コロナ禍のなか六年ごと(寅・申の干支)に実施される諏訪大社の御柱祭を幸いにもこの5月4日、観覧することができた。
その一連の神事を“山出し”というが、此度はコロナ対応ということで人の手によるのではなく、トレーラーによって御柱屋敷まで運び出された。
その為、御柱祭の華といわれる斜度27度の木落し坂の“木落し”や“宮川の川越し”といった豪壮な行事は残念なことに省略された。
2010年諏訪大社上社の木落し
5月上旬、ちょうどGW期間に催される御柱屋敷から本宮・前宮への“里曳き”も、車による移動と思っていた。これまで本宮がもっぱらであったが、此度は守屋山中腹に鎮座する前宮への里曳きである。
前宮は本宮とは異なり、一の鳥居から社殿まではほぼ一直線の上り坂になっている。
特に二の鳥居を抜け、社殿境内に這入るにはさらに勾配はきつくなり、しかも石段を登りきるという力業となる。
氏子が振り絞る「ヨイサ!」「ヨイサ!」の掛け声とともに、二の鳥居の急こう配の石段に挑む。
その様は1200年もの長きにわたり守られてきた原始信仰の荒々しくも幼児(おさなご)のような無垢の魂の雄叫びそのものであった。
御柱の先頭の“めどでこ”が社殿境内に駆け込み、後尾の“めどでこ”が天空へと跳ね上がったときにはなぜか目頭が熱くなった。