新年にあたり彦左の正眼の読者の方々にとっておきの福を遍(あまねく)く、お届けしたいと思う。古くから四国霊場第18番札所・恩山寺(おんざんじ)のみが授与してきた『摺袈裟(すりげさ)』という閻魔大王のお墨付きもいただいている最強のお守りである。この万能の効験がこの写真の念力を通じて皆さんの心のうちに宿ることを心から願っている。

18番札所恩山寺の摺袈裟
摺袈裟(すりげさ)
まず、『摺袈裟』の由来について恩山寺の説明書きを下記に転載する。

 

摺袈裟(すりげさ)は別名『袈裟曼荼羅(けさまんだら)』ともいい、僧侶が用いる袈裟の内に梵字(ぼんじ=古いインドの文字)で曼荼羅(まんだら)を書いたものです。摺()るとは「版木で印刷する」という意味で、袈裟とは「僧侶が行住坐臥(ぎょうじゅうざが=一日中常に)身につけるお釈迦さま以来の法衣」です。その袈裟に仏様を表す梵字や有り難い陀羅尼(だらに=仏様の功徳を説いた言葉)を書いたものが摺袈裟です。

所持すれば、陀羅尼の功徳によって患っているいかなる病気も治癒し、滅罪生善(めつざいしょうぜん=悪い事を良い事に変える)の為にはこれ以上の功徳あるもの無し、といわれています。

昔、閻魔大王が『死者が眠る墓にこの摺袈裟を掛け、一週間のあいだ供養すれば死者が蘇る』と説いた事に由来して、古くから、亡くなった人の棺にこの摺袈裟を入れてあげれば、必ず極楽浄土へ往生出来るといわれています。それゆえ、後からご仏壇の中に摺袈裟を入れると亡くなった方の供養にもなります。

なお、この摺袈裟の授与は古くから恩山寺(おんざんじ)のみで行われています。

以上

 

18番札所・恩山寺
第18番札所恩山寺
わたしたちがお遍路を始めたのは今を去ること4年前の閏年の2016年6月10日である。しかも事もあろうに香川県の88番札所・大窪寺(おおくぼじ)から徳島県の1番札所・霊山寺(りょうぜんじ)までを反時計回りで巡礼してゆくいわゆる「逆打ち」お遍路に挑んだのである。

女体山と第88番札所・大窪寺本堂
第88番札所・大窪寺
「逆打ち」は通常の1番から順を追って廻る「順打ち」を何回かこなしたベテラン遍路が挑戦するもののようだが、4年に一度の閏年にはじめる「逆打ち」は遍路道のどこかでお大師さまに邂逅できるうえに色々とご利益も大きいのだという話を小耳にはさみ決断した、今風でいう“ご利益ポイント3倍キャンペーン”みたいな謳い文句にのっかって少々欲深で軽いノリではじめたというのが実際のところである。

逆打ちの由来となった衛門三郎とお大師さま
逆打ちの由来となった衛門三郎とお大師さまの銅像(12番焼山寺の杖杉庵)
その最初の88番札所・大窪寺で納経帖に御朱印をいただいた時、わが夫婦はWHOのいう高齢者の初年兵である65歳に達し、「頼みもしないのにお上から介護保険証なる失礼なものが送られてきた」とブイブイ文句を言っていたころである。

焼山寺・本堂
第12番札所・焼山寺
あれから4年! “綾小路きみまろ”ではないが、ようやく残り10ケ寺のところまでやってきた。本当は2020年の閏年で結願(けちがん)となる心づもりであったが、この4年間、母の介護あり、幾たびもの台風の襲来や豪雨の発生といった自然災害も度重なり、昨年には新型コロナウイルスという人類未曽有の災禍にも見舞われ、計画した旅程はキャンセルにつぐキャンセル、順延に次ぐ順延とまさに「逆打ち」遍路は至難、逆境の行であった。
しかも「歩き遍路」であれば、4年の歳月をかけてといっても、よう頑張ったと褒めてくれる人もいようが、我々老夫婦は当然、「車遍路」である。
道後温泉本館
道草遍路の定番・道後温泉本館
旅行代理店が企画しているツアーであれば14日間で88ヶ所を巡礼するという弾丸ツアーもあるではないか。団体旅行であれば二週間でまわれるものを4年間掛けてまだ結願していない。
多伎神社一の鳥居  多伎宮古墳群
    多伎神社一の鳥居      多伎神社境内奥の多伎宮古墳群
なんとも性根の据わらぬテイタラクぶりであるが、そもそもが“しまなみ海道”も辿ってみたい、多伎神社の古墳群は見ておかねばならぬとか、道後温泉をはじめ温泉巡りは必須でしょとか、ついでに近くの式内社巡りは欠かせないとか道草に時間を多く割いた遍路である。
しまなみ海道
しまなみ海道・大三島の多々羅大橋
「まぁいいか!」と、恬として恥じもせぬこの老夫婦である。でも、本堂と大師堂で二人で必ず声を大にして般若心経を唱えることは欠かさずやって参りました。最初は途切れ途切れであったものが、今ではそれなりに様になりつつあると二人して内心では自負しております。

准胝堂・御影堂の先に根本大塔
結願して高野山へいくぞ! 2018年に下見・根本大塔
そして今年こそ残り10ケ寺をまわり高野山へと考えていた矢先、緊急事態宣言である。まだ予約をいれずに様子見をしていたのが幸いし、予約キャンセルの面倒な手間がはぶけた。

事程左様にこんなふうで、まだまだ結願までには紆余曲折がありそうである。

18番札所恩山寺の摺袈裟
そこで、ここらで、少し、お遍路のご利益を少しお裾分けでもしておきたいと考えた次第。新年にふさわしい摺袈裟(すりげさ)なる最強パワーのお守りをご紹介して、そのご利益がこのコロナの嵐が吹き荒れる丑年に皆さんの心の内に届くように写真を掲載し、駄文を添えたものである。