麸屋町通りの京扇の老舗、白竹堂へ娘に頼まれて扇を買いに行った。

⓪白竹堂
麸屋町通りにある京扇の老舗・白竹堂
御池通りからお店が並ぶ寺町へ入り、途中から西に入り麩屋町通りにぶつかろうと思ったのだ。

ところが、寺町通りの入口には天保3年(1832年)創業の亀屋良永がぱっくりと口を開けてわたしを待ち受けていた。幸い開店の10時少し前であったため難なく通り過ぎ、お目当ての白竹堂本店まで一目散。

途中から麸屋町通りに入ると、炭屋旅館があったので細君を門前に立たせ、いかにもいま高級旅館の炭屋さんから出てきた風のスナップショットを撮った。

炭屋旅館
いかにも高級そうな炭屋旅館
古希を過ぎた翁と媼も童心に戻るときもある、ちょっとした遊心である。


目的の白竹堂は享保三年(1718)、八代将軍徳川吉宗の時代の創業で、三百余年の歴史を有す京扇の老舗である。

開店と同時に暖簾をくぐり、一本の扇をもとめ入念に吟味した。

⓪富岡鉄斎揮毫の扁額
富岡鉄斎揮毫の扁額
お店の女性がこちらの好みにあった扇子をいくつか見せてくれた。

どれも素敵ないかにも京都の薫りをくゆらせる扇である。

そのなかの桜を意匠とした一本を購入することにした。

桜の花びらが意匠された白竹堂の扇子
桜が扇面・親骨・仲骨にもあしらわれた女性らしい京扇子

白竹堂では親骨の裏側に名前を刻んでくれるサービスがあった。

娘の喜ぶ姿見たさに、お店の方に勧められ、即行でお願いする自分に父親の威厳の欠片もなく、ほとほとなさけないと思ったものだ。

白竹堂購入の扇子
白竹堂の京扇子
桐箱に入った扇子の写真をと思ったが、娘はさっさとグループホームへと持ち去ってしまい、今度、持ってきてもらい写真を撮らせてもらうことにした。

桐箱に入れられた京扇子
撮りました、写真!
さて、重要なミッションを終えたわれらはホテルへ戻ることになったが、細君は通ったことのない道筋を歩いてみたいと往路と異なる筋を選ぼうとする。

ところが私の脳内にはあのお店、もう開店しているはず、「そうはさせじ」と微妙に通りを選んで戻ろうとがんばる。

その駆け引きやまことに達人の技。古希を超えてこそなせる熟達の技といってよい。何せ自然に、いかにも偶々といった感じでそこの前を通らなければならないのだから・・・

そして、シャッターがあがった亀屋良永の前を偶然、通りかかった・・・のである。

亀屋良永 店構え
亀屋良永
「買って帰る?」と、細君が訊く。

「うん」と、ほんとうは欣喜雀躍の態でスキップしながら入るところ、ひと呼吸おいて悠然と足を踏み入れた。

店内は広くはないが、菓子の種類は多い。目移りする。

おいしそうな菓子がならぶ
ショーケースにはたくさんの京菓子が・・・
六代目当主の下邑修さんが出てこられて、これおいしいですよと試食もすすめてくれて、もうお買い物モードは全開。

このアットホームな雰囲気・・・タマラン!!

そこで、目に付いた菓子を三種類買ってしまった。

細君も人が悪い。二品ですまそうとぐっと我慢していたが、「これなんかどう?」と悪魔の囁き、いや、天使の囁き。

もちろん、即行、頷いた。

そして、購入した三品が次なる銘菓である。

第一にわたしの大好きな落雁。

和三盆の落雁 月
桂離宮の襖の引手を模した落雁
月の名所である桂離宮の月の形状をデフォルメした襖の引手を模した餡入りの和三盆使用の落雁、「月」である。


和三盆を使った落雁 月
和三盆の上品な甘味がきいた落雁である。

亀屋良永 茶菓と落雁・月
落雁のなかに餡子が・・・
次に「茶果」という、江戸時代の禅僧で画家でもあった仙冢他阿痢△□の図案をモチーフにした儚いくらいに薄く焼かれたウエハースのような食感を醸す餡をうすく挟んだお薄色と白色のせんべいである。

茶果 仙崖禅師の墨跡とともに
茶果 揮毫は仙崖禅師
表面には△と□が刻印されているが、〇はせんべいそのものの形ということなのだそうだ。

茶菓の中身
餡子が上品
最後に猛暑の夏にぜひお薦めなのが、「白瀧」といかにも涼やかな名をもつ葛羊羹である。

葛羊羹・白瀧
葛羊羹 白瀧
半透明の葛羊羹のなかにブルーの小さなサイコロのような寒天が散りばめられ、あたかも流れ落ちる水色の瀧と瀑布に煙る白い霧と飛沫が目に浮かび、口に入れると今度は滝壷のマイナスイオンが口腔から胃の腑へと沁みわたってゆく。

竹皮のなかに白瀧
竹皮に包まれた葛羊羹
屋内にて一瞬にして山深い瀧のほとりに立つようで、その爽快感は別格である。殊に冷やされた「白瀧」は絶品である。

夏に涼し気な白瀧
寒天のブルーが涼やか
亀屋良永の菓子は味の上品さはもちろんだが、「月」といい、「茶果」といい、その意匠に優れたものを感じた。

次は亀屋良永の代表的銘菓である「御池煎餅」にチャレンジしたいと思っている。


最後に「かめやよしなが」という同じ音読する京菓子の老舗がもう一軒ある。以前にブログで紹介した、昭和17年、京の菓子作りの伝統を後世に残さんと、時の京都府が砂糖など特別の配給を行ない保護した「和菓子特殊銘柄18品」のひとつ「烏羽玉(うばたま)」を今に伝える享和三年(1803年)創業の亀屋である。

亀屋良長店内
亀屋良長の店内
同店は四条堀川の交差点から東に一筋目の醒ヶ井(さめがい)通りと四条通りのぶつかる角に店を構えているが、この良永と源は異にするという。
ただ亀屋良永といい、亀屋良長といい、両店とも京菓子の伝統を上手に現代に伝え、そのなかで巧みにモダンを絡めとって続く世にも伝承していく、老舗と呼ばれるお店に共通する「しぶとい商い」の神髄を垣間見るようでもあり、京扇の白竹堂も同様であるが今を逞しく生きてゆく老舗とはまことに興味深い存在だと感じ入ったものだ。