伊豆半島二日目の宿は知人の別荘から坂を下った海岸線に広がる伊豆高原のスパ・リゾート「赤沢温泉郷」のなかにある赤沢温泉ホテルである。
コロナ禍の影響で対面で談笑するのはほぼ三年ぶりとあって、互いの近況につき語り合うのが主たる目的であった。そのためホテル内の滞在時間がほとんどなく、スパ・リゾート赤沢温泉郷を味わい尽くすことができなかったのは残念であった。
ここにはスパ・エステ&マッサージ、プールハウス、ボーリング、テニスコート、フィットネスと多様な施設がそろっている。一泊ではもったいない機能が充実していて、そして、家族連れでにぎやかにやってくるのにふさわしい、そんなリゾートであるといえる。
またその広大なリゾート施設のなかには「赤沢迎賓館」なる豪勢な宿も併設されており、大人だけの財布に余裕のある方はそちらに宿をとって贅沢なリゾートライフを満喫することもできる。
といったホテル紹介はこれくらいにして、当方はというとその日は知人宅で話に花が咲き、また、広い庭に植わる果樹や野菜をもぎとったりと時間はあっという間に過ぎた。
そこで夕食は手間を省き赤沢温泉郷内にあるホテル横に建つ「ビストロ赤沢伊豆高原」でとることにした。飽くまでも会話が何物にも代えがたい馳走であったからである。
ということで、われわれはホテルは夕食無しの朝食付き一泊の予約をとっていた。
ビストロではアラカルトで確かピザやソーセージの盛り合わせなど何皿か注文したのだが、話に夢中となっていたので店内や料理の写真はただの一枚も撮っていない。
これまでの旅で食事の写真を撮影していないのは初めての経験であったと思う。
それほどにおしゃべりに夢中になっていたのだと思う・・・
このコロナの三年間、LINEの映像越しに何度か会話していたのだが、人という生き物は、どうも社会や他人との関わりのなかで異質で多様な事象・意識とぶつかりあうことで脳内細胞が活性化し、東京のミドリの狸ではないが自分の思考・意識を“アウフヘーベン”させることで知力をステップアップしていく生物なのだと、改めてそう感じたところである。
まぁ、そんな小難しいことは脇に置いて、互いに七〇歳という大きな節目を思い思いに超えて、それぞれ人生について深く思う日々が増えた仲間と語り合える時間はとても貴重であり、殊の外、愉しかったのである。
そしてそうした時間はあっという間に過ぎ去り、この伊豆の夜は更けていった。
その翌朝、好天に恵まれ、ホテルの部屋からは伊豆七島がよく見えた。
前日は雲がやや多く午後ということもあり、高台にある知人宅からでもはっきりと島影を見渡すことができず残念な思いをしたばかりであった。
それが伊豆半島最後の朝、こんな贅沢な景色を拝めたことは日頃の細君を含めた人生の仲間が積み重ねてきた功徳のお陰であると満腔からの感謝の気持ちでいっぱいとなった。
そして伊豆半島最後のランチは別荘族の通う「ミクニ伊豆高原」である。楽しみである。