ひと夏の忘れ物 足摺岬で泊まりたい宿・TheMana Village(ザマナヴィレッジ)

ひと夏の忘れもの 竜串海岸、大堂海岸、柏島の碧い海


今年も残すところあとひと月余。この一年もコロナ自粛の間隙を縫って、残り少ない余生、思い残すことのないようにと数多旅へでた。

旅に出かけてもどっては次の計画を練ってまた旅先へ移動と忙しく、まだお薦めしたい旅行先や泊まってみたい宿などブログ掲載が間に合っていないのが不甲斐ない。

白骨温泉・湯元斎藤旅館
今年4月に訪れた白骨温泉・湯元斎藤旅館
そこでまず、ぜひ訪ねてみてほしい高知県南西部、四国最南端の足摺岬と大堂海岸など土佐清水ジオパークの壮大な自然の景観をトップバッターとしてご紹介したい。

海上から大堂海岸をみる
海上から大堂海岸を探訪
季節は8月21日から23日にかけての二泊三日の夏旅である。

高松市内にある細君の実家が常々、わたしの四国探訪の橋頭保となっている。義父母も既に鬼籍に入り、時々の法要と風通しのため年に数度の高松行きであるが、四国を知れば知るほどその歴史と自然の景観の奥深さに驚かされている。

そもそも2021年3月30日に5年半に及ぶ四国88ヶ所の霊場めぐりを終え、車遍路ではあったが四国一周を果たしている。

女体山と第88番札所・大窪寺本堂
88番札所・大窪寺
88番札所の讃岐・大窪寺から反時計回りに1番札所の阿波・霊山寺(りょうぜんじ)まで巡礼するいわゆる「逆打ち」をおこなった。

一番札所霊山寺
1番札所霊山寺
途中、式内社を中心に神社や名所旧跡、温泉を訪ねながらのぶらり遍路旅であったが、まだまだ四国の魅力を味わい尽くすまでには至っていない。

高野山 満願成就御朱印
満願成就の高野山奥の院の御朱印
そこで、この8月は仁淀川の透き通るような仁淀ブルーを鑑賞したいと計画を立てたのだが、至近の宿、「中津渓谷ゆの森」の予約が満杯で、急遽、予定を変更、遍路旅の際に雨に見舞われ突端まで足をのばせなかった足摺岬に再チャレンジしようとなった。

ついでに細君が20歳のころ訪れた足摺岬の西方、大堂海岸の懸崖の景観をもう一度見てみたいということになり、此度は海上から仰ぎ見ようと計画を練った。

そのため、一泊目は土佐清水市足摺岬の「TheMana Village(ザマナヴィレッジ)」を、二泊目は幡多郡大月町の「ベルリーフ大月」を予約した。

ザマナヴィレッジ
TheMana Village(ザマナヴィレッジ)
一日目は高松市内を9時に出立、四国横断自動車道と高知自動車道を経由、途中、道の駅「かわうその里すさき」でランチ休憩。

金剛福寺 本堂と大師堂
金剛福寺の本堂と大師堂
午後2時過ぎに第38番札所金剛福寺前の足摺岬駐車場に車をとめた。

お参りのまえに前回、雨で断念せざるを得なかった足摺岬の突端へとまずは向かった。

細君に云わせるとここは2月が椿の花がきれいなのだというが、その日は8月21日。

つばきロード
足摺岬へ椿のトンネルをくぐってゆく
赤い花を想像しながら「つばきのトンネル」をくぐり、岬の突端の見晴らし台へと急いだ。

思いのほか狭い足摺岬の見晴らし台
思いのほか狭い見晴らし台
実は半世紀前、わたしは社会人としてのスタートを高松の地で3年間過ごした。その間独身寮の先輩たちと確かに足摺岬を訪ねている。そのはずなのだがなぜか見晴らし台からの雄大であったであろう景色の記憶は寸毫も脳味噌の襞に刻まれていない。

夏の大海原
足摺岬からみる太平洋
今度こそ渺渺たる太平洋の醍醐味をこの目にしっかり焼き付けてこようと思った。幸いかな当日は絵にかいたような真夏の晴天である。


夏の陽光にきらめく太平洋
夏の陽光にかがやく海原
駐車場からつばきトンネルを抜けてほんの数分で突端の見晴らし台へ到着。

足摺岬見晴らし台
途中に白い灯台があった。

⓪足摺岬灯台
足摺岬灯台
南国の蘇鉄を随えて真っ青な夏空にニョキッと伸びた灯台は美しい。

宏大な太平洋を睥睨するには、思いのほか狭い見晴らし台であった。

⓪足摺岬から
拡がる大洋
ただ、目の前に広がるどこまでも碧いパノラマは、まさに大海原という言葉がぴったりの胸のすくような眺めであった。

一望千里、海と空の境に一気に引かれた水平線がいさぎよい。

見晴らし台から太平洋の大海原を
真一文字
遮るものがなにもない、真一文字がすがすがしい。

その真一文字の頭上にのびやかに浮遊する白い雲。


夏の強い日差しのなか頬を打つ海風が殊の外心地よい。

胸一杯に遥か波浪をこえてきた潮風を吸い込む。

肺のすみずみまで仄かな塩気が染みわたったようで身がきりりと引き締まった。

足摺岬の海とキスゲ
キスゲ科の黄色い花がターコイズブルーの海に映える
そして一転、眼下をのぞき込むと陽光をすいこんでトルコ石のように青緑色に透けた海面に絶壁に咲くキスゲ科の黄色い花が鮮やかに映えて、美しい。

そう、遠いあの日も海風が崖下から吹き上げてきて火照った顔を弄(なぶ)っていった・・・そんな半世紀前に覚えた感覚がよみがえってきた・・・。

大堂海岸
飛沫を浴びた大堂海岸
この日、わたしは四国最南端の岬の突端に立ち、20代のころ置き忘れてきた探し物をようやく見つけだし記憶の棚にそっと納めることができた、そんなおだやかな思いにとらわれたのである。