹が大変!」と、やや尻込みし、苦笑いの態・・・。

パスタ てっぺんトマト
形だけ・・・
さらにパスタがあるのだが、これは希望する量をちゃんと訊いてくれたので、

「お姿だけで結構」と、麺類党のわたしもさすがに形だけパスタをいただいた。

デザート
ティラミス・・・無言・・・
デザートもティラミスが・・・新鮮フルーツと一緒に・・・

夕暮れのテラスでディナー
テラスから夕暮れを・・・
その最中に夕暮れの闇があたりにおりてきたが、テーブルにそなえられたランプの灯がそこここでボ〜ッと浮かびあがってくる情景も興趣が掻き立てられた。

テラスで
テラスはランプの灯だけ・・・
そしてすっぽりとまわりが闇に支配されたころには、遠くの灯火が鬼火のようにもみえて、これも幻想的であった。

ランプのなかで
デッキにはランプの灯だけが浮かぶ・・・
こうしてこの夜、お腹は足摺の金剛福寺ではなく・・・満腹寺となったのだが、料理の美味しさ、レストランの景観のすばらしさもさることながら、わたしどもが「これは!」と感心しきりとなったのが、「Azzurrissimo(アズリッシモ)」に代表されるこのホテルのスタッフの皆さん方のはち切れんばかりの若さと笑顔とhospitalityであった。

hospitality溢れる若いスタッフ
若いスタッフの笑顔が素敵!!
退職後全国各地を旅してまわり常々実感させられているのが、昨今の厳しいホテル・旅館事情である。

人件費の圧縮策により人手が絶対的に少ないうえに従業員の高齢化、加えて日本語が今一つの外人スタッフの多さに興をそがれることが多々あった。

さらにかつての地方の老舗旅館のゆきとどいたサービスを覚えている者として、昨今の接客サービスの品質の劣化はさびしく嘆かわしい。

ところが、ここ「TheMana Village(ザマナヴィレッジ)」は違っていた。

なぜか? それは「映()える」のである。

前菜3種盛合せ
バエルと褒められた写真・・・うれしかった・・・
「バエます!バエます!」といって、わたしのカメラアングルをほめてくれた女の子。

そして、老夫婦のディナーの様子を何枚もスマフォで写真に撮ってくれた女の子。

わたしはその子に訊ねてみた。

「どうしてあなたみたいに若い人たちがこんな遠くのザマナでたくさん働いているの?」

「みんなダイビングとかマリンスポーツがやりたくてここで働かしてもらっているんです」と、

ゴム毬のように弾けた聲が間髪入れずに返ってきた。

柏島のエメラルドグリーンの海
こんな海がそこここに・・・柏島にて
なるほど四国西南端にはブルーオーシャンとブルースカイがあった。

そして若者の華やいだ聲や褐色の笑顔はこんなにも素晴らしかったのかと、あらためて思った。

そしてそうした時代が自分たちにも確かにあったのだと・・・なぜか胸に熱いものがこみあげてきた。

最後になったが、おそらくこれから訪ねる人たちは、わたしがお伝えした宿の姿とは異なる感慨を覚えることとおもう。

デッキのコーヒー
珈琲を一杯、いかが?
そしてその感動をあなたはきっとだれかに伝えたくなる、TheMana Village(ザマナヴィレッジ)はそんな素敵な宿になっているに違いないとわたしは確信している。

ぜひ機会を見つけて四国の突端まで足を延ばして、大自然の醍醐味と若者の弾ける笑顔を味わいに行ってもらいたいと願う。