現在放映されている大河ドラマ、三谷幸喜脚本の「鎌倉殿の13人」が面白い。鎌倉武士が武士政権の時代を切り拓いてゆく最中、さまざまな人間が駆使しあう権謀術数や生臭く欲深で飾らぬ生身の人間の性が描きこまれていてとても魅力的だ。

鶴岡八幡宮
鶴岡八幡宮
そこで物見高い老夫婦は、源頼朝が流人として過ごし、彼の庇護者となって、結果、武家政権を確立した北条氏など鎌倉武士ゆかりの伊豆の地を訪ねることにした。

まずは桓武平氏の一党である土肥実平が勢力を張っていた湯河原町、真鶴町をたずねた。

その最初の訪問先が石橋山の合戦に敗れた頼朝が従者7人とともに安房国へと船出をした岩海岸である(源頼朝船出の浜:真鶴町岩957-1)。

頼朝が小舟で漕ぎ出した岩海岸
頼朝船出の浜・岩海岸
小さな浜辺であるが、ひっそりと舟を漕ぎ出した浜辺というには、思いのほか見通しの良いところであった。

現在はその湾口というか相模湾へ出てゆく辺りに橋がかけられている。

しかし、当時は人影もない鄙びた浜であったのだろう。

そこから落魄した頼朝主従7人が安房国へと逃げ出した。

その時の頼朝の心情を表しているかのようなまことに頼りなく儚い海辺である。


その浜辺から2kmもいかぬところに、一行が身を隠したと伝わる「鵐窟(しとどのいわや)」がある。

鵐の窟(しとどのいわや)
鵐の窟(しとどのいわや)
専用の駐車場がないので、真ん前の「真鶴 魚座(さかなざ)」(真鶴町真鶴1947)の駐車場に車を止め、ついでにランチをとった。

魚座 真鶴漁市場2階にある食堂
魚介料理の魚座
わたしは刺身定食を注文した。さすが相模湾で採れたての鯵、身がふっくらとしておいしかった。

ほっこりなアジフライ、絶品
このアジフライ、おいしかった!

海鮮丼
細君が注文した海鮮丼

さて「鵐の窟(しとどのいわや)」であるが、魚座の真ん前を走る県道・真鶴半島公園線を挟んで斜め前にある。

切り立ったかつての石切り場の根っこに小さな洞穴があった。入口はステンレス柵で閉ざされていて、覗いても奥行きは2、3mほど。

鵐の窟内部
鵐の窟内部
しかし説明板を見てびっくり。

小舟の先に隆起前の鵐の窟
海の上にあった鵐の窟
大正11年に撮影された鵐の窟は海水が這り込む奥行11mもある洞窟で、海に雪崩れ込む崖の裾にあった。翌年の関東大震災の際に隆起して現在の陸地になったと説明があった。

その隆起は数メーターにもなろうか、震災の規模がいかに凄まじかったかがわかるジオパークである。

そんな海水に洗われる洞穴に頼朝は隠れ、そっと抜け出し、岩海岸に用意された小舟に載って海上へと漕ぎ出したのである。

どう贔屓目に見てもそんな人物がのちの七百年におよぶ武家の時代を創り出したとは思えぬ洞穴と海辺の矮小さではあった。

そこから真鶴岬を南下すると、すぐに貴船(きぶね)神社がある。

真鶴町の貴船神社
貴船神社
社伝は、889年、三ツ石(真鶴岬)沖に木像12体と書状が流れ着て、社殿を建て村の鎮守として祀ったとのべる。江戸時代まで「貴宮(きのみや)大明神」と称し、明治元年に貴船(きぶね)神社に改称したといい、京都の貴船(きふね)神社とは無関係だということであった。

ただ、そんな貴船神社も頼朝ゆかりの地となっている。

縦に建てられた頼朝の腰掛石
由緒板の横に建つ頼朝の腰掛石
なんと「源頼朝の腰掛石」という貴重な石が史蹟として建てられているのである。

頼朝が休息した岩を「鵐の窟」付近より当地へわざわざ移設したのだそうな。

その腰掛石は直立して神社の由緒書きの横に麗々しく立っていた。

頼朝様に敬意を表し、その前で手を合わせた。

社殿はそこから急な石段を昇った高台にある。

真鶴貴船神社 拝殿
拝殿 茅の輪がつくられていた
丁度、「夏越の祓(なごしのはらえ)」の時期であり、社殿前には大きな茅の輪が作られていたのでぐるりと廻って今年の無病息災を祈った。

参拝をすませて次に三ツ石なる名勝のある真鶴岬の突端へと向かった。

真鶴岬の三ツ石
真鶴岬突端にある三ツ石
今回の目的のひとつに夫婦ともども、伊豆へ旅する機会は度々あれど、その途上にある真鶴はいつも通過地点でしかなかった。

要は「真鶴岬ってどんなとこ?」という単純な興味がたまたま「鎌倉殿の13人」にゆかりの場所であるとの知識を得て、一念発起、ホテルを予約して自動車を駆ってやってきた。我ながらこの歳でご苦労なことであると、つくづく思う。

さて、神社から車で10分もいくと「ケープ真鶴」に着く。岬といってもほんとうに小さな岬なのだと実感する。

ケープ真鶴
真鶴岬突端に建つケープ真鶴
その岬の突端から少し階段を下がった先に「カフェ・真鶴見晴らし台」があった。

相模湾が一望 カフェ真鶴見晴らし台
カフェ真鶴見晴らし台
旅行ガイドにある三ツ石海岸を見下ろし、相模湾が一望できる絶景の場所である。

真鶴岬 三ツ石
階段の途中からみえる三ツ石
いかにも“夏到来!!”という風情のカフェである。

岬のカフェ パラソル
夏!! カフェ!
幾枚か写真をとったところで、わたしが軽い熱中症で気分が悪くなり、館内で休憩させていただいた。

それを知ったオーナーであろうか女性の方が凍らせたペットボルや氷をいれたビニール袋で腋の下や首筋を冷やすようにテキパキと処置をしてくれた。

その手際の良さに感心しきりでしばらく休ませてもらった。そのお陰で事なきを得て、当夜の「ホテル ラクラッセ・ドゥ・シェネガ」へ早めに向かい、ゆっくりすることにした。

ホテル ラクラッセ・ドゥ・シェネガ エントランス車寄せ
ホテル・エントランス
ホテルは真鶴岬の西の根元あたり、真鶴道路の真上にあった。