散々なお正月でしたが、彦左の正眼、今年もよろしく(2015.1.5)

2016年もNHK交響楽団による年末恒例のベートーヴェンの交響曲第9番の演奏会がやってきた。

N響第9コンサートのエンブレム
N響第9演奏会恒例の飾りつけ
今年はN響創立90周年の節目の年ということで、NHK放送文化賞を受賞し、NHK交響楽団から桂冠名誉指揮者の称号も授与されたヘルベルト・ブロムシュテット氏がタクトを振った。

N響90周年エンブレム
N響90周年のエンブレム
御年89歳の超高齢の指揮者だと知って、指揮台脇には途中休憩の椅子でも用意されているのではと思ったが、豈図らんや誰かが手を携えることもなく足取りも軽やかに矍鑠(かくしゃく)としたお姿で現れた。まことに失敬なことであったと反省している。

NHKホール
指揮台に椅子はない
そして、ブロムシュテット氏の「第9」はこの5年間通ったN響の「第9」演奏会のなかで最高のものであった。


終演後、家内も同様の感想を述べたので、素人ながらも互いに心に感じたところは一緒だったのであろう。

切れ味が鋭いというのとは少しニュアンスは異なるが、区切りの良い明快な演奏が心地よく感じられた。だから流れ出す音楽のなかにすんなりと没入できたような気がする。

23 第9演奏会PF
2016年パンフレット
わたしは第4楽章の冒頭あたりから実際に鳥肌が立っていたが、「東京オペラシンガーズ」の圧倒的な合唱が始まるや、いつしか目じりからうっすらと涙が滲みだして来た。高齢による涙腺のゆるみだけではなかろう、タクトが停止した瞬間、万雷の拍手はいつまでも鳴りやむことはなかった。

第9
今年の「第9」で特筆すべきはもちろん筆頭にヘルベルト・ブロムシュテット氏の派手さはないが静かななかにメリハリのついた名指揮ぶりがあげられる。


加えて、1992年、「世界的水準のコーラスを」との小澤征爾氏の要請を受けて結成された「東京オペラシンガーズ」の合唱が場内を揺るがす迫力はつわもののソリストたちが消し飛ぶほどの歌唱力であったと高く評価したい。

終演後の会場
終演後のNHKホール
もちろんバスのパク・ジョンミンはさすがという出来栄えであったし、ソプラノのシモーナ・シャトゥロヴァも素晴らしかったが、惜しむらくはテノールとメゾソプラノであったとの感想を抱いた。所詮、こんなものは“ど素人”の勝手な批評であるのでお許し願いたい。


そんなことで、2016年のN響コンサートも終わりをつげ、あとはいよいよ大晦日まで一週間を残すところとなった。


NHKホールを後にするころにはもう夕闇が迫っていたが、ホールの大きなガラス窓には茜色の夕空が映え淡いローズ色に染まっていたのが印象的であった。

コンサートを終えて
来年がこのような美しい彩りを装う年になりますようにと呟きながら、クリスマスの夜を演出するイルミネーション目当てで大勢の人が闊歩する表参道へと足を向けた。